第6話 臨時会議
しばらくしてガイナ国際会議が開催された。
「緊急招集は初めてでございますな」
「左様、何か問題でも持ち上がったのか・・・」
「フェリン到達式典のことか、困った」
「いや、あれは決まったことだ。全員参加と」
「グラン王は何か聞いておるのでは?」
「いや、公平性を憲章に掲げておる、わしも寝耳に水であるわい」
「そうでしたか」
「ここの食事や酒は旨いから、夏冬2回の定例会議は少ないのでは無いかな」
「ハハハハ」
時差約6時間、アトラン時間8時昼前はニホン時間の14時の晩。酒席もあるので朝時間を避けている。運営スタッフは自立型ゴーレムの文官で、会議場内は護衛入室禁止、各控え室で会議終了を待つ。もちろん食事つきだ。参加者は代表と次期代表候補2人の3人まで。 ガイナ教トップの大神官長とミカミ工房代表もオブザーバーの立場で参加する。
ゴーレム文官には、議長・書記・運営と役割があり、食事は執事・メイドが取り仕切っている。宮廷料理人は居ないがゴーレム料理人がレシピを再現、素材が一流なのとレシピ考案はミカミ工房、魔獣肉や大森林素材のオーソリティだ。
閑話休題、会議室にメンバーが集合し、議長と書記が入場した。
「これより、臨時第7回会議を始めます。まず始めに議題発表と経緯説明をニホン子爵殿よりおねがいします」
「はい、皆様よろしくお願いします。議題通達については事が重大なため控えさせていただきました。お詫び申し上げます。今日の議題は行方不明のマナについてでございます。経緯は後ほどエルフ代表からいただきます。事は世界樹の・・・」
理由説明とエルフ族の代表になっているペッテルも発言し経緯が語られた。
「・・・遠隔操作のドロンで、上空より捜索し特定しました。場所はここ、カルデラ地形と申しまして、かつて大火山中央の溶岩ドームが崩壊陥没、すり鉢状になったと考えられる地形です。
3日間の監視で南の道の2名の帰還、北の道の8名の出発を確認しています。
夜間灯火の様子で推定人口は数万、1村程度だと考えて良いでしょう。物理結界と迷彩結界がありますが、世界樹よりは粗い感じです。
中央部分の灯火の無い場所にマナを置き利用してると推察します」
「ご発表ありがとうございます。質疑に移ります、はい、アトラン国王陛下」
「出発した10名に関しての行動は?」
「はい、追跡しております。馬を利用しており、西に向かっております。その先に飛び地の漁村が確認されておりますが、荷馬車とすれ違っており漁獲の搬送とは別目的かと推察しております。到着後10日を経て動きはございません」
「ふうむ、そろそろ冬も盛りか・・・」
「船はどのような?」
「手こぎボート程度ですね、魚や海獣が獲物のようです」
「アイスベアー等かな?」
「アザラシもでしょう」
「はい、ツェリン国王陛下」
「北極に近い過酷な環境のようだが、農業などできるのかな」
「結界内では環境が異なり、マナを利用した温度管理がされてるのでしょう、結界外には無い針葉樹林の迷彩が認められます」
「なるほど」
「はい、フェリン国王陛下」
「休火山なら熱源があるのでは、我が国にも火山があり温泉がある」
「最初の2名はエルフ族域の途中にある活発な温泉地の保養施設に行っていたと思われます。温泉があるならそのような行動をするかわかりません」
「グラン国王陛下」
「神が与えしマナの場所を図示してしてほしい・・・当該地点はずいぶん離れた場所だね」
「詳細に調査した場所から離れていたので見逃していました。ドワーフ族域が北限だと考えていましたから」
「それだからこそマナが必要だったと言うことかな」
「アルギス殿」
「北海域は切り立った絶壁で海も荒れ、とても通過出来るようなところではないが・・・真冬だと海が凍る」
「そうですね、アイスベアが我が国にも現れる時期です」
「その10人は密入国しようとしてるかも」
「しかし・・・変装すれば良いか」
「エルフ族に魔人族の写真がございますか?」
「はい、交易をしている村のスナップ写真数10枚を写してください」
「は、承ります。コピーしてよろしいですか?」
「どうぞ」
「・・・なんだか不自然だな・・・」
「やたら耳が尖っているように見える」
「はい、オルフェウス殿」
「我々ダークエルフ族は、エルフとドワーフの混血種族じゃ、エルフの結界は通れないがの、ハーフエルフは人とエルフの混血じゃが、結界を通れるのはなぜじゃ」
「その昔エルフ族の地を荒らしたことがあるでしょ」
「大昔じゃ、世界樹の結界は保守的じゃ」
「西域のハーフエルフもマナのない環境では辛い、定期的に三族の地で過ごすかダンジョン探索をする必要があるので世界樹の庇護がある」
「魔人族は結界を通れないんですね?」
「恐らく、ためさせはしてないけど」
「ベトラン国王陛下」
「ともあれ、失われたマナであるなら返していただきたい」
「ですよね~」
「彼らにガイナ国際会議への参加を呼びかけたのはエルフ族ですね」
「はい、マナについては伏せて世界の現状を話し合う会だとは説明しました」
「拒否の理由は関心が無いと言うことでしたね」
「そうですが、後になって交易団は情報を得ようとやっきになっています」
「情報はやりとり、一方的に情報を得ようなどムリではないかな」
「そうですね、そこは・・・美味しい話もちらほらあったそうですが、エルフ族は信義を尊びます」
「頑固とも言う」
「・・・オルフェウス殿」
「あ、失礼じゃったか」
ドワーフは土の精霊魔法、ダークエルフは火の精霊魔法、エルフは水と風の精霊魔法が得意だ。気位が高く歴史的に不仲、仲介役は人当たりの良い人族で、多少迷惑だが、共通して信義が篤く付き合いが深まると尽くそうとする心意気がある。
「え~ともかくですね、あの8人の監視は続けます、それと、ひとあたりしてみようかと思っているのですが了承をいただきたい」
「ケン様がおっしゃるなら了承しますとも」
「異議はない」
「我々もじゃ、お主はようしてくれるからの、じゃが急ぎすぎてはいかんぞ」
「そうですな、くれぐれも危険なことは避けて欲しい」
「うんうん」
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「お前達は監視を交代でやって欲しい」
「わかったけど、あたしたちだけ?」
「秘密保持のためだよ、結界無効化はエルフ族にも言えない」
「万一のためでしょ」
「馬を利用していると言うことは技術レベルが衰退しているかも知れないから、それほど危険視はしていない」
「でも違う方向に発達させていたら?」
「恐らく、移住は末期、生活を成り立たせるのに数百年は必要だったろう」
「4千年は長いぞ」
「長いからこそ・・・発展してたら世界は変わってたはずだ」
「なるほど」
「奪ったマナをくすねて移住した・・・西域に行かなかったのはなぜかな」
「負い目があったのでは無いかしら、あとは魔獣の氾濫、寒いより暖かい方にいきやすいでしょうね」
「それもあるな、奪われたと言え当時は魔素もある程度あったからね」
「海沿いの地上なら、ナルラ村の東側のルートなら比較的平坦だ」
「重力魔法は?」
「あの自転車や搬送車レベルなら、大きくて超重量のマナを運ぶのも一苦労だし、黒い結界は厄介だからね、工夫はしたと思うけど詳細はわからないよ」
「確かにね」




