16:二人の勇士と取引
フェニックスを手に入れたグレイス。
助けられた形となった銀級勇士団は取引を持ち掛けてきた。
「おい、その不死鳥どうすんだよ」
銀級勇士団の剣士の男が静かに質問した。
「どうするって、使い魔として活躍してもらうけど?」
「じゃあ、お前テイマーなのか!! 子供なのにえらく珍しい魔法が使えるんだな」
男が感心していると女の魔法使いが腕を抑えてこちらにやってきた。
「天界十二使から聞いてるでしょ、白銀のデーモンテイマーのこと......。きっとこの子よ。さっき、悪魔と会話しているように見えたし」
女の人の方は感がいいようだ。特にここで逃げる必要もはぐらかす必要もないだろう。
「そうよ。私が噂のデーモンテイマー、グレイスよ」
ちょっと調子に乗りすぎたかな? ちょっと変な空気が流れた後、男の方は悩んでいた。
「いや、でも子供だぜ。俺は殺すのは反対だ。ターニャはどう思う?」
「そうねぇ。殺して天使様のところへ持っていくのはちょっと惜しい人材よね。しかもこんなにかわいいし」
そういうと女の方が顔を近づけてスリスリしてくる。少し下の方で大きな胸がゆさゆさと当たってくるのに喜びどころか、ちょっとした怒りを覚えた。
「あ、ごめんね。こっちで話進めちゃって。私はターニャでこっちがクオーツ。銀級勇士よ。上から私たちにあなたを見つけた場合、殺せと言われたんだけどさ。フェニックスをおとなしくしてくれた借りもあるし、どうしよっかなぁ」
見逃してくれると言うのならうれしい限りだ。
「ただで見逃すとは言わなそうな口ぶりね」
「話が早くて助かるわ、こっちは口実が欲しいだけだから交換しましょ。私たちはあなたを追っている最中フェニックスに偶然遭遇。向こうには逃げられたけど代わりにフェニックスの羽をゲットしましたって筋書で」
「まあ、いいけど......」
そういって俺はフェニックスから何枚か羽を受け取ってターニャに渡した。
「サンキュー、いい取引ができたわ。じゃあ、私から情報あげちゃう。海辺のソルの街は行かない方がいいわ。ソルエルって天使があんたを血眼で探してたわよ?」
ソルエル、もしかして天界十二使団の一人か? まあいいや。気を付けておこう。
ところで、考えるの放棄してたけどこんな大きい子連れてたら目立つよな。どうしよう。
「この子目立つよな......。どこかのゲームみたいにボールに入れられたらいいんだけど」
『フェンリルを連れて歩いていた時点で十分に目立っていたがな』
「それでも、連れていくしかないよ。フロストの元には預けられないんだし」
私が落胆しながら歩いていると、一人の青年が誰かを待っているかのように佇んでいた。
あの姿、どこかで見たような......。
「どこへいくんだい? お嬢さん。いや、グレイス・アルマン」
「あなたは、誰?」
「忘れちゃった? 美しい僕を忘れるわけがないのに。それとも、降魔郷の話をすれば思い出すかい? いや、君の家で初めて会った日でもいいよ」
降魔郷、そして私の家......。もしかして、あの風使いの天使か?
でもどうしてこんなところに。
「あなた、自分から消えたくせに降魔郷から私のことつけてきたの?」
「半分、正解かな......。きみが、面白い存在だからつい観察したくなってね。あ、フェニックスを捕まえてくれてありがとう。実は、あの子のまわりで災害が多くて困っててね」
「世間話はいい。それで、用件はなに?」
私が冷たくあしらおうとするも天使はなおも私に近づいてくる。
「そう冷たくしないでよ。美しい君の顔が台無しだよ? 僕には及ばないけど......。あ、ごめん。自己紹介がまだだったね。僕はウィナス。天界十二使、五属聖の一人さ。君を殺しに来た。とでも言えば満足かな?」
私は、一度ウィナスから離れジョンに警戒態勢をとらせた。
だが、彼は風のようにしなやかにジョンをなだめて私に再び近づく。
「心配しないで、友達になろう。天使を受け入れ、懺悔すれば君の安全は保障しよう。安全こそが、人間の美徳とする生き方だろ?」
ウィナスは私の顎を撫で、甘い言葉で勧誘する。これまで、なんどもそんな甘い言葉に騙されて中途半端に生きてきた。でも、今回はそうはならない。自分の決めた道は自分で歩く。
「悪魔と一緒じゃあ、安全なんてどこにもないのよ。あんたも仲間みたいに殺されたいの?」
「かわいいね。ますます殺したくなくなっちゃた。でも、他の子たちはそうじゃないから、君が死なないことを祈るよ。また、会おうね」
すると、ウィナスはどこかへ消えていた。
あいつとは、また会うような気がする。
彼の気に食わない態度に怒りを覚えつつ、私はソルエルがいるという海辺の町へ向かう。
哀しみと怒りを背負い、次の街へと急ぐ。
海辺の街で海王が踊る。




