第2話 魔法革命?
「それって・・・ホントか!」
「聞いたことないものばかりだよ」
「わからないけどこれが理論的って事?」
「言いくるめられてる気がするわ」
「おいおい、これは初歩の初歩、原子はさらに素粒子でできていて、素粒子はさらに・・・ま、原子核と電子で止めておいた方が良いか、この周期表で数字は陽子の数と中性子の数を表していて総数が原子の質量になると覚えれば良い・・・」
夏休み末の5日間、ボクの部屋で科学のレクチャー、それを踏まえた新体系の魔法技術の勉強。テキストをまとめるのも自分のためになった。
「違いすぎるわ、今までの魔法の勉強って・・・」
「だけど、ケンの魔法でも動くのか」
「ヤバいな、ヤバいよ」
「どうしましょう・・・」
「まあ、ボクもここまで上手くいくとは信じられなかったけど、事実だ。この魔動式を入れることでミスリルからエネルギーを取り出し、この魔動式で操作出来る。あと半年で君たちにも色々教えられると思うからやってみないか?」
「そうだな、革命的魔法だ、使いたい」
「やるわよ、あたし」
「あたしも」
「もちろんだ。信じるよ」
「ただし、これは極々秘密にして欲しい・・・世界をひっくり返したくない」
「それもわかる」
新学期からデグナの日に集まることになった。
魔道具技術では素材作りの土魔法を学習、基本セラミックが良くて、水晶は更に良いが脆いことも知った。ダイヤモンドはもっと良いかも知れない。
「それはかなり細かい素材だね」
「ま、作り方は工夫しましたよ、仕上げをご覧じろですよ」
この半年で目指すのは、エネルギー源が魔石の電卓とカラー写真機。
電卓は二進数への変換と計算回路、十進数への変換と表示機能、数字や四則と=とクリアボタン機能、石版表示機能など既存技術を勉強する。みなさん計算には苦労しているからね。
写真技術はこの世界にはないので銀板写真や白黒写真を飛び越え一気にデジタルカラー写真、印画紙をどうするかがポイントだ。聞きかじりの化学で解決出来るかは微妙なところだ。
空間魔法の勉強をしながらマジックポーチのチャレンジ、5デタ立方でも従来より省エネ、三個の普通魔石で秘密にしてるミスリルエネルギー源。安全・安定性が重要なので5重の安全策を考えている。
試行錯誤と友人達への講義で時間が経つのが速い。
10月中旬に父からの手紙、開拓は順調で『沈黙の森』がさっそく成果を上げ、予想ポイントの遺跡を発見。冬休みの帰郷で確認したいと返事を書く。
新しい馬車は予想を超える発注であわてて製造ラインを増やしている。ゴム原料は順調に採取輸出体制ができ間に合った。スプリング工場は急遽ルグラにも技術移転、独占出来ないと判断した。商業ギルドを通じて家具工房の組合を結成、ノウハウを普及させている。
ベトラン国から技術供与の打診があり関係者との交渉が始まっているそうだ。
時はあっという間に流れ、冬休みはみんな帰郷だ。
電卓とマジックポーチはなんとか試作品が完成、写真機はもっと考えないといけないので保留にした。
電卓は複製魔法でゼオス先生と取り分について契約、20台を確保して15台はお祖父様伯父様達に進呈し5台は義父への土産にする。
帰郷に同行するのはイリア、護衛はヤリスと部下のトルンで、特注の悪路用馬車5台を受け取る指命もある。
「なんか1年しか経っていないなんて不思議な気分だなあ」
「ケン様は身長も伸びましたね」
「中身も成長していますわよ」
「それは楽しみですね」
「よろしく頼むよ、ヤリス」
「ええと、お荷物は」
「マジックポーチを作ったんだ」
「え~~~!!!」
それこそS級の魔道具士でないと作製出来ないのが常識。普通は考えられない。
「試作品の運用テストなんだよ」
「ホントですか」
「ほら」
「わ!」
着替えが詰まったバックを取り出してまた収納。護衛の2人が固まった。
「それではお祖父様お祖母様、皆様行って参ります」
「気をつけてね」
「土産話を待ってるぞ」
グランポートまでは護衛付きの伯爵家の馬車を出してくれた。