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106:城攻めⅢ

グレイスたちの前に旅の都度に助けられた恩人であるバベルが襲い掛かる。


 「ああああああああああああああああ!!!」


 私は、怒りに任せて相対するバベルをよそにセイネプトスに拳を振るう。

だが、セイネプトスは一ミリも動かない。


「バベル! 手を放して!! こいつ、殺せない! こいつを殺せば、あんただって目を覚ます!」


バベルに取り押さえられるも、私は彼のその腕を振り払おうとした。

だが、力が強すぎて暴れることしかできない......。

それを見たマリスは、状況を利用してセイネプトスに向かう。


『グレイス! そのまま、そいつを抑えていろ!』


「私に触れることは許されない。たとえ、君がルシエルの写し鏡であってもだ」


『私は、マリス! 異世界からきた悪魔だ! おまえたちの仲間などではない!!』



突如、私の拘束が解けるとマリスの方にバベルが向かっていた。

マリスは後ろを向いて気づくも少し遅かった。


「マリス!!」


「私が死ねば契約は解除されるといったな、グレイス・アルマン。だが、それは間違いだ。血の契約は契約者が死んでも解くことはできない! 永遠に我らに尽くす番人と化すのだ」


それでも、相手が使っているのは魔法だ。なにか、その魔法を解除する方法があるはずだ!

だが、そんなことを考えていると、バベルはマリスを離れてなぜかキックスの方へ向かっていた。


「ぐぅっ!!」


キックスは、鋭い爪でバベルに引きずられていく。


「貴様、なにか気づいたな。キックス!」


セイネプトスの言葉をよそに私は彼の元へ走り出す。

二人を助けたい、でも......!!


「キックス!!!」


思わず私は、バベルの元に向かい思いきり殴り飛ばしていた。


「ごめ......」


「謝っている場合か! やつは敵となったんだ! 今対処する方法は一つしかない!」


マルファスは非情にも影から剣を取りだしてバベルにその剣先を向ける。

いや、殺す以外にも絶対になにかこの契約を解く方法があるはずだ。

私はマルファスの方へ向かい、剣を持つ手を引っ張る。


「待って! まだ、救えるはずよ」


「選択肢はない。こいつは、アリスの言葉に耳を貸さず単独行動をした。その結果がこれだ! 一矢報いるどころか、相手に利用されて......。彼の安らぎはもう我々のところにはない!!」


言い切ったマルファスは私の手を振り払い、バベルの元へと向かう。

バベルは、敵意を持ったマルファスにとびかかろうとした。

だが、そこにアリスが高く飛び上がりバベルを落とし、地面に抑え込む。



「バベル! こんなところで天使に利用されたまま死んでいいと思ってるの!?」


懸命にアリスが言葉をかけるもバベルはうなり声しか上げない。

動けない私やバベルに訴えかけるアリスをよそにマルファスはバベルに攻撃していく。


「黒魔術;影刺し!」


アリスの身体を透け通り、バベルの身体に鋭利な棘がささっていく。

だが、バベルはそんなことを気にせずにこちらに向かってくる。


「奇跡を信じる力など、『圧倒的な支配』の前では無意味だ。人間が天使に抗うことはできない。それが、人間の弱さなのだ。弱いから、天使にすがり、契約をかわすのだ」



「弱くても契約なんて必要ないし、支配される必要もないはずだ!」



アリスがマルファスの攻撃を止め、羽交い絞めにしているとバベルは再び俊敏にこちらに向かってくる。 私は、なにもできず突っ立っているとマリスとキックスがバベルを抑え込んでいた。


『なにか、策があるようだな。貴様』


「契約魔法なら、対策はあるだろ? 君たちを分断した反転黒魔術だ。それがキーになってる」



だが、ここにいるメンバーでは黒魔術は使えるマルファスはいても反転黒魔術が使える人間はいない。

キックスの笑顔が余計に不安を誘う。


「でも、どうやって!」


「きみなら、ニーデンベルグを呼び出せる! 君が契約した、竜人だろ!! 私たちが時間を稼ぐから、呼び出せ!」



マリスとキックスは視線を合わせてバベルに挑んでいった。

でも、どうやってニーデンベルグを呼び出すんだよ......。基地に戻るか?

いや、時間がかかりすぎる......。いや、それならみんなに言えばいい話だ。きっと、私にしかできないことで、私が忘れていること......。


「......。そうだ、次元鏡!!」



私はポシェットの中から次元鏡をあさった。

ケルベロス、フェニックスそれぞれが鏡の向こうで休んでいる中、ひとつだけ鏡の向こう側がみえないものがあった。これが、ニーデンベルグの?


「ニーデルベング! そこにいるの!? 返事して!! ニーデルベング!!」


『な、なんだ!? 頭の中で声が聞こえる!! 誰だ!!』


「私よ、グレイス! グレイス・アルマン! あんた、前に私と契約していたよね?」


......。静かな時だけが、過ぎていく。なんだ? 通信不良とかか? てか、通信不良ってなんだよ!!


『だいぶ前に、お前と握手したときに次元鏡に入ったってやつか? もしかしてそれを通じてオレと話してんのか?』


「細かい話とかは置いて、助けてほしいの! 貴方が習得した反転黒魔術、それが今必要なの!! だからお願い、力を貸して」


『なんだかわからんが、分かった。オレをそっちに転送してくれ』


転送という言葉が正しいのかわからないが、私は思いを込めて次元鏡を正面に突き出した。

すると、鏡が光りだしてニーデルベングの影が見えた。光が収まると、そこには体がボロボロのニーデルベングが立っていた。


「あんた、大丈夫なの?」


「問題ない。で、なぜオレが必要なんだ?」


ニーデルベングに説明する時間も惜しいが、とにかく私はバベルの方を指さした。


「あの子を助けたい!」


「あいつは、たしかバベルとかいう隠密部隊長だったな。なんでこうなったかはわからんが、やるしかなさそうだな」


ニーデルベングの動きに合わせて、セイネプトスがものすごい速さで彼の腹部に蹴りを入れる。


「ぐはっ! あんた、セイ......ネ、プトス......」


「この時を待っていた。禁忌の魔術を会得した最後の使者が現れるのをな。だが、驚いた。竜人の落ちこぼれだった君までもが裏切り、さらには魔術を会得した張本人だとはな」



セイネプトスは自分の服の中から赤い液体の入ったガラス瓶を取り出した。

そして、そのガラス瓶の中の液体を手に出した後両手を合わせた。



「我が聖名みなにおいて命ずる。この血をもって力とし、上位契約とせよ! テイム!!」


バベルの身体はさらに大きくなり、2足歩行から4足獣へと変貌していく。

口もさらに開き、牙も下あごよりも長くなっていた。今まで出会ったどんなモンスターよりも恐ろしい化け物が誕生してしまった。


「確かに禁忌の魔術でなら彼を戻せるだろう。だが、それ以上に強い契約魔法を今かけた。おそらく君たちをすべて食い殺す。そして、自らをも破滅させるだろう。彼が先に破滅するか、君たちが先に全滅する前にこの契約魔法が解除できるかな?」


バベルの咆哮が焦る私たちを奥へ吹き飛ばしていく。









目の前で契約を強固にして、グレイスたちに絶望を見せていくセイネプトス。

だが、彼女らの目はまだ希望の炎が燃えている。

もう二度と、仲間を失いたくはない......。

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