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101:美しき世界へ

グレイスたちの前に現れたウィナスとクノロス。

彼らは執拗に革命軍に迫り、戦いに挑んでいく。

 多くの革命軍が私たちを横切り、地面を揺らすように相手の神聖天界警団もこちらに向かって剣を取って切り倒し、魔法で相手を翻弄していく。殿を倒せば、この戦況を立て直せる。だが、オークたちがそうさせない。


「グレイス! 雑魚は私たちが引き受けます。 その間に天使を」


レイア、そしてアリス達が大勢のオークと対峙している中、私とマリスが駆け上がっていく。


「わかってる! 行くよ、マリス!」


『ああ。終わりにしてやる!』


だが、オークと人間たちで構成された勇士たちも負けじと私たちを人数で圧倒する。

マリスは人間たちを、そして私はオークたちを一掃するため拳を魔法を解き放つ。


『邪魔だ!』


「どけ!! 基礎魔法:エアロ・ストーム!」


マリスは、自分の拳でオークを蹴散らしていき、私は風の魔法で、一気にオークたちを吹き飛ばしていく。吹き飛ばれていったオークたちは地面へ落下し、ぐちゃりと地面に落ちる音が聞こえてくるも、オークたちはいまだ立ち上がる。


「な、なんなのこいつら」


「グレイス! 気を付けて、こいつら倒しても倒しても倒れない! むしろ、僕たちよりも元気になっている!」


「サバト、それってどういう」


サバトが答える前に、クノロスが表情の読み取れない顔ながらも、なんとなくニヤニヤしたような目つきで私たちに教える。


「それは、オレが授けた天啓ギフトを持つオークだ! 何度やられても時間が戻ったかのように回復し、元に戻る『リ・バース』というギフトでな」


命を投げ捨てようとしたわたしが言えることじゃないが、こいつも魔人の命などどうでもいいように見える。だが、あんなふうに捨て駒にされるのはごめんだ!


「クノロス! てめえ、そいつらはお前の駒じゃねえんだぞ!」


「知るか! オレはお前を殺すために来た! お前を殺すために邪魔なやつらを足止めするにはちょうどいいやつが必要だっただけだ!」


クノロスは、その小さな体を浮遊させてこちらへと向かってくる。

だが、それをウィナスが止めていた。


「ちょっと、僕たち天使は戦うなってセイネプトスに言われたでしょ? それを守らないってのはちょっと美しくないんじゃない?」


「黙れ! オレがお前と手を組んだのは、セイネプトスの命令だからだ! お前に指図いわれはない。それに、セイネプトスはオレに対して好きにしていいと言っていた」


「そんなに死に急ぎたいなら止める義理はないね。風はただ、流れるだけさ」


ウィナスは、そう言い残して戦場から消えていった。今は追わなくていい。一体でも多くの天使を倒せることができるならこっちのもんだ。ルシエルを殺すことを邪魔するのであれば、天使であっても殺す必要がある。共存や共闘なんて難しいこと考えるより、こっちの方が性に合ってる。



「お前の命は天に還らない。お前の魂はこのオレ、クノロスが確実に消滅させる! 黒魔術:反祈祷リ・プレイ!」


空中に浮き出た魔法陣から時空のゆがみのようなものが発生し、悪魔を召喚し始めた。悪魔の容姿は手足のある人間のようだが、ハエのように小汚く、蟲のような複眼を持っていた。それは、昔降魔郷のフロストが手にしていたベルーゼブとそっくりだった。クノロスの魔法はやはり、死者蘇生魔法ということか? いや、死者召喚というべきか......。ベルーゼブは、自分の意思など持たず人形のように操られながらこちらへと向かってくる。



「自分の手で殺すという割には、召喚魔法みたいなことしやがって! こっちだって、ケルベロスがいる! ケルベロス、そのハエをかみ砕いてしまえ!」



次元鏡からケルベロスが飛び出していき、ベルーゼブの首元に噛みついた。噛みついた瞬間、ベルゼブブに電撃が走っていく。しびれたベルーゼブは四つん這いになりつつも、自分の眷属であるコバエを呼び出してケルベロスを引きはがす。



「うるさいハエだな! 基礎魔法:フレイム・ブラスト!」


「グレイス、こういうのは、僕に任せて!」



大勢のコバエに手をかざしていくと、爆風と共に炎が巻き上がりコバエを落としていく。

それはベルゼブブ自身にも効果があったのか、若干苦しんでいるようにも見えた。


「ここは一緒にやった方が効率がいいでしょ! 契約魔法:獣装ケルベロス!」


「分かった! 基礎魔法;ブリザードテンペスト!」


サバトの魔法により、クノロスは全身が氷で覆われていった。

私は、ケルベロスを次元鏡に戻して、力を借りた瞬間に私はすばやくベルーゼブの方へと向かう。


「獣装が、お前たちだけの特権だと思うなよ? 悪魔の力を得られるのはこちらも同じだ!」



一瞬、私の身体が止まった。動くことができない。隣にいたマリスやサバトも空中で止まっていた。


『何が起こっているんだ!』


「マリスとは話せるみたいだけど、サバトは? サバト、返事をして!」


「......」


返事がない。ということは、動きが止める魔法というより、時間停止魔法なのか?

私たちが動けないことをいいことに、クノロスは私たちを舐め回すように周りをぐるぐると動き出す。


「お前たちの動きを止めた。正確には、次に行う行動を一時中断させた。黒魔術:沈黙ポーズこれがオレの最上級の魔法だ」



すると、クノロスはベルーゼブの頸動脈あたりに手刀を差しこんでいく。ベルーゼブはだんだんと形を失い、クノロスは逆に今までの無機物のような見た目から打って変わって、ベルーゼブと同じような手足と体を手に入れていた。


「ははは! ようやく手に入れたぞ! これで誰もオレを見下ろさない! この体と、オレの魔法があれば! 無敵だ!」


クノロスは瞬間、動きの止まっていた私とマリスに次々と拳と蹴りを入れていく。当然、その間も私たちは動きをとれない。こんなにも屈辱的なことはない。クノロスが拳を再度握ると、バキバキと骨が折れる音と共に私たちは吹っ飛ばされていった。だが、マリスとの契約のお陰かすぐに骨折は治っていった。


『まだ、死ぬことは許さんぞ! グレイス・アルマン! 貴様の望みが叶い、幸せの絶頂に立ってもらわなくては、殺したときの恐怖が大きくならない!』


「私だって、自分のやりたいことが残ってるのに死ぬわけねえだろ!」


 私たちは立ち上がり、息を整える。サバトも起き始め、私が手を貸して立ち上がらせていった。


「ありがとう。君を助けたい一心で頑張っているのに、助けられてばかりだ」


「私だって、あなたに助けられてるわ。ここはいいから、レイア達の方に行ってあげて」


「......。わかった。気を付けて」


私の意思をくみ取ってくれたのか、サバトはいつもより潔く聞き入れてくれた。


「お前たち二人でなにができるんだ?」


「これまでピンチのときは、結局二人でなんとかしてきたんだ!殺ってやる!」


「だが、オレの黒魔術の前に手も足も出まい!! 黒魔術......。ん? なんだ、この感触は」


先ほどの時間停止のような魔法を使ってくるのかと思ったら、急にクノロスは自身に違和感を持ち始めた。一体何があったんだ?


「『その門をくぐりしもの、一切の望みを捨てよ。』君は悪魔と契約して魔人と化した」


「ウィナス! いつの間に」


焦るクノロスの背後にそよ風のようにそっとウィナスが現れた。天使が魔人に? そんなことがありえるのか?


「魔法ってのは『望みを実体化させる手段』にすぎない。望みを持たず、ただ恐怖を支配する悪魔との契約は望みを捨てることと同じなのさ。つまり、君が悪魔と一体化した時点で魔力は使えなくなる。たとえ以前が天使といえど、天啓ギフトは自分自身に与えることはできない」


黙って聞いていると、なんとなく納得できる部分があった。私が生まれて10年くらい魔法が使えなかったのは、私が悪魔と契約させられた魔人と同じような状態だった。でも、俺には『生きたい』だとか、『自由になりたい』だのなんとなくの願望があった。その願望をエルフの村で呼び起こさせたから、今があるってことなのか......。


「天使であるオレがそんな......。魔人になるはずがない! だから、悪魔と契約したというのに!」


「哀れだね、ガイウスでさえ悪魔の力を抑えられず魔人化したというのに......。でも、大丈夫。君にも、とても大事な役割があるよ」


その瞬間、ウィナスの風魔法で生み出された見えない刃のようなもので、クノロスの首が斬り落とされた。


「こいつ、自分の仲間を!」


「仲間? 違うね。こいつは、僕が一番強く、美しくあれる世界にするためのパズルのピースでしかない。彼の力は僕が受け継いだ。また、僕が美しくなっちゃった」



ウィナスの自分に酔いしれるような顔に、私たちは戦慄した。彼の美しいとは程遠いような、どこを見ているかもわからない虚空の眼が私たちを捕らえて離さない。それが、なによりも恐ろしかった。







クノロスの力を手に入れたウィナスは単身、神聖天界警団を率いて革命軍を根絶しようと企んでいく。だが、グレイスは倒れても何度でも立ち上がる。その雄姿に革命軍も呼応する。

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