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105:城攻めⅡ

ミノタウロスのせいで迷宮と化した2階を彷徨うグレイス。さらにミノタウロスが彼女らを襲う。

壁に伝って迷宮と化した城内を探索するが、3階への階段へはたどり着くことはない。

というより、どこにも階段が見えてこない。同じところをぐるぐると回っているようだ。


「ここ、前もきたんじゃない?」


私が、呼吸を荒くしながら聞くとマルファスはこちらを向く。


「似たような壁というだけだ。確実に前に進んでいるはずだ。」


すると、地響きと共にミノタウロスのうめき声が聞こえる。

地面を滑っていく感覚が私たちを襲う。


「な、なに?」


「アリス、離れるな! まさか、グレイスの言う同じ道に来ている感覚とやら、あながち間違っていなさそうだな」


さらに動いていくと、直線状にミノタウロスの姿が見えた。

ウシの頭に大きく屈強な人間の肉体が私たちを待ち構える。

そして、彼の腰に巻かれた布に小さく輝くものがあった。


「なんか、腰に光るものが」


「3階への階段通路の鍵かもしれん! やつの気をそらしてそれを手に入れるぞ」



キックスの言葉に気付いたのか、ミノタウロスはこちらにとてつもない速さで距離をつめる。

こいつ、デカいくせに速い!!


『グレイス!』


マリスが私の前を覆うと同時に、ミノタウロスの突進は、私とマリスごと壁を貫き吹き飛ばす。

ここで終わってたまるか......。みんなのもとに戻らないと!!


『立てるか?』


「当たり前よ。あいつの元に行くわよ!」


マリスを利用して、貫いた壁の瓦礫を越えてミノタウロスの元へと一気に向かう。


基礎魔法エレメンタル:エクスプロージョン!! 吹き飛べぇ!!」


見様見真似で習得したせいか、ミノタウロスがあまりにも屈強なせいか火属性魔法最大出力であろうエクスプロージョンでも奴の図体を数センチ動かしただけだった。


「みんな、大丈夫?」


「私たちより、グレイスは大丈夫なの?」


アリスは私の両手を握る。私は、彼女の手をぎゅっと握る。


「うん。生きてるよ......」


アリスはホッとすると、ミノタウロスの方へ向くと同時に牙をむく。


「私だって、戦えるんだよ! ニーデンベルグから教わった剣術で細切れにしてやる!!」



アリスは、大きな拳を振るうミノタウロスに双剣を使って受け流していく。

風圧を押しのけ、私は次元鏡からフェニックスを呼び出す。


「フェニックス! 私の魔法に合わせてミノタウロスに炎の吐息を! 基礎魔法エレメンタル:ヒートゲイル!」


風がフェニックスの吐き出した炎を巻き込み、勢いを増してミノタウロスの体毛を燃やしていく。

火だるまとなったミノタウロスはのたうち回っていく。その影響か迷宮も移り変わろうとしている。


「ミノタウロスから離れないで!!」


アリスは、ミノタウロスの方へ走るのを見て私たちも壁がうごくより先にミノタウロスの近くへと寄っていく。その隙にマルファスがミノタウロスの腰みのから鍵を奪っていった。


「溶けるかと思ったぞ」


「あんな熱じゃ簡単に溶けないわよ」


といいつつも、若干冷や汗をかいてしまった。マルファスの言う通り、鍵の錠を開ける方とは反対面がべっこう飴のように形が変わっている。これが、錠を開ける方だと思うと、恐ろしいことはない。


『こんなことで、恐れている場合か。さっさと、階段へ続く扉へ向かうぞ。私は早く天使を殺したい』



マリスは片手をぎゅっと握りしめ、復讐の炎に改めて火をくべる。

過去の清算も大事だが、今はもっと大事なことがあるんだよな......。


「それより、バベルの救出でしょ。牢屋にはそれらしき人物は見なかったし、彼も4階にいるのよね」


そういうと、キックスは頷いた。


「ああ。セイネプトスの性格上、獣人のような今どき珍しい種族となると手元に置きたがるはずだ。なら、やつがいつもいる4階に行くのが最優先事項だろう」


ミノタウロスの消失が要因かはわからないけど、迷宮とかした2階の視界が開けていく。

階段へ続く扉をキックスが見つけ、鍵を開けていく。


「3階は、確か儀式室だったな」


マルファスはぽつりと言い放つ。一瞬、階段を上る足を止める。


「儀式室?」


「魔人へと変容するための儀式を行う部屋だ。まぁ、実験室と言い換えてもいい」



マルファスに背中を押され、再び階段を上がっていく。さらに、3階の扉を開く。

そこに見えたのは、実験台ともとれる拘束具付きベッドに横たわるバベルの姿だった。


「バベル! あんた、大丈夫なの?」



手枷と足枷を私とアリスで必死に外そうとするも、力ずくでもびくともしない。

すると、奥から大男が現れた。男は、白いローブに身を包み清廉潔白そうな顔つきで私たちを見つめる。


「君たちの言う自由や、幸せは我々がいたからこそ成り立っていたというのに......。どうして、彼ら獣人は私に反抗したのだろうか」


「セイネプトス......」



キックスの声に反応したのか、彼は悲しみと憂いの表情を見せる。



「おお、キックスよ。どうして君も邪道を歩み始めたのか」


「それは、あなた方の元についても一向に国がよくならなかったから。というより、仲間もオークにされ、話もできなくなった。頑張りも認められず、ここに自分の居場所がなくなった気がした......それが大きいです」


キックスは、セイネプトスの向ける熱い視線を負い目を感じるように縮こまっていく。

彼とセイネプトスの間に私が入り込み、対峙する。


「人を魔人にして、兵器や駒のように使った先に自由や幸せがあるというの?」



「もとより、君たちが奪おうとした秩序だ。それを取り戻すための戦いだ。それこそが人間の自由がある。幸せなど、必要がない。人は自由であれば幸福を感じるからな」


「支配は、自由とは呼ばないっ!」


「いや、逆だな。支配がなければ自由はない。真の自由は、支配のもとにある」


セイネプトスは、実験台の枷を外してバベルを操るように手を添える。


「彼には魂食らいの悪魔フェンリルの血を投与し契約した。これはとても強い『血の契約魔法』だ。彼は、我らのよき番人になるだろう。獣人はそれを拒んだがな......。私のかわいい子よ、あの悪魔たちを根絶やしにしなさい。魂を食らうのです」


バベルの目にはもう意志はなく、うつろな表情だ。


「君たちには、自由を得ようとした。罰を受けてもらう」


私たちの誰もが、想像したくなかったことが今、目の前で起きてしまった。

ようやく3階にたどり着いたグレイス。

そこにはバベルがいたものの、彼はすでにセイネプトスの毒牙にかかっていた。

グレイスたちは、選択を迫られる。

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