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107:血の契約

セイネプトスと、彼の契約によって操られているバベルと対峙するグレイスたち。

彼らは決死の作戦でバベルを救おうとする。

 私たちは、バベルの猛攻を必死で止めるも彼の力は私たちでは到底足止めにもならない。

ニーデンベルグが集中できず、魔術を打ち損じてばかりいる中、バベルはいよいよ私を狙いにものすごい速さで向かって来た。


「早すぎる!!」


「グレイス!!」


バベルはその大きな手で私を掴みとり、大きな口を開き始めた。


『お前はまだ、こいつの芯にある心とやらを信じるか?』


マリスは、バベルの大きな腕の上に立ち、噛みつかんとするバベルを抑えていた。

バベルの方は誰彼構わず、必死に噛みつこうとしているみたいだ。

バベルの大きな頭と共にマリスがどんどんこちらに近づいてくる。


「私はまだ、信じたい。私が死んだとしても、みんなが彼を救えると信じているから!!」


『ここで死にたいのか! 貴様!』


「違う! ここで死んだら意味がない。バベルにも誰も殺させない!! 殺すのはセイネプトスただ一人だけだ!!」



一瞬、電撃が走る。ケルベロスが力を貸してくれたのか、バベルの手が緩み危機を脱せた。

でも、まだバベルがあの状態だ。くそ、どうすればいいんだ......。


「グレイス、お前は甘すぎる。だが、このまま彼が救われないままというのも癪だ。最後のチャンスに賭ける。私も手を貸すが、これがラストチャンスだと思え! どちらにせよ早く選択しなければ全滅するぞ!!」


マルファスも私の心に同意してくれたのか、それともアリスの心に従ったのかわからないが、バベルを救う作戦に手を貸してくれそうだ。


「オレが魔法陣を完成させるまで、お前たちが守ってくれ! 悪いが死守で頼むぜ。そのかわり、あいつを必ず取り戻してやる!」


私は、ニーデンベルグを邪魔しようとしたセイネプトスの方へ走る。

彼が自分たちの目の前に現れている今がチャンスだ。殺すなら、ここでだ!!


「向かってくるか、この悪魔がぁ!!」


セイネプトスは、私の方に手を振りかざすとそこから発光しだす。瞬間、ゴーレムのような岩でできた大きな巨人が現れる。


「邪魔だ、どけ!」


私は拳銃を取り出して、魔力とフェニックスの力をかなり込めて打ち出す。

魔力は弾丸となり、ゴーレムはその場で焼け溶けていた。


『セイネプトス、貴様とルシエルそしてウィナス誰が私をここに呼んだ! 誰が、この人間と引き合わせたのだ!』


「知っているだろう? 君は、ルシエルの鏡だ。すべてを知っているはずだ」


ルシエルの鏡? 

そういえば、冥界で会ったディーアという悪魔も「マリスはルシエルの分身だ」と言っていた。

それは多分、ルシエルと私、そしてマリスがつながっているということになる。

マリスは怒りに任せ、セイネプトスの腕をつかみ距離を縮める。


『私は、知りたいと言っているのだ。誰だ!』


「かつて、天使同士で争いが起きた。この地を誰が管理するかと、私はすべてを作ったルシエルが妥当だと思った。当然だろ、彼が我々を生んだのだから。だが、一部はそう思わなかった......。ルシエルはその一部に追われ堕ちていった。そして文明が誕生し、ルシエルは冥界へ行った」


『それがどうした。私が知りたいのは私をここに呼んだ天使だ!』


「君は、ルシエルが彼自身復活のための最後の希望となり、冥界から地獄の道を通り別の世界へ行った。それをいち早く察知した私が呼び戻した。ルシエルの力となる『絶望』を抱く別世界の青年と共に。だが、それが裏目に出てしまうとは」


別世界の青年って、前世の私のことか? 

でも、本当にマリスはルシエルと同等の存在なのだろうか......。

どうにも違和感しかない。彼の倫理観はかけているかもしれないが、ここまで旅を続けていて本当の『悪意』を感じなかった。優しさが底にみえていたからだ。でも、それは私を利用したいから? それだけで、私を守れるの? 私の仲間を救う手伝いをしてくれるの?


『なるほどな。つまり、貴様はルシエルの一番の恩人で私の敵ということだな?』


「違う。君の恩人ということでもあるんだ。君は、私の知る君に戻れる。私の愛した、君に! ルシエル」


『そうか。なら、お前を殺す』


その言葉に、セイネプトスは動揺する。

彼の恐れと、焦りが目に見えてわかる。それと共に、マリスの口角があがっていくのが見えた。


「な、なぜそうなる!? 私は、君の恩人だ! そうだろ、友よ! ルシエル!」


『私は、ルシエルではない。ただの悪魔 マリスだ。 私はこんな世界知らん。知らんが、貴様は恩着せがましくて気に食わん。それに今、絶望したな? 恐れを抱いたな......。貴様が恐れる瞬間は、私......いやルシエルから見放されることだな!? 絶望を、私に見せてみろ』


「恩を仇で返すつもりかぁああああ!」


こいつになんの恩も感じないというか、なにも思わない。

ただ、哀れに泣き叫ぶ天使に私は呆れながら剣を取りだす。


「あんたに恩があるとしたら、この世界に連れてきてくれたことくらいね。おかげで、私は......俺は生きる目的を見つけた。そこは、感謝できる」


セイネプトスの首から一筋の血が流れていく。

彼は苦しみながらもその傷を癒し、再生しようと試みる。


「わ、私が死んでも契約は破棄されない! 契約主を失ったものの末路は、暴走だ!! 貴様らを殺すまで、彼は永遠に動くだろう!!」


私が剣を振り上げようとした瞬間、ニーデルベングの声が聞こえる。


「グレイス! まだだ、こちらに息を合わせろ! 契約破棄と、天使を殺すことそれらを同時にすれば暴走は止まる!! 行くぞ!!」


彼のそばにはすでに魔法陣と、キックス、マルファスが補助で固まっていた。

アリスがその魔法陣にバベルを引き寄せていた。みんな、だいぶボロボロだ。


「破棄などさせるかぁ!! 私が死んでもなお切れることのない契約魔法を、あの汚らわしい獣人にかけて、お前たちを絶望させてやるぅ!!」


「させるものかぁあ! ニーデルベング、まだなの!」


私は、ニーデルベングの方に目をやる。すると、彼はこちらを向いて頷いた。

それは、決行の合図。 今だ!


「反転黒魔術:契約破法陣」


「死ねええ!!」


魔法陣の光と同時に、セイネプトスの首が宙を舞いながら粒子状に消失していく。

バベルも、元の姿に戻っていく。だが、気を失っているようだ。


「バベル、無事みたいね」


ぽつりとつぶやくと、アリスが床に尻をつく。


「よかったぁ......。仲間が救えて」


「ああ、これでなんとか解決したか」


アリスの安堵の表情につられて胸をなでおろすニーデルベングとマルファス。

だが、私たちの前に新たな天使が顔を表してくる。


「よくやった。セイネプトスは、我が力となるだろう......。ようやく、準備は整った。後は、お前だけだマリス。いや、もう一人の私よ」


ルシエルは、消えゆくセイネプトスを体の中に取り込んでいく。

彼の姿はマリスと私の容姿が混じったような姿をするようになってきていた。

あれが、彼の本当の姿だと言うの?


「ルシエル......。 ニーデルベング、まだ走れる?」


「ああ。お前たちよりかはな」


「バベルを背負って、先に拠点に帰ってて! みんなも」


私は、私だけでこいつと決着をつける。もう、誰一人失いたくないから......。

ここまで連れてきたのは私だけど、だからこそ、みんなを生きて戻ってもらう責任がある......。


「グレイス、いい案だけど私は逃げないよ。革命軍の長として、天使と決着をつける必要がある。それに、昔施設で友達になれなかった子の無念を晴らしたい......」


「私は、グレイスとともにある。グレイスがお前についていくのなら私も同じだ」


でも......。私は......。これで、いいのだろうか......。

彼らとは反対に、キックスはさらりとした表情でニーデルベングとバベルの元に向かう。


「私は、君の言葉に甘えさせてもらうよ。君たちと心中するほど、仲はよくないし国を立て直すという使命があるからな」


心なしか、彼の声は上ずっているようにも聞こえた。

ニーデルベングはバベルをキックスと共に運び出していく。

彼は振り向きざま


「お前の仲間は俺が絶対に送り返してやる。だから、お前達も帰ってこいよ」


「ありがとう。バベルをよろしく」


3人を見送り、私たちは再びルシエルに対峙する。




バベルは見事に救われ、ニーデルベング、キックスとともに離脱。

グレイス、マリス、アリスそしてマルファスが残り、ルシエルと対峙する。


ルシエルの目的はただ一つ、マリスを取り込み完全になること。

彼は、グレイスたちの前で最後の契約をマリスにかわす。

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