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99:天使の向かう路

ウラノスとの決戦。グレイスは仲間のため体を張り、戦う。

 私とマリスは同時にウラノスの方へと向かうが、ウラノスはマリスに興味を示さずにその長い腕で私を掴んできた。ウラノスは、勢いに任せてどんどんと空中へと昇っていく。


「どうして、君は戦うの? 僕たちのモノになればきっとみんな豊かに死んでいけるのに」


「あんたらが嫌いだからよ! 子供たちは生きる希望を天使から与えてもらったのに、最後には死んだ! 信頼する天使の下で戦っていたのに、裏切られる! そんなお前たちの仲間を見てきたからあんたたちを許すことはできない!」


「君たちだって、分かり合おうとせずに、僕たちの仲間を殺してきたくせに!!」


ウラノスはさらに私の掴む腕に力を加えては、ブンブンと振り回していく。景色はまるで見えない。

色もないせいで白黒テレビの砂嵐みたいだ......。だが、そんな中ひときわ大きな黒いものがこちらに向かっていた。その瞬間、私はウラノスの腕から離れた。


『グレイス、大丈夫か?』


ウラノスを背にしてマリスは私をお姫様のように抱きかかえる。ということは、マリスの攻撃があのウラノスに通じたってこと? たしかによく見るとウラノスの方は、腕が切り飛ばされていて、またその切り口から新たに手を再生させようとしていた。


「だ、大丈夫だけど......。って、マリス後ろ!」


ウラノスの腕がマリスまで伸びていく。マリスは私をキックスの元へ手放し、ウラノスと空中で退治していく。キックスは私をゆるく抱きかかえて助けた後、私に問いかける。


「びっくりした......。大丈夫か、グレイス」


「ええ。でも、かなり手ごわいわ」


「辛抱してくれ。私もニーデンベルグ達と合流して魔術を完成させる」



そう言って、私の肩にポンッと手を当ててニーデンベルグ達のいる方へと走っていく。

私は、逆にウラノスとマリスが戦う空中の方へ走っていく。


 「はぁはぁ、上見ながら走るのキツ......」


マリスは先ほどと打って変わってウラノスに傷ひとつつけられていなかった。ウラノスの黒魔術には、相手の行動予測があったはず。でも、さっきはどうしてうまくいったんだ?


「もしかして、複数人の行動は読めない?」


「グレイスさん、それ詳しくお願いします」


独り言を聞いていたレイアさんが真面目な顔で私に近づいてきた。私は尻すぼみになりながら答える。


「さっき私に夢中になってマリスの行動が読めなかったとしたら、私たちで今攻撃すれば?」


「なるほど、一か八かですがやってみましょう。息を合わせて同時攻撃すると予測されやすいかもしれません。少しタイミングをずらして、でも連携は確実に」



そういうと、レイアさんはいつも持っていた大きな片刃剣に持ち替えて魔力を籠めだす。

私も、彼女と同じようにケルベロスの力を感じつつ獣装魔法を自分にかけていく。


私一人だけでの獣装は初めてだ。でも、今やらなくちゃ!!



「獣装:ケルベロス! お願い、力を貸して!」



そういうと、体と剣にバチバチと稲妻が走ってきた。自分の力とは思えないようなものがふつふつと湧いてくるのを感じる......。成功、したのか......。よし、これで!


「行きます! 基礎魔法:グレート・プレート!」



「獣装:サンダー・ケルブレイク!!」



大地を削るような一閃と、雷のように分散する斬撃はウラノスを貫き、体に深いダメージを負わせた。

ウラノスの身体は二つに割れて、割れた先に海が見えていた。しかし、またもウラノスの身体は再生していく。キューブ状の粒子がウラノスの身体を修復していくにつれて見えていた海も消えていった。


「そんな攻撃じゃ、僕は倒せない」


「やっぱり、反転魔術じゃないと」



そう思っていた矢先、マルファスが私の影からヌルっと現れてきた。


「魔法陣が完成した! 反転魔術をおみまいしてやる!」


「お願い!」



その瞬間、ニーデンベルグが私たちの方へと白い魔力の塊のようなものを手に蓄えて向かって来た。



「くらえ、天使! 反転魔術:魔術無効ホワイトアウト!」



魔法陣と共に、ニーデンベルグの込められていた魔力が放たれて、ウラノスを含む周りを覆いつくす。

ウラノスは、水をかけられたロボットのようにおかしな挙動をして、地面にパタリと落ちていく。


「ま、魔法自体を無効化だと!? 祈りだけでそんなことが! させられてたまるか!! 人間は、僕たちにだけ祈ればいいんだ!」


「あんたたちに手を合わせて祈るだなんて、万に一つもないわ」


ウラノスは、ただ目を動かすことしかできずにぎょろぎょろとその一つ目を動かしていた。

そんなことも気に留めず、私は彼に剣でトドメを差す。 傷口から、ウラノスはキューブ状の粒子となって消えていく。


「ああ、僕が......。なくなっていく......。 天使である、僕が......」


「その強さゆえの慢心があなたを殺したのよ。死ぬ気持ちはどう?」


私は彼に顔を近づける。彼は微動だにせず、ただ粒子に消えるのを受け入れていた。


「これで終わりじゃない......。人間は弱い。いつかきっと、だれかが上に立ちたがる。そしてその存在にすがり、また破壊する。歴史の繰り返しからは逃れ、られ、ない......」


ウラノスだった粒子は、風と共にどこかへと消えていく。天使は死んだらどこへ向かうんだろう。

きっと、天界でも冥界でもないどこにもない場所へいくのだろう。


『これで後、4人か......。道は長そうだな......』


ぽつりとマリスは海を眺めながらつぶやく。とはいえ、3人さえ消えれば私たちの戦いは終わる。

そう思うと、清々する気持ちが反面、心のどこかで、天使がいなくなればマリスもいなくなるんじゃないかと、不安とさみしさが込みあがってきた。

残す天使は後4体......。

戦いは、もう避けられない。

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