1. 島と宇宙ノミとモフモフ
宇宙の彼方アンドロメダ銀河の端にある惑星 『≡＜*£』 から、あんな事情やこんな事情を経て、地球へ移住してきたminiなヤツらがいた。
どんな事情かといえば、すなわち。
――― miniなヤツらは地球基準でいえば、大きさ1mm程度のノミのような知的生命体である。
かつて惑星 『≡＜*£』 での覇権争いに破れ地球に一次移住を行うも、凶悪なバル○ンの前に完敗し、撤退。（詳しくは 『部屋と宇宙ノミと私』 をご参照ください）
さらにその約5年後、母星は各家庭のカーペット裏にて万全の対策を整え、地球に二次移住。
これはほぼ完璧に成功するも、彼らの第一拠点である、とある夫婦の家庭に生まれたbabyに、miniたちはすっかり情が移ってしまう。
かわいいbabyこと 『ミワちゃん』 の血を吸わぬようにするため、彼らは自ら、撤退していったのであった……。（詳しくは 『部屋と宇宙ノミと私～ベイビーセレナーデ～』 をご参照ください）
――― さて、それから更に3年の月日が流れた。
「「だぁーーーっはっはっは！」」
日本列島はかなり南の方にある、とある島のジャングルに、悪役笑いの思念が今日も響く。
「ふっ……ついに130頭目、制覇！」
「当然ですよ！ 今や、ブラックホールにもバル○ンにも勝り、血を吸っても腫れや痒みを引き起こさせない我々にとっては…… 楽 勝 で す ！」
「これもº*≅¿くん、キミの手腕のおかげだな！」
「いえ、©*@«さまの強力なリーダーシップあってこそですよ」
「いやいや……」 「いえいえ……」
そう。悪役笑いの思念の主、それは。
我らがminiたちのリーダー・©*@«とその片腕のº*≅¿であったのだ！
3年前に和樹・ハルミ夫婦の元からの栄誉ある撤退を選んだ彼らは、ペットを輸送していた船に乗り込んで、茶色と黒の入り混じったモフモフの毛皮に埋もれつつ次の新天地を探し、この裏表島にたどり着いた。
――― この毛皮の持ち主が実は天然記念物のウラオモテヤマイヌで、それを知ったminiたちは密輸者の血を吸い貧血に陥れてヤマイヌを救い、mini文字で船長との意志疎通を図って島へと返したのだが……
それはまた、別の話である。
ともかくもこうして、彼らminiたちの新天地はウラオモテヤマイヌの背中と決まった。
彼らは多数のもふもふした背中に住み着いて、先住民であったダニやシラミを退け、その陣地を増やしていったのである……！
「「ふっ……」」 ©*@«とº*≅¿は、顔を見合わせて宙返りを決めると、同行した新人miniたちに宣言した。
「よし、新人たちよ！ この毛皮はお前たちに任せるぞ！」
「しっかりと守りなさい！」
「「「「はっ……！」」」」
新人miniたちが敬意を示して小さく跳ねる。
「あの、おそれながら、©*@«さまとº*≅¿さまは……？」
「「ふっ……」」 ふたりは、息もピッタリに高速スピンを披露し、ポーズをとった。
「我々はこれから！」
「『リゾート・ウラオモテ』 にて、重大かつ困難な仕事に挑まねばなりません！」
「従って、余程の緊急でない限り、あと4時間半の連絡を禁止する……っ！」
「以上です！ 急ぎましょう、º*≅¿様！」
「よしっ、いくぞ、©*@«くん！」
「はっ……！」
威厳を以て早口でまくしたて、ふたりはピョコンと移動用ヤマイヌの背に飛び乗った。
「「ゆけ！ ∧¤*∀！」」
「ふぎゃぁぁっ！」
恩人たちの出す指令の思念に、∧¤*∀と名付けられたウラオモテヤマイヌは、ハイスピードで駆け出したのだった。
目指すは、島随一の高級温泉旅館 『リゾート・ウラオモテ』 である。
5/12 誤字訂正しました！報告下さった方、ありがとうございます！
