25:英雄の帰還とうれしい誤算
満身創痍の中、エルフの村に帰還するグレイス。
そこには英雄を待ちわびていたかのようにエルフたちがこぞっていた。
湖から戻るとエルフたちが私たちを出迎えてきてくれた。
「グレイス、君はよくやったよ」
出迎えるエルフたちの歓声に遮られないようにサバトは耳に顔を近づけて話してきた。少しこそばゆかったけど悪い心地はしなかった。
「ありがと。これで村のみんなが私たちを受け入れてくれるといいんだけど」
『受け入れなかったらどうするんだ? 焼き払うのか?』
マリスは私にしか聞こえないように話す。そんなことはしないし絶対にさせない。
「そんなことするわけないじゃない。マリス、あなたのことなんて嫌いよ」
「どうしたんだい、グレイス。悪魔がなにか君にそそのかしているのか? 君はもう悪魔にとらわれなくていいんだ。君には僕がいる」
そういってサバトは私の手をギュッと繋いできた。顔が火照ったけどこれはきっと驚いたせいだ。
サバトの純粋な目に吸い込まれるように見つめていると、二人の邪魔をして悪いような雰囲気でロンドが話を切り出してきた。
「ごっほん、少々よろしいですかな。グレイス様、サバト様」
私たちは彼の顔を見た。彼の顔はとても穏やかだった。でも、どうして私たちの名前を知っているんだ?知っててなお、そんな態度ができるんだ?
「どうして、私たちの本当の名を?」
「旅人がもう一組いなければ知る由もありませんでした。彼らの言葉からあなた達を聞いて純粋に悪だとは思えなかったのです。だから、自分たちの厄介事を任せてしまった。その様子ではさぞお辛いめにあわれたのでしょう。申し訳ありませんでした」
ロンドは深々と頭を下げてきた。いやいや、私もあなたを利用しようとしてるのに......。それだけで、それだけであなた達は私を、私たちを信じるの? そう思っていると奥の家から子連れの人間が現れた。どう見ても二人はエルフじゃない。
「マキおねえちゃん!!」
そういって女の子の方は私に抱き着いてきた。懐かしい匂い、可愛らしい角、間違いない、アリスだ。
「アリス!? どうしてここに?」
「てんしさまにおわれて、あのおねえちゃんといっしょにここにきたの」
そういうと奥の人間の女性を指さした。女性は恥ずかしがりながらもこちらに手を振った。
「よ、グレイス」
「ごめん、だれ?」
誰だっけこの女の人......。やたらきれいな人だけど、知り合いにこんなきれいな人いたっけ?
「ええ!? ターニャだけど?」
ターニャ、やたらと私の周りで助け船を渡してくれる謎の銀級勇士。二度も助けてくれた上にアリスまで助けてくれていたなんて思わなかった。
「そうなの? いつも兜つけてたからピンとこなかった!」
二人の予想外の再開に私は少し安心した。二人は死んでなかった。この世界でつながりのある二人は近くで私の無事を祈ってくれていた。希望が生まれると死は恐怖に変わる。死ぬのが怖い。相手を悲しい目に遭わせたくないと思ってしまう。彼女たちとの会話は生きる執着を植え付ける。
『なるほど、人間は生きる目的ができれば、満足を求めれば死を怖がるのか』
彼の言葉は私にか聞こえない。今はまだ私を殺さないだろう。でも、マリスはきっと私が死に恐怖すればするほど笑ってくるに違いない。だから今は、今だけは死を怖がるな!
心に喝を入れていると改めてロンドが話し始めた。
「改めてようこそ。エルフの集落、オッカレ村へ。我々は魔王を倒したあなたたち英雄を歓迎します」
村のエルフたちは私たちに拍手をしてきてくれた。ロンドから村長のオッカレの家に招かれそこで祝杯を挙げることにした。宴は村総出で行われ、私たちも楽しい時間を過ごしたのだった。
ジョン、君もここにいれたら幸せだっただろうに......。
彼の幻影を夜空に見ながらエルフの食事を堪能した。
グレイスはテイマーを知るため、そして強くなるためにしばらくエルフの村に滞在しようと心に決めた。




