15:不死鳥と銀級勇士
新たなる仲間を探して山へと登るグレイス。
そこには一匹の不死鳥がいた。
自分で事件っていうのもなんだけど、児童所襲撃事件から数週間が経った。
私は、降魔殿から逃げるように人の少ない森を当てもなくうろついてしまっている。
『仲間を増やすってもよ、当てはあんのかい? というか、探す気あるか? ずっとこのあたりうろちょろしてるぜ?』
ガラゴの言葉に私はギクリとしてしまった。
そう。私は考えなしにバベルの裏ギルドを出ていってしまったのだ。
戻りたくても、もうかなり遠くまで来てしまっている......。
「ない、ですねぇ。 どうしよっか」
すると、ガラゴはキョロキョロとあたりを見回した。
『だと思ったぜ。ん? お、いいところまで来たぜ。もっと山の火口の方までいけばフェニックスの巣窟だ! あいつなら頼りになるかもだぜ?』
フェニックスというと、炎がメラメラとしてる鳥のことか。
たしか、不死の能力も持ってるって聞いたことがある。
「なるほど、フェニックスかぁ。でも、見つかるかなぁ」
『白銀のデーモンテイマー様が弱気とはな。だが、見つけるしかないだろ』
マリスはこちらに顔を近づける。
その顔は少しこちらを馬鹿にしているようにも見える。
白銀のデーモンテイマー、ねぇ。
「あんた、まじダサいセンスよ。ガラゴ」
『俺様は、もっとグレイスが天使に近づけるように種をまいただけだ! 名が通れば絶対あいつらは向こうから近づいてくる! そうだろ』
ガラゴは必至で弁明していたが、言わんとすることはわかるがやっぱり『白銀のデーモンテイマー』はないわ。 鼻で笑って返そうとした途端、ガラゴが何かを察知したように動きが機敏になった。
『隠れろ!』
「は?」
よくわからないが、ガラゴはそのかわいい両腕をブンブンと振って私たちを茂みに隠そうとしていた。
『いいから隠れろ! ゴーレムに焼き殺されるぞ!』
ゴーレム? ってあのレンガでできたようなやつか? あれって野生とかでいるんだな。
「ここってゴーレムも住んでるのか?」
『ばっかやろう! ゴーレムがいるってことはよぉ、俺様の大嫌いな魔法使いがいるってことよ』
かわいいぬいぐるみにしわを寄せて語るガラゴの言葉通り、魔法使いと思われる人間ともう一人が上から降りてきた。急いで隠れたから見つかっていないといいが......。
「クオーツ、フェニックスいなかったね」
「そうだな。もう少し火口に降りれればよかったんだが」
「無理無理。死ぬって」
二人の会話が間近に聞こえる。木陰に潜んで、心臓の跳ね上がる音が向こうに知られないようにそっと呼吸をした。
『あの紋章、銀級勇士だぜ。なぁ、日にち改めようぜ』
しかたないと思い、腰を上げると急に熱風が襲った。な、なんだ? もう魔法使いに気づかれたのか?
熱風はドンドン勢いを増していく。照りつける太陽よりも熱く、轟々と燃え盛る身体を羽ばたかせて俺たちをにらみつける。フェニックスが現れてしまった。
「ま、まじか」
どうやら巣穴をいじくられて怒っているようだ。銀級の二人に向かって超特急で向かっている。
勇士団にみつかるのは癪だが、捕まえるなら今しかない!
『フェニックスまじで捕まえんのか?』
「ああ、大マジだよ。今取り逃したら次いつになるやらわからない!」
俺は二人が逃げ惑う方向へ走っていく。ジョンはその先を駆け抜ける。俺はマリスを使って森の枝と言う枝を駆け上がる。
『私を使うのも慣れてきたか? グレイス・アルマン』
「なんとなくね。正直おまえと一緒にってのがむかつくけど」
『なら結構』
そういうと俺の体が勝手に舞い上がっていく。空中にはこちらへと飛んできている不死鳥。何をするのかと思ったらマリスは両手を握ったまま大きくして不死鳥の背中に振り下ろした。少し手をやけどしたくらいで済んだけど、木々はあたり一面なぎ倒されて唯一の自然がはげ山に変わり果てる。ジョンと銀級勇士団の二人がフェニックスを背に争っている。戻らないと!
「こらっ! 犬コロ、そこどけ! せっかく宝が目の前にあるんだからよお」
「そちらこそ、手を引いてもらえますか? これは私の獲物です」
到着したころにはジョンと銀級勇士団の男の方がジョンともめていた。制裁には成功したけど、魔法使いの女が見当たらない。
「フェニックスの血でアタシたちは大儲けするのよ!」
「させないよ、ジョン!」
ジョンは女魔法使いの腕を甘噛みして押さえつける。フェニックスが意識を取り戻して暴れ始めた。
意識を完全に失わせてからじゃないと契約魔法の詠唱は難しい。フェニックスの場合、持久力があるから一発で最大出力をぶち込む! それしか方法はない。ジョンが一人を取り押さえているからもう一人は
「ガラゴ、男の方は頼んだ!」
「おい、どこへ行くんだ!」
勇士の一人は追いかけようとしたけどガラゴが引き留めている。今のうちに、マリスの力を足に集中させろ。いまはあいつへの雑念を捨てろ。全部、出し切れ。俺!
力がため込まれた後、俺は飛び上がって倒れるようにフェニックスの頭めがけて蹴りを入れた。黒い影が伸びていき、フェニックスの頭に見事命中した。再び気を失った不死鳥に早口で契約魔法を唱える。
「『天使の名において我と契約せよ』テイム!」
魔本陣に包まれたフェニックスはおとなしくなって起き上がった。契約魔法は一度契約すると体力が回復する。ジョンの時もそうだったからね。
「これで、はっきりしたな。俺がマリスと契約しているんじゃないって」
『そうだな......』
息をついているとフェニックスは俺に羽を一枚授けてきた。見上げるとプイとそっぽを向いた。もしかして俺の傷を気遣ったのか? フェニックスの羽には回復魔法よりも数倍の回復力があるらしい。俺はそれをありがたく飲み込むと力が戻ったような感じがした。
不死鳥を手に入れ満足していたグレイスに近づく二人の勇士。
次回「二人の勇士と取引」




