第2話 ニホン領国
卒業から4年、今年ボクは20歳になる。成長期が過ぎた現在は約110セタ約16デサ(176cm・64kg)で安定している。
奪われたマナはあるべきところに復元、世界樹に守られている。行方不明の1つとダンジョン以外の全世界の聖地の整備を終え、計画に則った世界樹の配布と世界樹の成長を待っている段階だ。ミスリルロードの整備は各国に任されているが、埋設のミスリル線の供給はゴーレム自動工場で製造して納期に遅れたことはない。
「あなた様、今日は何する?」
「夏休みの計画は立ててくれっていっただろ?」
「ち!」
「なんだよ」
「ほらほら、何もしないでゆっくりって言ってたじゃないの」
「イリヤもそう言ってるだろ、イチャイチャしていよう」
「まったくもう~」
「それなら、ドライブするか」
「わあい」
ボクは第1夫人にラベル、第2夫人にイリヤを娶った。
グラン国子爵となり、ニホン領国を得たときに改名、ケン・ルグラ・ニホンと名乗ることにし、ミカミの名は工房名に残した。
エドガとクルトも結婚、ワンドは幼なじみの恋人達とゴールインした。それぞれ母国から子爵位に叙せられている。
報酬として認められたニホン領国は1ヶ所の世界樹を復活、人族式の聖地を設置して西にグラン教神殿、東にミカミ工房を建造した。マナの器や先史文明の設備、ヘルン山脈の石柱を参考に開発したファインセラミックはミスリルと酸化シリコンを原料の建材で堅牢かつ魔素を通しやすい結界をまとわすことができる。
工房を建造したことでどこか不安が残る秘密部屋は廃した。
流通運搬用の転移システムは世の中に無い。教会の召喚魔道具は大昔の大賢者が作製した模倣できないアーティファクト、ものすごく魔結晶を消費する。先史文明の魔結晶は品質が高く大量に寄進してある。
ともあれエコ型転移魔道具はガイナ国際会議に提供した以外は秘匿、大容量のマジックバックも秘匿、低価格マジックポーチは各国王室管理で供給している。
隠しきれない飛行装置は各国から問い合わせが多いが時期尚早とした。
オルソウ侯爵にもちかけた新造船は技術公開不可の重力制御装置で恐ろしく高性能になり、マジックボックスは従来改良品を低価格で提供、現在までに50隻を造船して世界各国との航路を巡っている。中型客船だが大貨物船でもある。
人族の聖地はエルフ族のものを参考に設計した。マナの器の高さ半分約5デタ、中央部が約20デタ、直径が約30デタの大きなドーナツ建物、物理結界の直径12エタ(1.92km)円球内が治外法権で植栽整備されている。
真南に結界門。建物の北半分と中央部はエルフ族の巫女に管理を任せる。それ以外は人族のガイナ教神官巫女の管理、世界樹はどんな状況でも守らなくてはならないので、絶対的な防御結界にしている。
唯一稼働していた先史文明の神器は、慎重に魔道具を確認、制御システムも解析して、完全に停止して解体し、マナをしかるべき場所に復元した。ゴーレム達や残骸も近くに建てた倉庫に戻して周辺を結界で防御、魔素濃度が極端に高いだろう場所は立ち入り禁止の結界を設置してある。
それらの解析研究はいったん塩漬け、ダンジョンをどうするかを協議している。観光地や冒険者の収入源であったりするので、他の世界樹システムでカバー出来るのではないかという意見もある。
「あなた、あれはもう必要ないでしょ?」
「確かに場所塞ぎだわ」
「それもそうだけど・・・あ、行方不明の神器があるじゃないか」
「ここで無くても良いでしょ、近くのマナがあった場所でいいわ」
「わかったよ、そのうちな」
穴掘り用の巨大装置は各国のマナ復元地点用に開発した。光学迷彩結界を発生させ土砂をあの石切場に転送させ、器を清浄化、光学迷彩結界を張り巡らせたマナを空輸設置後にエルフ族が祈りを捧げ精霊水を施した土砂を逆転転送、重力場制御と転移技術、結界技術の粋を凝らした。
「あたしが運転するね」
「どうぞどうぞ」
先史文明の自転車を参考にラベルが開発した自動車カート、技術内容は飛行装置にも繋がるので秘匿している。無タイヤの浮上方法もラベルは考えたが、NG、先進すぎても一般人が混乱するからだ。
小径タイヤの四輪独立懸架、2・2・3座席の7人乗り後部荷物室、ジュラルミン車体で強化ガラス窓、中席をたたみ側面扉を左右に開閉し乗り組む、前世のミニバンみたいになった。
運転はハンドルで前輪首振り、進行重力もその方向にかかる。左ペダルブレーキは逆向き重力制御とホイールブレーキも併用。右ペダルスピード制御で簡単。
ボクはカメラ式の後方視認装置や方向指示器、駐車ブレーキ、所有者認証のアドバイスをした。ラベルの発案した柔らかいクッションのような衝突回避物理結界や車体デザインなどには感心した。
車体の機構や運転装置のコンセプトを公開して、連動させればできあがりというオールマイティ魔道具を馬車製造会社に販売している。
「え?故障じゃないよな」
「先に世界樹の様子を見て行こうよ」
「あ、そうね」
駐車場を出て聖地正門わきに車を駐めて中に入る。施設の玄関を入ると、内向きは透過結界なので、ストーンサークルと祭壇の向こうの若木が青々と葉っぱを茂らせているのがわかる。
気がついたエルフの巫女長が結界出入り口から来てくれた。
「皆様、ウルルちゃんは順調に成長してますわ」
「それはよかった」
「皆様は中に入らないのですか?」
「いや、規則は守ろう」
「・・・わかりました」
特例だったナルラ村の転移陣も撤去し、エルフ族の掟に従った結界は人族を拒否するようになっている。エルフが管理する追加2村はポルルとコルラ、結界は広がった。ウルルはニホン領国の最初の世界樹。特例だと許されているが自重する。
北側にはエルフだけが入れる施設、巫女達が生活出来る場所や倉庫など、南側は寄進箱やエルフ村の物産販売所、喫茶室。ウルルにはまだ入植者を呼ばないためにガランとしている。
「ちょっと様子を見に来ただけでね、ミスリルロードのドライブに行くんだ」
「あ、それなら交代で来た子達3人もお願い出来ますか?」
「いいわね、ランチもたくさん用意してあるから」
「楽しくなるわね」
その3人が挨拶して乗り込み出発だ。9部族が巫女を養成し各地に配備してくれている。最初から世界樹の世話ができるなんて素晴らしいと多くが応募する人気職業だ。長老と呼ばれるエルフも参加しているが、やはり年齢はわかりにくい。
隣の聖地に向かう道、幅は2車線で、大木を切り開き緩衝地帯は左右2車線分、木材は原木として輸出産品になっている。
大森林になっていた場所にはその昔、3ヶ国があって、エルフ族の隣国は切り株利用が多く、中央は積極的にマナを奪った国。南東の国が拮抗と推測している。
褒美として得たニホン領国は比較的マナ濃度が適正、魔獣は資源なのでまだ討伐していないが、各聖地は結界を張り世界樹の種を待つだけになっている。
「ミスリルロードは結界を張っていないのですか?」
「野生動物も魔獣も居るからね」
エルフの里からの川筋、蛇行してニホン領国にも流れている。湖に流れ込みまた幾筋かに分かれる。
「わあ、綺麗」
「眺めが良いわ」
「ここは観光地になりそうだろ、エルフの里は高地だから清流は多いけど大きな湖が無いと聞いている」
「ええ、中央の大湖に近い部族が観光に行っていると聞いてます」
「あそこは交易があるからね」
「あ、船が浮かんでますよ」
「うん、サルベージ船、破却した先史文明の遺産がわかってね、大水上都市があったらしく船も沈んでいる」
「誰かが働いているんですか?」
「ゴーレムを使った自動魔道具でね、この先に基地があるから寄っていこう」
「結界もあるからそこでお昼にしましょう」
途中魔獣を狩ったりして昼頃になっている。枝道に曲がって到着した。
「あら、船が停泊して何かを出してますね」
「荷車を押してるのがゴーレムさんですか」
「そういうこと、引き上げたものは更地に整理しておいてあるよ。ミスリルロードもゴーレムに作らせてる、魔素が濃くても動けるからね」
「へ~」
「施設があるから、先にランチよ」
「は~い」×3




