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104:城攻め1

人の死を乗り越え、歩き出すグレイスたち。

そこには多くの試練が待ち構えていた。

地下へ続く階段を、私たちは先導するキックスの持つ松明を頼りに下に進んでいく。

キックスの持つ松明と、地下階段に沿ってぽつぽつと壁にかけられた松明が足場を最低限に照らしている。光源は十分にあるはずなのに薄ぼんやりとしか見えていなくて不安だ。


「ここからどうやって本丸を攻めていくの?」


小声で話したつもりなのに、自分の声がエコーがかかるように反響する。

その後、キックスがこちらを見ずに答えた。


「地下からまた階段を上って地道に敵を減らしていくしかない。正面突破よりかは当たる人数は少ないだろう」



地下牢に着くと、確かに人気がない。

檻の奥から叫び声や、うめき声が聞こえて気味が悪い。

さらには、ズズズと暗闇でうごめいているのを気にせず城の中へ続く階段を探す。


「王立騎士団、私たちの拠点に攻め込んできたときは結構いたの投獄されてる人しかいない」


アリスは、ぽつりとつぶやくと、キックスはため息交じりに


「君らに倒されているというのもあるが、それ以上に人手不足だからな」


「あんなにいたじゃんか。どうなってんだよ」


私の言葉にキックスは振り返る。


「天使に、そのほとんどを奪われている。生贄としてな。俺たちが動くより効率がいいんだろう」


「ここに捕らえられているのは、やはり魔人の実験態か?」


マルファスが重い表情で聞くと、キックスは少し語り始める。


「......。元、人間の同僚たちだ。そして、これから魔人として生まれ変わるやつらだ。こいつらは全員、オーク兵として活躍することになるだろう。そして、不要になれば天使に食われる。こんなの、私たちは望んでいない。ただ、私たちは国と民のための剣と盾でありたかった」


「檻に入れられた人たちも望んでるわけでもないでしょうに」


私がキックスの方に手を置くと、突如上からギシギシという音が聞こえた。

なにかがこっちに向かっている?


「だが気をつけろ。人手不足とはいえ、上にはセイネプトスお気に入りの巨大な契約モンスターが何体かいるぞ」


上へあがる階段を見つけるが、そこから音が聞こえる。

だが、城内に潜り込むための階段はここしかない。だったらもう、行くしかない。


「こっちは喧嘩上等でカチコミに来たんだ。ひるんでられない!」


私たちは、またも階段を使い城の中へ潜入する。だが、そこには階段を塞ぐ大きな巨体が待ち構えていた。巨体は、大きな一つ目で私たちを捕らえる。



「これは、サイクロプスか!」


サイクロプスは階段下で驚く私たちを見つけるなり、両刃斧を振り上げこちらに振り下ろしていく。

難を逃れたものの、階段は見るも無残にがれきとかしてしまう。

ああいうのは、多分目が弱点だ。私は、ポシェットから銃を取り出して何発か頭の方に撃つ。



「ギャアアアアアア!!」


サイクロプスが目を抑え始めた。今が、チャンスだ!

私たちは瓦礫とサイクロプスを避けながら上へあがっていく。

だが、サイクロプスは目を抑えつつも階段をどたばたと駆け上がっていく。


「嘘でしょ!!」


サイクロプスの大きな腕がアリスに引っかかり、そのまま掴まれてしまう。

私とマルファスはそれに即座に反応する。



「アリスは私が守る! 黒魔術:シャドウ・コントロール!」


「私だって!! エレメンタル:フレアマグナム! 炎よ、銃にやどれ!」


アリスを掴むサイクロプスの腕が、影でつくられた触手に掴まれて動きを止める。

その隙に相手の手首を狙って私が、弾丸を放つ。弾丸は炎を纏い、勢いを増しながらサイクロプスの肉の壁を突破していく。


「ありがとう!」



サイクロプスは粉砕された手首の痛みに苦しみ、動けない状態だ。

今のうちに上へあがろう。


ようやく1階が見えると、さすがにオーク兵たちがあたりを監視していた。

ここは静かにいかないと......。


「さっきの騒ぎが聞かれていないとも限らない。用心しろ、グレイス」


「うん、わかった。さb......あ、ごめん」


一瞬、サバトがキックスに重なって見えてしまった。 

キックスは少し驚いていたが、すぐに私の肩に手を置いて


「気にするな。長いこと、連れ添って来た相棒だったんだ。いないことを受け入れられていないのも無理はない」


「別に私は......」


すると、マルファスが私の口を押えた。

そして、頭の中で彼の声が聞こえてくる。


『騒ぐな。ここは敵地だぞ! ここは、私がお前たちの影を伝って念話で指示をだす。それでいいか、アリス」


アリスは黙って頷いた。

たしかにここは曲がりなりにも兵士がいる。

用心しなくては......。


『グレイス、左に見える扉があるな。そこへ向かえ。心配するな、私もキックス同様この城内を把握している』


本当かと思いつつも、私たちは兵士に見つからないように死角を使って遠回りしつつもマルファスの言う扉の方へ向かう。しかし、死角にも兵士が立っていた。

こちらには気づいてないのが幸運というべきだろうな。


『ゆっくりと近づいて、あいつの息の根を止めろ』


アリスが小さなナイフを取り出し、音を立てずに走り兵士を屠る。

やりなれたような手つきに少し口が開いたものの、これで扉に着ける。


『よし。ここの奥に兵士は配備されてるのか? キックス』


そういうと、彼は首を横に振った。どうやらいないようだ。しばらくは安全だな。

そう思い、ゆっくりと扉を開けて短い階段を上がる。


「もう大丈夫だろう。って、ここはどこだ?」


「どこって、城でしょ?」


キックスの慌てた様子とともにマルファスも違和感を感じていた。


「2階は部屋が複数並んであったはずだ。それなのに、なんだこの迷宮のような壁は......」


内側から攻められないように仕掛けられた罠なのだと思っていたが、どうやら違う見たいだ。

迷宮となった2階を壁沿いに進むと、牛のような鳴き声が聞こえてくる。


「なるほど、ここはミノタウロスの縄張りということか。先は長そうだな」


キックスが一人で勝手に納得いってるのに少し腹が立っていた。

ていうか、私たちの目指している場所って何階なの?


「先は長そうって、セイネプトスの居場所は?」


「4階の王の間だ。彼らは、そこでいつも復興の策を立てている」


確かに、先は長そうだな......。ミノタウロスとかいう怪物の縄張りである迷宮を抜けないといけないのか......。牛の啼き声は壁を伝って聞こえてくる。私たちは、それに怯えずに迷宮を探索する。


2階の迷宮は、そう易々とグレイスたちを迎え入れてはくれない。

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