第9話 タラス王の決断
「長老達を含め・・・一部の者しか知らないことを・・・」
「護衛には堅く口止めしたな」
「首が飛ぶことは自覚していたようです」
「うむ・・・」
「わ、我々の命の魔道具は・・・神が造ったのですか?」
「マナはそういうことだ。我々がエルフと人の混血だと言うことまであやつ・・・どこで」
「ケン殿は帰郷と言ったな」
「現エルフ族は頭の固い保守派だった。革新派のエルフは人族と交わり文明を発展させ、錬金術で魔素から微量の魔結晶や魔金属を合成する技術を開発し魔道具を進歩させた」
「世界樹はマナから魔素を拡散させる生物魔道具だとわかって、中央の王国が禁忌を破った。直接魔素を取り出せるとな・・・世界樹を眠らせ、毒を用いて息の根を止め、切り株に錬金術の魔道具を取り付けたのが初期、数百倍の効率で資源が得られ栄華を極めたものの他国との戦争も起きた。
ある国がエルフの村から奪う暴挙に出た。
エルフ達が世界樹に結界を張らせ堅く守ったため、西域に目をつけ、一斉に毒を盛り世界樹を枯らした。
我先に巨大ゴーレム軍で抵抗が弱い地からマナを奪い取っていった。
対抗手段を編み出したのがベトラン国の大賢者、空間魔法のダンジョンを発生させる魔道具でマナを隠した。魔素が濃い最奥にとんでもなく強い魔獣が現れ、攻略はことごとく失敗に終わったと古文書にある」
「我がタラスは東端の王国の領地で自領のマナを守るのが精一杯だった。数百年の時を経るとどの国でも奇形の子供が生まれ精神疾患が蔓延するようになった。文明に対する恨みを抱きテロで何もかも消そうとする者達が暗躍するようになった」
「さらには野生動物が変質した凶暴な魔獣が現れ人々を襲い食い殺すようになっていった。結界魔法の模倣も不完全なもので、ゴーレムでも防ぐことができない。エルフ族に世界樹の種の提供や移住を求めたが拒否された」
「西域は魔素が薄くなる傾向があり、我々の故郷からは遠い・・・そこでうち捨てられていたマナをなんとか回収し、北に逃れたのだ」
「当時の領主、初代タラス国王の指導のおかげで、賛同した数万の民が長い旅を経て辿り着いたのがこの地だ」
「マナを中央にうめ、ミスリルの導線を四方に巡らせることで魔素濃度を確保し、温湿度結界と物理結界、さらには迷彩結界を開発した。錬金術で魔道具を作製し生活を支えたのだ。そして素性を隠しエルフ族との交易で必要な薬を手に入れた、それが我が国の真の歴史だ」
「偽りの民ですか・・・」
「閉塞感があります。魔法は進化するどころか衰え、魔道具も・・・あの写真機のようなものはどのようにできているのかもわかりません。計算機にしても・・・昔は同じようなものがあったのに修理出来なくなった」
「魔法を反射させる結界はありますが、吸収し、さらには鋼鉄を消してしまう結界など、この世のものとも思えません」
「歩いて行く途中見えなくなりました。持ち運べる迷彩結界とは・・・」
「後をつけさせましたが見失ったそうです。何らかの乗り物で移動した・・・不思議な跡がついていて、それもぷっつりと無くなったそうです」
「・・・ケン殿は全てお見通しだったのじゃな」
「陛下はどのようにお考えですか?」
「全てバレておる、魔人族などこの世に居ないということだ」
「過去を思えばエルフの里は受け入れてはくれなかったでしょうな」
「西域諸国もです、全ての元凶は我々の祖先なのですから」
「かといって我らはマナに依存している・・・」
「決断するにはさらに情報が必要だ。ケン殿はお優しいお方のような気がする」
「腹を割って話すしかなさそうですな」
「帰郷という言葉がまことにこころにしみた・・・場所は古文書にあるが」
「はい、見て貰いましょう」
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「ここが・・・我らの故郷」
「なかなか良い立地ですね、川もあり、海辺もあり、良港もある。魔素濃度も濃すぎず・・・沼になっているここがマナ聖地でしょう」
「我々のマナ・・・」
「そうですね、優先して世界樹の種を廻して貰いましょう。開拓には時間が掛かります。我らのニホン領国とは川を挟みお隣同士、将来はここから南2国と中央2国の未開地があります。ミスリルロードで魔素を西域に流しつつ世界樹が育てば急速に魔素の均衡化が図れます。伸びしろがありますね」
「良いのでしょうか・・・」
「閉じこもっていては未来は変わりません。エルフの避妊薬で子供が少ない社会は健全では無いでしょう。支援するのはやぶさかではありませんよ」
「わたしは決断します。民に図り未来を開きたい」
「わしもだ・・・ここが、故郷・・・泣ける・・・」
タラス王陛下にぶっちゃけられて、3人と護衛2人をコプターに分乗させ、古文書の場所に招待し、写真もたくさん撮った。
きっと国民も感じるものがあるだろう。
魔人族あらため北人族達は寿命が2百年ほどと人族寄りでたくさんの問題を抱えていた。帰郷が最適解になることは確信した。
冬の定例会議で報告し、モラトリアム10年計画をタラス国に提示することと、無神論の国民へのガイナ教布教を条件とすることを求める事に決まった。
神の御技の実物があるからきっと受け入れられるだろう。




