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109:絶望の光、希望にかえて

ルシエルの野望を止めるため、単独で戦いに挑むグレイス。

だが、ルシエルの力は想像を絶するものだった。

ルシエルを追いかけて、階段を上っていくと城の屋上に出た。

ルシエルはすでに、屋上奥の塔を上っているようだった。


「フェニックス! あそこに飛ぶぞ!」


フェニックスを呼び出し、屋上よりさらに高い塔の窓からルシエルを見つける。

ルシエルもこちらに気付き、魔法を打ち出そうと手を出す。


「向かってこなければ、君は生きられたというのに!」


ルシエルの手から雷のような光が私めがけて打ち出される。


「あなたの好きにさせるわけにはいかないからね! フェニックス、バーンブレスだ!」


フェニックスの炎がその光を消しさり、ルシエルのいた窓を焼き尽くす。

まわりは溶けだすものの、ルシエルは煙に混じって上へ登る。

それに合わせてゆっくりとフェニックスは上へ行く。

突如としてルシエルは、広い窓をみつけるなり飛びだして、フェニックスに飛び乗ってきた。


「キミには感謝さえしているんだよ? 器として、マリスという名の力を保持してくれていたこと。そして、私の代わりに天使に復讐してくれたこと......。だが、君は私のことを知りすぎた。歯向かいすぎた!」


こいつ、窓からひと飛びで私の目の前に!?

私は驚きを隠して彼の胸倉をつかむ。


「マリスは誰のものでもない! ましてや、あんたみたいな最低なやつに取り込まれるようなやつじゃない!! あんた、そこにいるんでしょ! マリス! 返事しなさいよ!!」


ルシエルの中にいるであろうマリスに問いかけるも、反応がない。

ルシエルは鼻で笑い、片手で私を持ち上げる。


「無駄なことで命を無駄にするな。グレイス、これは私からの恩返しだ。命だけは見逃してやるから、つつましく生きろ。そして新たな世界の一部となるのだ」


ルシエルは私を持ち上げた後、勢いをつけて地面に振り下ろす。

フェニックスがルシエルを塔の方に振り払い、こちらに向かってくる。

だが、間に合うのか?


「ケルベロス! なんとか頑張って!!」


大きな図体のケルベロスは地面にたどり着いた後、塔の壁に向かって大きくジャンプ。

さらに、塔の壁を利用してもう一度ジャンプした。

なんとかケルベロスの背中に飛び乗り、一命をとりとめたもののルシエルはさらに上に登っていく。


「どこへ行って、何をするつもりなんだ......。あいつは」


正直そんなことはどうでもいい。今は、ルシエルからマリスを取り戻すことを考えないと......。

私は、ケルベロスを次元鏡に戻しフェニックスにもう一度乗り換える。

ルシエルに見つからないように静かに、それでいて素早く塔のてっぺんを目指す。

塔のてっぺんの物見用の窓の隙間からするりと入り、ルシエルを待つ。


「グレイス、君はしぶといな」


「あなたもね」


「一つ、提案しよう。私のものにならないか? 不服だが、そうすれば私の中でマリスと共に生きられるかもしれん。共に新しい世界を支配しないか?」


「あんたのものになる? 笑わせないでよね。 私は自由になって今ある世界を幸せに生きたい。その世界さえ消し去るなんて嫌」


「なら、死ね」


「ケルベロス! 力を貸して!」


ケルベロスの雷のような力があれば、私もルシエルと対等に渡り合えるかもしれない。

私は次元鏡をギュッと握りしめて力を分けてもらう。

ルシエルがすばやく動き始める。それに合わせて私も獣装で追いついていく。


「そんなことで私に勝てるとでも思っているのか! 君一人ではどうにもならない!」


ルシエルは、拳と蹴りを駆使して私の身体を執拗に攻め続けるが、私もルシエルの拳も、蹴りも振り払い彼と同じように拳を叩きこむ。ただ、私の拳にはケルベロスの力も入っている。当然、力は私の方が上のはず!!


「一人じゃない! ケルベロスもいる。ここまで一緒に来てくれていた仲間だっている。死んでしまった仲間だって、ここにいる!」


私の拳が、ルシエルの額に当たるも、彼がただのけぞっただけでダメージなどないかのようにそのまま拳を押しのける。


「その言葉は矛盾している! 君には仲間というものはいない! 君たちは利害関係で群れていただけに過ぎない! 我々と違い、他人との繋がりなどありえない!! ましてや、獣とはな!」


そういうと、ルシエルは私の頭に手を当てた。

一瞬の出来事で、止めることなどできなかった。

頭から放そうと必死で抵抗するもびくともしない。

さらに、ルシエルは光度をあげて魔法を使う。


「反転魔法陣:閃光滅ホワイトアウト


私の身体から、力がすっぽりと抜け落ちケルベロスが次元鏡からふわりと出てきた。

瞬間、ケルベロスは光に覆われていき、まるでブラックホールに吸われたかのように骨を砕きながら丸まって消えていく。


「君の契約つながりなど、簡単に私の力で排除できる。これ以上の抵抗はよせ......。お前自身が死ぬことになる。それは、マリスも望んでいることでないだろう?」


「おまえの口でマリスのことを語るな! フェニックス! 力を私に!!」


私は、ケルベロスへの悲しみを心に押し込めて、フェニックスの力を借りて空を駆ける。

さらに、銃を使ってルシエルをけん制するも光の速度で動く彼には届かない。


「同じことだ! 私の力に屈しろ! 反転魔法陣:閃光滅ホワイトアウト フェニックスとの契約は破棄だ!」


ルシエルは物見窓から出た私を追いかけて飛び立つ。

魔法陣がこちらに向けられなければ契約解除は回避できるはずだ。

それだけを考えて塔の曲線的な壁に手を添わせながら魔法を解き放つ。


「最後まで諦めてたまるかぁ!! 基礎魔法:グランド・バリア!」


ルシエルは壁を透過するも、魔法までは透過できていなかったようだ。

フェニックスはまだ隣にいてくれている。さて、ここからどうするか......。

このままじゃ不利だ。なにか、打開策を。光に対抗できる手段はないのか!?


「私はすべての天使の始祖だ! そんな低級魔法に惑わされると思うな!!」


地面に転がり、立ち上がるとルシエルがその瞬間に私の首を捉えてくる。


「ぐぅっ!! あんただって、万能じゃないはずだ!」


「いや、私は万物の神に等しい存在なのだ! 光は星を生み出し、文明を生み出す。一方で人を殺すのもまた光なのだ。自然摂理の神そのものたる私に勝てる手段などない! お前を消す、グレイス・アルマン! 反転魔法陣:閃光滅ホワイトアウト!」



その瞬間、私はなにを思ったのかわからないけど鏡を取り出した。

必死の抵抗か、奥深くに眠っていた前世の知識だったのかわからない。

ただ、ルシエルの光は鏡に反射してルシエル自身に向かう。


「鏡は、光を反射する! ルシエル、今私にかけようとした魔法はあんたに返すわ!」


「ふざけるなぁぁああ!! ただの人間が、私の力を破った気でいるなぁあ!」


「その顔、マリスに見せたかったわ......。ん? あれは?」


ルシエル自身の魔法によって彼は、正中線を起点に切り身のようにパックリと割れている。

その隙間から、見たことのある人影が見えた。あれは、マリス!!


「マリス! はやくこっちへ!」


マリスと思われるそれは、私の声に反応し顔を向ける。

私はルシエルの割れた体に手を突っ込んだ。すると、向こう側から手を掴んできたような感触があった。引っ張り上げると、その先にはやはりマリスがぐったりとしながら出てきた。


「や、やめろおおおおおお!! マリス、私を置いて行くつもりかぁ!」


マリスは完全に私の胸元に抱きかかえられた状態で救出された。

ルシエルは気持ち悪くも体が半分になっても意識はあるようで、反転魔法陣でフェニックスを取り出す。取り返そうともしたけど、今はもう力が抜けて動けない。

ルシエルは、見せつけるようにフェニックスを雑巾のようにして血を搾り取っていく。

フェニックスはカラカラの干物のように地面にぱたりと倒れ込む。

ルシエルは、フェニックスの血を使い半分になった体を元に戻していく。


「グレイス・アルマン! この代償は高くつくぞ! もう一度、マリスを吸収してやる!!」


私たちの方に近づくルシエルの拳を、真っ先に止めたのは他でもないマリスだった。


『久しぶりに目覚めたと思えば、どういう状況だ? まさか、グレイスお前!』


「ふん、元気そうじゃない。ちょっと、最後に肩貸してくれる?」


マリスはルシエルの拳を払いのけて遠くへと追い払う。

そして、私の方に振り向き私に手を差し伸べてきた。


『これで本当に最後の契約だな? グレイス、私と共に戦うと誓うか?』


「ええ。だから、あなたも約束して。私のそばをもう離れないって」


マリスは一言も話さなかったが、彼の口元は少し上がっていた。








ケルベロス、フェニックスの代償を負いつつも、見事マリスの奪還に成功したグレイス。

彼らの反撃が始まる。

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