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3分読み切り短編集

なんてツイてないんだ!

作者: 庵アルス

 スマホの充電が睡眠中に切れ、アラームが鳴らず、目が醒めたのはバイトに遅刻ぎりぎりの時間。

 最寄り駅では、定期の期限が切れ改札が閉じ、電車に飛び乗ろうとして間に合わなかった。

 五分後の電車を待つ間、バイト先に遅れそうと連絡をするも、出たのは嫌いな副店長。了解は得たものの、口ぶりのなんと嫌味ったらしいこと。

 待ちわびた電車から滑るように降り、改札を抜けて猛ダッシュ。汗だくになりながらバイト先のファミレスに飛び込む。バイト仲間からの好奇な目。

 副店長は「始業から三分遅刻。時給十五分分少なくなるから」とのこと。五倍の時間損してない? 理不尽じゃない?

 ホールでの接客中、ドリンクバーから走って席に戻るお子様がぶつかってきた。転んでギャン泣きする子供。制服に浴びせられたオレンジジュース。うちの子になんてことをと怒る親。親なら、店内では走らないようにって張り紙読めるよね、なんで監督不足を棚に上げてこっちを責めるのか。仕方なく副店長と平謝り。

 バイト終わりにまかない食べてると、本部からの偵察で部長が来て捕まった。部長、話が長くて中々解放されない。仕事の話なんてもんじゃない、コイツ、自分の娘がいかに可愛いか語ってくる。

 やっと家に帰ると、玄関に配達の不在通知表。ネット通販で頼んでいた物だ。来た時間を見るとつい十分前。部長に捕まらなければ受け取れたのに。再配達を依頼したが、今からでは今日中に配達が不可能で、明日以降で依頼するしかなかった。

 なんてツイてないんだ!



「⋯⋯ってことがあってだな」

 大学の講義終了後、隣の席の友人に愚痴る。ちなみに今朝はアラームもきちんと鳴ったし、一限に遅刻もしなかった。

 友人は教科書をリュックサックにしまいながら、ふぅん、と相槌を打った。

「もうさ、呪われてるのかと思った」

「え、なにに?」

「え、いや、心当たりはないけど」

 友人はリュックサックに手を突っ込んで、でもさぁ、とにっこり笑った。

「そんなに悪いことあったら、次はいいことありそうじゃない?」

「⋯⋯そういう考えも⋯⋯ありかも?」

「とりあえず、はい」

 そう言って差し出されたのは、小さなみぞれ飴。カラフルな飴玉が、幸運のお守りのように見えた。

2020/10/06

禍福は糾える縄の如し。

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