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19:天使と恨み

ソルエルとともに海龍王を捕獲したグレイス。

彼との交渉は続く。

浜辺で鏡を見ているとそこには海龍王がおとなしく眠っていた。ちゃんと捕獲できたみたいだ。


「それ、君にあげるよ?」


ソルエルが冗談っぽくいうが、さすがに海龍王みたいにでかいものは扱えない。扱うって言えば......。


「いや、さすがにでかすぎよ。というか、私の手持ちはもうこの二匹でいっぱいなのにどうして魔法が使えたんだ?」


ソルエルは首をかしげた後少し間を開けて言葉の意味を理解したようだ。


「ああ。テイマーが契約できるのは二匹だけって話? あれは昔の話だぞ。いまは異次元にモンスターを管理できる次元鏡の開発が進んだから5体くらい平気で契約してるぞ? それより、いらないならそれ貸して」


俺は海龍王の入った次元鏡を渡すとソルエルは真っ二つに割って見せた。


「おい、なにしてんだよ」


「別に? 俺は悪魔が嫌いだから殺しただけだけど?」


殺した? 異次元に送り込まれてるから大丈夫のような感じはするけど......。それでも二つに割れた鏡の割れ目から血のようなものが滴っているのがその言葉に真実味を持たせていた。


「あんた、ほんとやりずらいよ」


「お前は人間か? それとも悪魔か? 悪魔なら殺す。悪魔を使役できる人間でも殺す」



ソルエルが質問してくるとマリスが間に入って俺に助言した。


『なにも言うな。あいつはまだ殺す必要もないし、殺されることもない。私を失望させるな、グレイス・アルマン。私に従え』


俺はこいつの言うことなんて全く聞くつもりなんてない。だって俺の答えも、こいつの答えも決まっている。


「私は、人間よ!」


「俺から情報を取りたければ死ぬ気で挑め!」


瞬間、ソルエルが距離を詰めてきて拳が腹部に到達した。ジョンやフェニックスを呼ぶ暇をも与えさせない気だ。陸にいたジョンは俺の元に駆けつけてきた。回復まで時間がかかる。それまでジョン、頼んだぞ!


ジョンは俺の心の声が聞こえたのかソルエルに真っ向から勝負を挑んでいた。だが、瞬間移動を多用し、かく乱させていた。ジョンは鼻が利くけど、小回りが弱い。ソルエルは単純なフィジカルと単調な瞬間移動だけであの大型フェンリルを圧倒していた。


俺はさらにフェニックスを戦闘に加えた。ジョンに近づくソルエルに暴風を起こして距離を取らせる。続けてバーンブレスをソルエルに浴びせるがソルエルは腕の一振りで振り払った。


「そ、そんな!? 天候が変わるほどの温度があるはずだろ?」


「俺の筋肉の練度が違う。いいか、君が瞬間移動と思っているのはただ走ったり飛んだりしているだけだ。天使きっての武闘派と呼ばれているんだ。格が違うのだよ!」


ソルエルが俺のところまで走って向かってくる。浜辺なんて足場の悪いところでなんて軸足のブレないフォームなんだ!? いやそんなとこツッコんでる場合じゃない! 彼の手刀が目の前まで近づいている......!!


『私の復讐が終わるまではお前を守ってやる。だから、もう少しは楽しませろ』


マリスが勝手に出てきた。ソルエルの手刀をなんなく受けきり、浅瀬に吹き飛ばした。その瞬間、俺はマリスの力を借りて自分を黒く染め上げた。力が前よりも強くなっているのを感じる。マリス自身もいつかは俺の制御から離れるかもしれない。自分を保ちながら最大限のパワーを引き出すんだ。


俺は大きな黒い爪を使って浜辺をかきあげる。 風が巻き起こり、ソルエルが空へと打ち上げられる。空を駆け抜けてマリスから現れた黒くて大きな手を拳にしてソルエルを殴りつけるがソルエルは何度も跳ね返す。力の差は互角と言ったところだろうか。


「ぶっつぶれろーーーーーー」


俺が叫び倒すとソルエルは麻袋を破って頭上から口のようなものを引き出してこちらを食い尽くそうとしていた。ギザギザと小さな歯が四つに分かれた口の中にびっしりと生えそろっている。腕を傷つけながらも俺はそれを振り払った。そして、四つの口のうち二つをがっちり掴んでそのまま地面にたたきつけた。


「このまま引きちぎられたくなかったら質問に答えろ!」


ソルエルは俺の言葉に従い両手をあげて降伏した。

ソルエルを確保し、口を割らせようとするグレイス。

彼女の心境はどう変わるのか。

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