第7話 ルグラ鉱山
「鋼鉄か、確かに経験則で焼き入れ焼き鈍しをしているが・・・」
「炭素を少量混合することで素材そのものを堅くすることができる」
「う、うむ、それは経験則でわかっておるが率が難しい」
「多いと脆くなるし少ないと柔らかくなるだろ?100対0.2~0.6か」
「まあね」
「その他、クロムやモリブデン、ニッケルも使える、鉄76にクロム18とニッケル8で錆びない合金になる」
「錆びない?」
「合金は青銅や黄銅でわかるな?」
「昔からある。錫や亜鉛を配合する。貨幣に使ってるな」
「色はわかりやすいが、性質が大きく変わる場合がある。ところでルグラ鉱山では鉄以外も採掘出来るのかな?」
「精錬で不純物も分析済み。フェリン国で産出する軽銀や柔銀は皆無で、アトラン国北部の鉱山程には金銀も含めて重金属が含まれない。魔人族の国ではミスリルやアダマンタイト等の魔金属の鉱山があり、エルフを経由して手に入るよ」
「これからルグラ鉱山に向かうが、ジルギス、一緒に来て欲しい」
「是非、お主なかなかの知恵者だ、色々教えて欲しい」
「うん、その後、ボールベアリングの詳しい話もしよう」
「錬金術の魔道具でできそうだし、後は素材ということだな」
ルグラ鉱山では主に銅鉱石と鉄鉱石が産出、その他の金属も含まれている。錫亜鉛以外はスラグとして捨てられていた。技術者はそこから製錬できる各種金属が使えるならと開発を約束。
代官も錆びない鉄は素材として画期的だと特産品として売り出すとどれだけ儲かるかを皮算用して大喜びしていた。
『キモオタ先生』トリビア知識半端ね~と騒ぐのに蹴りを入れて蓋をしたが、言い方はともかくちょっと見直した気分だ。
「合金技術は専門外だから主な物しか知らない、軽銀は恐らく前世ではチタンだと思う。軽く強度の良い防具に使われている?」
「そのとおりじゃ」
「柔銀は恐らくアルミニウム、確か亜鉛とマグネシウムと銅の合金は軽く堅くなるから、産出量が多ければボートや馬車の車体とか使える、錆びないし」
「ほほう、取り寄せて研究したいな。製法を独占すればすごいことになりそうだ」
「そういう学問を冶金学という。その他にも磁鉄鉱や強磁性磁石なども・・・」
「鉄にくっ付く石か」
「電磁気学という学問に役立つ素材だよ」
「雷のことかね」
「まあ、自然現象であるよね、その科学は電子の流れ、金属は雷を通しやすいだろ」
「うむ、雷は攻撃魔法でも高度なものだ。その他の属性だと思うが」
「ボクはグラン王立学校で魔道具について学ぶ予定なんだよ、ジルギスもそこで学んだのかな?」
「いや、そこは貴族の学校、アトラン国北部のドワーフのS級鍛冶師、アルギス様に弟子入りして学んだのさ、わしはA級だと評価されてるがアルギス様ぐらいになるにはまだまだ修行が足りん、しかしお主から教わり方向性が見えてきた。新たなことに取り組む道筋を与えてくれたことを感謝する。もしかしたら工神テクナ様の加護をいただけるかも」
「その加護って、教会の像に寄進して祈れば貰えるんじゃないの?」
「祈ったぐらいじゃ八柱の加護なぞ貰えぬが、アルギス様は加護持ちだぞ」
「え、加護ってわかるの?」
「教会の血の登録で確認出来るのは知らないのか?」
「い、いや、聞いてない」
「成人式の時に確認するものだが、称号も確認出来る。わしは鍛冶士と魔道士の称号を得たなあ、加護はついていないのもわかった。10年ごとに確認はして、弟子を持ったときに鍛冶師になったよ」
「へえ、他にどんな称号があるんだ?」
「士は職業で、師がつくとその職業マスター、他にも剣士、騎士、魔道士、治癒士、芸士、航海士や官人、農民、漁民、商人、変わったところで魔道剣士や賢者、巫女、神官、王、覇王、賢王、海賊や盗賊などもある」
「・・・料理人とか」
「あ、それもあるな、認められている職業だ」
「ふむふむ、よくわかったよ」
「アルギス様は加護を持つとパワーアップした感じになるって言っていたよ」
ジルギスに出会えて良かった。それに、『キモオタ先生』から漏れてたドワーフはひげもじゃのずんぐりむっくりで腕力がすごくて酒好きというイメージとはかけ離れていたので、髭は無いのと聞くと怪訝な顔をされた。やや固太りの筋骨隆々、背も110セタはありそう、作業服姿も清潔で整理整頓好きらしい。
寿命は長く百歳はまだかけだしで成人式は40歳ということだ。エルフの寿命が1千年は本当らしい、魔人族も同じぐらいでダークエルフは6百年ぐらいという一般常識も教えてくれた。
ヤリスは見学に帯同してからすぐに、マジックバックにお土産と頼まれたものを納め帰った。ボクも家族や友達へのお土産と義父への長い報告書を頼んだ。