10:ハーピィ館と天使
ハーピィに連れられていかにもいやらしいダンスバーへと連れてこられたグレイス。
当然なにも起きないわけもなく......?
流されるままハーピィ館に入ると、ポールや高台を使ってハーピィたちが幻想的で妖艶なダンスを披露していた。
こちらだけが見れる箱に入れられ、艶めかしく踊る姿は俺たちでいうポールダンスのようだ。
「こっち、こっち!」
ニコがいかにもVIPそうなふかふかのソファに座って手招きする。
俺は渋々座りながらずっと気になっていることを聞いた。
「ケガ、もう大丈夫なの?」
「え? ああ、もう平気。ウチらハーピィの羽って癒しの効果があるからケガとすんなり治っちゃうのよ。それよりさ、そのコグマちゃんの言ってたデーモンテイマーって言うのはホント?」
ニコは元気な子供のように目をキラキラさせながら質問攻めする。彼女の手はすりすりと俺の太ももを触って顔も近い。距離感バグっている子の質問攻めは童貞に効く。俺は頬を赤らめたのを隠すように顔をそらした。
「まあ、そんなとこ」
「えーすごい! 天才じゃん!」
夜の街のキャバ嬢のように褒め上手な彼女に乗せられいろんな話をした。もちろん、前世の話はしていないけど。それより、こんなに人が出入りしてる場所なら天使のこともいろいろ知ってるかもしれない。
「あの、聞きたいことがあるんだけど」
「なに? 遠慮なくいって! 今日はウチのおごりだから」
だんだんと彼女の手が服の下から触るようになってきてずっとのどが渇く。固唾と一緒に出されたオレンジ色の液体を飲み干して天使の情報について聞いてみた。
「天使について。契約魔法が使える天使を捜しているんだ」
そういうと彼女のセクハラがやんだ。ニコの笑顔が消え、少し困った表情で言葉を詰まらせていた。
「ごめん、わかんないや。というか、天使のことって意外と知られてないのよね。生態とか、顔とか名前とかいろいろ......。分かってることといえば、国より偉いってことと、天界っていうところにいるこおが多いってことくらいかな」
「ありがとう。じゃあ、またギルドにでも聞いてみるか......」
そう俺がつぶやくとニコは俺の袖を引っ張って引き留めた。
「それも、無駄だと思う。ギルドは天使の情報に関して発行や開示を禁止しているから。行くなら、裏ギルドだよ。あまりお勧めしないけど」
それでも、俺は自由に死ぬためにもその天使に会わないといけない。俺がこの世界で自由に生きて、死ぬためにはどうしてもこの悪魔が邪魔だ。だからどんな手を使ってでも情報を手にしてやる!
「忠告ありがとう。でも、もう行かなくちゃ」
「なにか事情があるんだね。恩人だからつい情をはさんじゃった。がんばってね」
再び彼女と握手をした後、彼女に教えてもらった裏ギルドに向かった。
裏ギルド、見てくれの通りの裏路地の悪い雰囲気が“裏”って感じだ。中に入ると獣人がたむろしていた。鳥や爬虫類のようなものからネコや犬まで......。ちょっと不気味だ。ギルドの受付の方に行くと犬というより狼のような頭の小柄な男がタバコを吸って本を読んでいた。
「あ、あの......」
正直、タバコを吸ってるやつはどんな奴でも苦手だ。狼頭はこちらをにらみつけた。
「迷子か?」
「い、いえ。天使の情報がこちらで扱ってると聞きまして......」
「おいおいおい、正気か? このガキは。 なあ、悪いことは言わねえから天使の事をこの国で聞いちゃいけねえ。お父さんお母さんに読み聞かせてもらいな」
「両親は、多分天使に殺されたんです。私も少し天使に野暮用があって......。知りたいんです。天使っていうのが何者なのか。この国で何をしているのかを」
俺は初めて90度に腰を折って頼み込んだ。会社に入れば何度も行うだろうことを少女になって初めてした。
「わかったよ。これは俺が独自で調査してた資料だ。それに従って、お前にはある児童養護施設にいってもらう。その名は、カマルエル児童所」
狼頭は少し間をあけてビビらせるように児童所の名前を言ったけど、イマイチピンときてない。ん? なにがすごいの?
「おいおい、あの天界十二使団のことも知らないのかよ。国家権力だぞ! そこに潜入捜査するってことはどういうことかくらいわかるよな!?」
正直、この世界の仕組みなんて知らないし、興味がない。俺は俺のやるべきことをこなすんだ。そのためなら死んでもいい。まあ、死ねるわけはないけど......。
「狼さん、その仕事引き受けるわ。私は、知るためにここまで来たんだもの」
「狼じゃなくて、コボルトだ。コボルトのバベルだ。死ぬなよ」
コボルトのバベルは俺の肩をポンと叩いてエールを送る。
どうせ死ねないんだ。だったらなんでもやってやる! そんで、こんな悪夢からおさらばしてやる!
裏ギルドのバベルと結託してカマルエル児童所へと向かうグレイス。
そこで見たものとは......
次回「竜人と少女」




