第3話 やっぱ教育だよね
3日後、オレは教会?に連れられてシスター?から質問を受けた。
察するに名前と生年月日だ。
街は活気に溢れ建設途中、教会も新築木造で、聖堂には神様らしき12の石像の前にプレート?が設置されていた。信者らしき人が手のひらを当てて何か祈っていた。穴にコインを入れているので賽銭箱らしい。
若いシスター?数人が併設施設でなにやら仕事、怪我人らしい男が付き添いに連れられて入り、数分で元気に出てくるのも目撃した。
人々の服装や建造物の様式、港に停泊している帆船の様式から中世ヨーロッパ大航海時代的な文化らしい。
オレの記憶がどこかおかしい。体の中では無く廻りに漂っていて、ぱっと閃くけど詳しく思い出そうとすると逃げていくようだ。まだすごく混乱してる。
恐らく養父となったクリックさん、義母のイブレさん、アルファベットが書かれた紙を見せられて指し示された位置にCRICKとEVREとゴシック体で紙に書く。オレはKEN・MIKAMI、発音がローマ字に近いかも。
数字書体も英数字でゼロの概念もある。+-×/の記号と=も良く理解出来て、クリックさんが試しに出した問題にすぐ正解したら、その場にいた人たちがめっちゃ驚いていた。
オレは珠算三級?で四則暗算はできるらしい。珠算ってなんだろうとは思うが、他のおっさんが出した5桁の足し算も即答、そのおっさんがダイヤル計算機?で検算して正解だと言ったらしく驚愕していた。
ともあれ、生年月日に1989/7/9と書くとカレンダーを持ってきた。
何が基準か2001年、時計も示して1年は12ヶ月、1ヶ月は32日、1週間は8日、1日は16時間、1時間は100分、1分は100秒、閏時間もあるらしく、かなり高度な天体学が発達しているようだ。
清書の石版にKEN・MIKAMI・RUGRA、1991/07/09で決着、男を表すMも記入、血液で再登録が完了した。石版はセラミックぽく石筆?で黒く線が引けてタブレットみたいだ。タブレットって何だっけとは思ったけど、もう追求したくない。石版が光って垂らした血が消えたのにはめっちゃ驚いた。
6日働いて2日休む風習、次のカルナの日からフォナの日までベスタ・カルロ・コーナというオバさん先生のもと、教会付属施設で他の子供と一緒に読み書き計算を教わる。というか5歳から9歳がベスタさんで、10歳から15歳はジャン・デス・オルマというオジさん先生らしい。
会話が優先、オレは英会話も結構優秀にこなせていたなんていう記憶が出てきたけど、それより、オレは先生という職業にものすごく反応していた。
大学で化学を学び理科の教師だったらしい。よくわからんが、ネットゲームやスマホゲームとか、興味に任せてあらゆるジャンルの雑誌や書籍も読んでいて、某クイズ番組?の回答者として大学枠で活躍したなんて自慢めいた記憶、いい年こいてどうせ童貞だよ、ちくしょう、なんて闇記憶が嵐のように渦巻いて、何日もめまいを感じ、先生方や義父母や家政婦さん達に心配された。
死んだのかなあ?運動神経と健康面?たばこ暴飲暴食のキモオタ教師?という真っ黒い記憶を封印。この世界では気をつけよう。
しかし、この世界の髪色や目の色は特殊だ。金銀赤はともかく緑やピンク?オレも紺色髪で緑眼、鏡のオレは惚れ惚れする美少年、封印から漏れ出る嫉妬という黒いなにかには、更に封印を施した。
たらいのようなバスタブは石けんを使いお湯を浴びる場所で不満が残る。戸惑ったのが生活魔法として多用する洗浄魔法だった。大工?が木材を柱に加工したり貼り合わせたりしているところを遠目で観察したこともある。地面を掘ったり均したりも魔法でやる方が簡単らしい。後でわかったのは新興開拓地には優秀な人材が集められていたということだ。
年齢的縛りで館のある砦城塞外には出られないが、テラスからの眺めでは、ひっきりなしに入港出港があって活気に溢れていた。ヘルンは天然の良港、大型船が艀に何隻も接岸されていた。湾内動力は恐らく魔法、沖で帆走している。砦の高い塔の灯台は魔法道具らしい。
入り江の遠くは砂浜の海岸線、小型漁船が沖に出入りし、地引き網も漁民がやっている。のどかで心が癒やされる。
先生方や義父母や周りの人たちに頼ろう。読み書きを覚えたら魔法や魔道具について勉強したいと強く思った。