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記憶障害の転生者って  作者: 日川文月
第3章 偽りの民
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第3話 鉱山遺跡

「う!」

「ダメか」

「アンチ魔法結界内で魔石も外したのに・・・」

「あちちち!」

「ひ~消化器」

「わああ」


 ライトや電卓や写真機は『ミカミの魔法書』に技術を紹介、従来魔法の範疇で科学的発想を取り入れた魔道具として解説されている。各国の高等学校でも教材として読まれるようになり、生活魔道具は大きな進歩をみせている。

 販売している低価格マジックポーチやカートは、リバースエンジニアリング対策で分解しようとすると高熱を発し魔動回路を解析されない防御魔法を組み込んだ。

 従来魔法のアンチ魔法結界では阻止出来ない強力な魔法を組み込んであるのに、試みる魔道具士は多かった。


 影響が大きいと早くから気づいたのでミスリルエネルギー源の魔動式が組み込まれた魔道具は市場には出していない。

 『ミカミの魔法書』でも、魔石や魔結晶の魔素を効率的変換するのが科学ということを強調、基礎科学として燃焼の仕組みや原子周期表などまでは書いた。


 カートは厚さ1セタ5セタ四方サイズの魔石カートリッジを挿入する仕組みで約20フェタ(320km)動く。魔石スタンドで販売され、販売価格は1個あたり金貨10枚だが、銀貨10枚で使用済み魔石と交換、魔素充填工場に送られるという仕組みを作った。

 魔石スタンドでは専用ボックスに使用済みカートリッジ100個と金貨8枚を入れ、充填済みカートリッジ100個が戻ってくる魔道具が設置されているので、金貨2枚が利益になる。転移装置が組み込まれ、回収して専用ボックスに交換品を入れる作業は自動魔道具にやらせている。

 料金は馬車の運用に比べれば安いが庶民には高いので乗合馬車ならぬ乗り合いカートで大人数乗りのものも開発されている。一般的なカートの価格は高級馬車の倍で庶民に買えるようなものではないが、商人などはすぐに飛びついた。高級感はあまりないが見栄貼りの貴族は高級馬車にこだわりがある。

 カートの販売数は緩やかに推移していた。


 魔石カートリッジは接続規格を公開したので、他の魔道具にも取り入れられるようになってきた。

 急激な価格破壊が経済に与える影響を熟知しているので、マナシステムが正常に機能するまでは緩やかな発展を促し、黒子に徹するつもりだ。


 ただし個人使用のものでは自重していない。ニホン領国のミカミ工房に併設している居城には個人的に転移装置を設置した部屋がある。ヘルン領主城、ルグラ領主城、グラン国ルグラ侯爵館、エールン国ペンテス公爵館とトーレス伯爵館、ツェリン国ハラホ子爵館にフェリン国ゾイド伯爵館に転移門を設置してある。

 また各家庭は通話装置で連絡を取り合っていて、ホームパーティを開いたりもしている。時には各国王族の訪問もある。


 各代表には転移門の運用は気をつけるように伝えてある。武装兵士を送り込むことも可能だからだ。なので、各代表は転移門を厳重に管理している。

 転移門の販売は人族各国から求められたがその理由を話し断り、今のところ納得してはくれている。


「父上、内密にお話とは?」

「ああ、ケン、鉱山開発の話だ」

「見つかったんですか?」

「どうやら、先史文明跡から考えるとその頃の鉱山らしい、土砂崩れで埋まっているのではないかと考えて発掘隊を送り込んでいてね」

「なるほど、土砂に埋もれた都市跡があったところですね」

「そっちも手をつけてるが、不自然に堅い場所をたどっていくとヘルン山脈中腹に至ってね」

「鉱石を運んだ道ですね」

「そうらしい・・・そこで・・・」


 度々土砂崩れが起きていたらしい地域、1年もかけた発掘調査で、崩れた坑道入り口を発見ということだった。


「落盤箇所の奥に進むとまあまあ大丈夫、最深部に魔道具があった」

「掘削機とか?」

「いや、ゴーレムが十数体と縦穴に入る昇降システムのようなもの、転がっていた鉱石は持ち帰って分析すると金や白金や不明の金属も含まれていた」

「へえ・・・当たりですね」

「堅く口止めはしてそのままだ。まず、調べて欲しい」

「面白そうですね、ジルギス、アルギスも呼びますか」

「うむ、費用は・・・」

「父上から報酬をねだるつもりはありませんよ」

「ハハハ、助かる」


 ミカミ工房のメンバーは実家のしがらみで出身国から色々な要請がある。高等学校の非常勤講師とか、義務もある子爵位を断り切れず貰っていた。

 なので、マナの復元も終わった今、全員揃うのは珍しいぐらいだ。

 今回の依頼はボクとジルギス、アルギスが請け負うことになり、3日後国際会議場の転移門室でアルギスと待ち合わせた。


「ジルはすでに?」

「ええ、ヘルン入りしてます」

「そうか、しっかし、転移門を使うと楽じゃのう」

「ま、役得ということで」


 申請は必要だが大抵使わせて貰える。ニホン経由でヘルン居城に着いた。

「わしは初めてじゃな」

「港に近い聖地の東に新しく建てましたからね」

「西には教会ですね」

「大昔の伝統だった気がします」

「確かに」


 全てではないがマナの置かれたストーンサークルは遺跡として保護され西に教会、東に居城を含めた貴族街、南に平民街というのが多い。街が発展すると北を開発、グラン王国首都がそうだ。

 ヘルン港近くは山が迫って狭く、聖地が新たな都市部。結界を設置して魔獣討伐を終えたので安全、港の結界とも繋がっている。

 問題の先史都市遺跡はその北西、ヘルン山脈聖地の北東に位置している。


「ジープで行きますよ」

「はいはい」


 悪路走破性の良いカートはジープと名付けた。3時間で発掘地点に到着した。

「道路整備にゴーレムは大活躍ですね」

「汎用性が高いし、土魔法を組み込んでるからね」

「西の道を道なりに行ってください」

「これが発掘した先史文明の道路か」

「材質のせいかとても丈夫です」

「土を焼き固めた感じですかね、脆くは無いですが」

「とても分厚いのと濡れても滑らないですね」

「ふ~む」

「とにかく進みましょう」


 ドライブは楽しいとハンドルを握っている担当官はコリン準男爵、生え抜きの文官でよく知っている。父は人材育成が上手だ。

「ここから山道ですよ」

「道幅は二車線ぐらいですか」

「ええ、でも一定間隔で穴があって、鋼鉄の残骸があったりで」

「鉱石の運搬魔道具が設置されてたのかも知れませんね」

「はい、そういう見解で坑道付近にそれらしいものが埋まってました」

「アダマンタイトだと錆びないだろう」

「そこまで金をかけてないみたいで、主に鋼鉄製だったようです」

「それもそうか」


 発掘で出た土砂は農地整備地区に転送とコリンが説明、1時間で現地に到着した。

「結構上がって眺めが良いのう」

「確かに不自然に真っ平らですね」

「岩山をバッサリって感じだね」

「残骸置き場を見ますか?」

「うむ」


 おそらくは吊り下げバケット型の搬送機、空間転移魔法は開発されてなかったのかも知れない。ダンジョンの空間魔法は西側の国で開発されたいわば、火事場のクソ力的なものか。


「坑道に入りましょう、脆かったところは土魔法で強力に固めてます」

「警備兵は置いてないのかな」

「作業が終わったので認証式の汎用バリアを張ってます。お渡ししたバッチで」

「あ、そうか」


 所々硬い岩肌がある森林に覆われた山、風化や木の根で崩れて坑道の入り口は埋まっていた。入り口近くは落盤もあったが、奥の堅い岩盤は5千年を経てもびくともしていないようだ。人感ライト魔道具が等間隔に置いてあり明るい。


「斜め下向きだね露鉱から採掘を進めて、大鉱床にぶち当たったのかな。

「だと思いますね、行き止まりの枝坑もありました」

「そこか」

「はい、本坑は下に溝のようなものがあります」

「なるほど、二本あるから車輪がはまる自動搬送か」

「という魔道具もありました、もうすぐです」

「結構と奥だな・・・おお」

「広いな」


 直径20デタ高さ8デタほどのドーム状空間に魔道具が散乱していた。

「人の遺体は鑑識に送ってあります」

「何人?」

「落盤箇所に2人と数体のゴーレム、後はこのように10体の小型ゴーレムと装置類、調湿空調魔道具は持ち込んだものです」

「聞いたかも知れないが探索の時、有毒ガス類は?」

「微量に検出されましたが大丈夫な範囲です」

「とにかく調べましょう」

「そうじゃそうじゃ」

「はいはい」


 ゴーレムが止まった原因は魔結晶の消費だけ、外板はアダマンタイトの合金、中身は錆びてる部分は鋼鉄で関節にミスリルも見つかった。作業用ゴーレムで武器は無く魔動回路は比較的単純だ。昇降装置もだいぶさび付いていた。


「あまり見るべき物は無いな」

「反復単純動作用ですね、上に上がってきた鉱石を移し替えて運ぶんでしょう」

「運搬車も空がきてぐるっと回って溜められた鉱石を乗せて出て行くって感じ、連結4台か単純だな」

「当時としては、産出量が少ない比較的新しい鉱山かも知れませんね」

「なら、発展する可能性は高いですね」

「下にドロンを飛ばしましょうか」

「あ、その手があったか」


 マジックポーチから大型ディスプレイとコントローラー、ドロンを取り出した。

「コレは最新式で録画機能もありますよ。秘匿技術だから黙っててね」

「まったくなあ」

「ずるいな」

「へへへ」


 直径20セタの球体、自立判断機能もある。

「ここから下に行って観察すること」

「ピ」

 前後左右上下にカメラ、ディスプレイに六分割と計測した三次元CAD図が映し出されていく。


「このために作ったみたいだな」

「迷宮ダンジョン用に開発したんだよ、隠密性やバリア性能も高い」

 縦穴は掘削したと言うよりは自然にできたものを拡張した感じで40デタほど下に作業空間、高純度鉱石を掘り進めている坑道がいくつか。30体ほどのゴーレムが魔結晶供給魔道具らしいものの廻りに折り重なっていた。

「全部の作業ゴーレムだろうね」

「全部の穴を調べてくれ」

「はい、じゃあ、右から・・・」


 この世界には数百万年程度の比較的新しい地球由来生物しか居ない。微生物もそうだろうと思われる。歴史的な生物は居るだろうけど。なので石灰岩地層も鍾乳洞も無い。自然にできた穴も何らかの地形歪み、鉱石の純度によるものか、結論から言うと開発初期の鉱山で鉱石は採掘できそうだった。


「鉱山師を呼んで本格的に調べるべきだな」

「ですね、ただ、ゴーレム達は見せない方が良い」

「うむ」

「マジックバック機能かあるので鉱石と魔道具は全部入れちゃっていいかな」

「はい、お願いします」


 解体しなければならない昇降機以外は全部収納、調査は終わった。

 外に出て、全部吐き出させ、ゴーレムや魔道具は他のマジックバックに回収、鉱石や残骸などは廃材置き場に置いた。


「程度の良かったゴーレムをそれぞれ報酬で良いかな」

「ま、コレクションにはなるがな」

「ハハハ、得るものは少ないが、希少価値ですね、師匠」

「都市遺跡からめぼしいものは出土した?」

「ええ、生活雑貨や骨、研究価値のある本や魔動具類も出ています」

「公には出来る物?」

「とりあえず全貌が明らかになってからですね、武器類もありましたから」

「そうか、厳重に管理してください」

「はい、そう指示を受けてます」

「秘密を守るためならニホン領国に置き場を設けるよ」

「領主様からお返事してもらいます」

「わかった、父と相談しよう、ゴーレムの件もあるから」

「はい、よろしくお願いします」

「さてと、腹が減った」

「遅いランチを食べてから帰ろうか」

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