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103:それでも私は、デーモンテイマー

グレイスは、パンドラの言葉に動揺を隠せないでいた。

それでも、彼女は【白銀のデーモンテイマー】グレイス・アルマンだと自身を奮い立たせる。


※だいぶ改稿してます。

 パンドラは茫然とする私に近づき、仮面を外して舌を出しておどけはじめる。


「どうですか。真実を知った感想は......。触れたことのない深淵に触れた気持ちは? 最悪ですか? それとも、秘密を知って嬉しいですか? ぜひ、お聞かせください! ハハハ!」


彼の笑い声が、自分の脳内でこだましていく。

私だって、なにも考えずに笑っていたいのに!


「お前が、笑うな!」


私は、その笑い声を止めるためだけに声を上げていた。

全体が静まり返ったその瞬間、私は自分の走馬灯を見た。


家を追い出されて、いろんな街に出かけて、天使と戦ったり悪魔と戦ったりした。

それは、誰に指示されたわけでもない、グレイス・アルマンとして自分がやってきたことだと改めて理化した。


「笑っていいのは、戦って自由や、幸せを勝ち取ろうとしてるやつだけだ! 絶望を突きつけて、愉悦にひたるような馬鹿野郎じゃねえ!! それに、私は誰が何と言おうと白銀のデーモンテイマー グレイス・アルマンだ!!」


パンドラは、目を丸くするもスッと元に戻りため息を吐く。


「はぁ、ジョークに怒る人って、本当につまらない人生を送っていたのでしょうねぇ。つまらないです」


「ジョークだって? 人の辛い過去や生い立ちを笑っていいわけがないだろ!」


私の異変に気付いたサバトがいつの間にかやってきて自分の持つ槍の先端をパンドラに向ける。

私はサバトの前に出て彼の感情を抑えた。


「気持ちはうれしいけど、これは私の問題だから」


「魔人は私としても消しておきたい。だが、ここはグレイスに任せるとしよう」


「でも、僕はグレイスを守るって決めたから」


マルファスの意外な言葉にもサバトは食い下がらずに前に立つ。

パンドラは、ベストのボタンをはずしその内ポケットから小さなナイフを一本取り出す。

手品のように、手元のナイフを2つ、3つ......どんどん増やしていき数百本を空中に浮かべていく。


「ごちゃごちゃ、うるさいですね。もう、全員殺しますかぁ」


マルファスはナイフを何本か跳ね返すも、パンドラには遠く及ばず自分を守るのに必死の様子だ。私は、せめてサバトをカバーしようと前に出て、マリスと共に投げ出されたナイフをすべて体で跳ね返そうと構えようとした。だが、意地を張り続けるサバトは魔法を唱える。


「基礎魔法:ジオ・マグネ! グレイスに一本たりともナイフを刺させるものか!」


私の目の前に来ていたナイフはすべて急激に曲がりサバトの方へ向かっていく。

だが、多くのナイフがサバト一人に突き刺さっていた。


「自分からナイフにあたりに行くとは。バカな人ですねぇ......」


最後のナイフが、私のひざ下あたりに突き刺さる。

それよりも、重く突き刺さった彼の死という名のナイフが、私の中にある【糸】のようなものをプツンと切り裂いた。


「うあああああああああああああああああああああああ!!!!!」


ナイフを抜き取ると、べったりとついた自分の血がついていた。私は、それを思いきり振って血をふき取る。そしてナイフ片手に自分のポシェットに入っていた銃を取り出して、何発か撃つ。


「当たりませんよ。そんな弾」


パンドラはそれを華麗に避けて見せた。だが、そんなの分かってる。

私の目的は、彼に近づくことだから......。パンドラの背後に近づいた後、左手に持っていたナイフを肩に刺して標的が逃げないように固定した。


「これなら、数撃たなくても殺せるだろ......」


「怖いですねえ。それが人間のやることですか? あ、人間じゃありませんでしたね。同類でしたね、申し訳ありませんね」


「楽に死ねると思うなよ、くそ野郎がぁ!!!! 」


「......人間なんて、悪魔と変わりませんね」


私は、彼の言葉を最後に引き金を引いた。何度も、何度も......。彼の笑い声が響かないように、彼の顔が二度と見られないように、自分の魔力が限界になるまで打ち続けた。


『おまえも悪魔らしくなったな』


「一緒にしないでよ。私は......ただの弱い人間よ」


ナイフを捨てて、私はようやくサバトの元に駆け寄っていった。

彼の血はまだ温かい......。フェニックスの羽さえあればなんとかなるかもしれない。


「サバト! ねえ、いかないでよ!!」


私は必死にフェニックスからもらった大量の羽をサバトの患部に当てていく。

だが、彼の顔は生気を取り戻さない。


「君のことは、僕が守るって言ったじゃないか......。約束、だろ?」


「これからも、ずっと一緒にいてよ! 友達でしょ!! 仲間だったでしょ!」


すると、彼はフッと笑った。


「ともだち......か。つらいなぁ......。ぼくは、君の恋人でいたかっ......た」


彼の目から光がなくなった。

彼の身体が、涙で濡れていく。


崩れ落ちる私に、レイアらしき声とぬくもりが近くに寄ってくる。


「あなたのせいではありませんよ。彼は、勇敢に戦ったのです。むしろ、彼の死を無駄にしないために立ち上がってください! グレイス」


「うぅ......。くぅ! 死にたい! でも、今死んでも後悔するし、サバトに怒られる!! こうなったら城に乗り込んでやる!!」


「私も行く。バベルが危ないしね」


アリスが私の強張った手を取り、ほぐしていく。

アリスに目くばせされたマルファスも、ため息をつきながら頷いていた。


「私は、ここを守る義務がありますので......。これ以上、惨状は増やしたくない」


レイアさんは、サバトの死を受け止めてこの地を守ることに専念したのだろう。

彼女の眼は揺るがない信念に満ちていた。


「城に攻め込むのだろ? 私が案内しよう」


「キックス、あんたはいいの?」


「私もそうだが、人間は脆い。だから、サバト君のように大きく偉大なものにすがる。だが、同時に彼のような自分で選択できる強い意志と闘志を見て、君たちならこの国を変えられると思った」


こうして、私とマリス、そしてアリス、マルファス、キックスの5人で城へ向かうことにした。

ケルベロスを使うと、これまでの旅が嘘だったかのように背景が移り変わり、山を越えていく。

城の大きな城壁が小さく見えてくると思ったら、もう大きくなってきていた。


「久しぶりのマトハルね......。これからどうしようか、正面突破だなんて言わないよね?」


私がキックスとアリスを見ると、アリスは明後日の方を見ていた。前に私を助けに来た時も正面突破だったもんね......。キックスは、逆に提案があるように頷いてきた。


「君たちが、脱獄した時とは別にもう一つ、地下牢への入り口がある。それは、王国騎士団の金級勇士の限られた人間しか知らない。そこから行こう」


「キックスは、それを知ってるってことよね」


「......当然だ」


キックスに言われるがまま、私たちは人通りの少ない城壁を回っていった。

正面と反対の方にくるが、そこにはなにもない。


「ここだ」


キックスが、一か所だけカラスの紋章の掘られたブロックを押し込むと、城の城壁が動き出し地下へ続く階段をあらわにした。


「バベルには、いろいろ助けられたんだ。今度は私が助ける番だ!」


「うん。私も、彼には死んでほしくない。これまで共に支えあって来た仲間だもん」


アリスは私に賛同すると、他のみんなも頷いてくれている。

それを合図に、私たちは階段を下っていった。





サバトは、どこへ行ったのだろうか。

天に還されたのか、それとも地獄へ堕とされたのか......。

ずっしりと重い心を背負い、グレイスは城へ潜入する。


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