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記憶障害の転生者って  作者: 日川文月
第1章 転生
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第6話 ルグラ伯爵家

「ケンと申します」

「おう、よく来た、クリックからは何度も報告を貰っている」

「知的な顔つきで凜々しいわ、ケン」

「ありがとう存じます」


 伯爵夫妻に挨拶、臣下ではないので膝をつかず目上への作法で少し頭を下げる。

 行儀作法はイブレ母上にたたき込まれ、前世の感覚ですぐにお辞儀をしてしまう癖を矯正された。言葉使いもだ。使用人や平民に対する横柄な口調のほうがなかなか厳しいものがある。

 長兄夫妻、次男夫妻、四男と五男、四女、夫人2人に子供が9人、クリックと次女までは第1夫人の子だ。伯父達にそれぞれ3人の子供、躾中の10歳未満はこういう席には来ない。

 晩餐の話題は義父母や子供達の近況、気になるヘルンの経営など、離れているから聞きたいことは山ほどあるようだ。


「・・・そうか、かなり細かい数字を知ってるんだね」

「文官の補佐で帳簿の検算をやっているので」

「おお、聞いたよ、ものすごい計算能力だと」

「前世のスキルで頭の中にソロバンという計算機があって四則計算なら十数桁何段でも暗算で計算できるので、週に一度は全部の帳簿の出納確認という仕事でした」

「ほう、それはうらやましいな、わたしも経済文官として働いているので部下の間違いには頭を抱えているんだ」

「わたしは騎士団員だが、そういう役目も見させられててね、年末は頭が痛いよ」

「経済的なことはないがしろにできぬからな、国境争議も無い良い時代さ」

「海賊討伐では王国の新型高速艇が活躍したと聞きましたが」

「うむ、手柄はグラポートのオルソウ公爵家だがな、ちょっとうらやましい」

「材料の鉄鋼は我が領土の鉱山から安価に供給し、礼状も来ましたね」

「まあ、ヘルンのためだから、持ちつ持たれつかな」

「鉱山ですか、それで工業が盛んなんですね?」

「うむ、精錬用の木材燃料の供給地も近いからね」

「グラン湖の観光資源やベストバ遺跡のダンジョンも有名よ」

「若い頃は冒険者として潜ったな・・・あ、そうだ、クリックから馬車の部品を開発したとあったが」

「試作品を改良した量産品を2台分持ってきましたよ。馬車の製造工場もあると聞いていますから近いうちに関係者に説明したいと思いますが」

「まだ入学までには1ヶ月あるか、手配しよう」

「それと、馬車の旅で思いついたんですが、お尻が痛くなって」

「まあ、なあに」

「確かに馬車の長旅は辛いわ」

「椅子のクッションにも応用出来るかと思います。イリヤの実家パタヤ家具店もお呼びいただけますか?」

「ほう、それはいいが」

「明朝実物をお見せしますので、アイデアを披露致します」

「わかったぞ」

「なんだかお仕事の話になっちゃって、男達はしょうがないわね」

「あ、すみません」

「学校の話をしなくちゃね」

「ありがたいです」


「スプリングという物ですか」

「馬車は重量物なのでイメージがわかないと思い小型の物で模型を作ったのだ。板バネよりも高性能だぞ」

「ほう、ほう」

「このように、凸凹があってもスプリングがあれば車輪だけが上下に動き、車体に揺れが伝わらない、ダンパーは揺れの振幅を抑える働きがあって・・・」


 4日後に馬車の技術者も屋敷に招いて説明、伯爵も同席してニコニコしていた。

「これはすごい発明品です」

「耐久性はあるのですか?」

「試作機で様々なテストをしているので保証する。馬車の製造技術はそちの工場が優秀だと父から聞いておるからな。ヘルンの鍛冶工場では手が回らぬ」

「早速部品を組み込んだ試作品を作製して献上致します」

「それは良いからテストしたらどうじゃ」

「ありがたい申し出でございます」

「スプリングとダンパーはノウハウがあるので部品として供給できる。その他は既存の延長と言うことでそちの工場に任せようと思う」

「実務はヘルンと伯爵家の担当者を教えるので任せるぞ」

「承りました。その模型もお貸しいただけたらと」

「何台かあるのでそれは下げ渡すぞ」

「はは~」

「それから、パタヤ家具店のほうにも話があってな」

「ハイ、是非、椅子のクッションでございましょうか」

「お、話が早い、このスプリングを座面に仕込んだらどうなる?」

「天上の座り心地でございましょう、もしや馬車の座席にも?」

「もちろんだ。寝椅子やベッドにも応用出来る、模型の小サイズの物を大きくしたものは造れるぞ」

「是非話を進めさせていただきたいです。ヘルンに技術者を派遣させていただけませんか」

「良かろう、馬車用とは違う製法を考えないと量産には向かないかな・・・向こうの担当者には伝えておく」

「はは~」

「そうだ、馬車で車軸と車軸受けは問題点が多いだろう」

「はい、耐久性がなんとも、馬車には車軸受けの交換部品を載せ修理しながらの運用となっています」

「それは摩擦熱が原因で強度不足になるからだ」

「なんと」

「熱を持ち水を掛けることもしておるな」

「左様です」

「それを解消するボールベアリングというものがある。ヘルンの鍛冶職人に教えたが土魔法を駆使しても難しいとさじを投げておるのだ」

「お、お教えいただけるので」

「それには堅い材料で大きさの揃った真に丸い玉を作らなくては実現しない」

「・・・できるかどうかわかりませんが、ドワーフの鍛冶職人ならあるいは」

「図面は貸す故やってみるか、わたしも様子を見に行こう」

「は!」


 ということで打ち合わせは終了、伯爵も満足げにうなずいていた。

「お祖父様、工場訪問のついでに鉱山も見学したいのですが」

「お、おう、手配しよう、うむうむ」

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