第13話 魔法自習
使えるようになった魔法、試しにやっているだけでもいろいろ考えた。
発動位置と強度の2要素は可変にしたいが、エネルギー源としては体内魔素じゃないほうがすっきりする。恐らく今の魔法体系では体内や手に持った魔石の魔素をエネルギー消費している。
魔動式の変換効率が悪く魔力切れがおきたり、体という不確定要素による違いから魔力が多い少ないとの誤解が生まれてるのだろう。
魔素は時間が経つと体に吸収され回復する。一般の回復薬は体力を多く、魔力も少し回復するとされている。魔力回復薬は魔素を濃縮した物らしい。
治癒魔法は小さな傷や火傷なら元通りに修復、自然治癒を加速しているのかも知れない。上位治癒魔法は体のことをよく知っている経験者が使える。神経や血管、筋肉などのイメージがしっかりしていることが必要なのだろう。
病気治癒は原因が特定出来ないと難しいらしい。毒なら毒を特定して土魔法の抽出と同じ魔動式で体内から除去しているのか。
病原菌も同じことかも、ただし微生物の概念は発達していない。
免疫の機構はわからないまでも免疫力の概念があるようで治癒士は体内活性化としてイメージ出来ているかもしれない。
切断された手足が元に戻るようなことはない。創造神か生命神の加護があれば可能かもと思うが、8柱以外の加護を貰った人は居ないとも聞いてる。
ちょっと脱線、実験的にエネルギー源として魔素が伝わりやすくて安定している魔金属ミスリルを魔樹タクトに飾りリングとして嵌めこんだ。
重力操作がヒントになった魔動式でミスリル原子をmc2乗エネルギー源と特定、位置と強度を可変にして魔動回路を組み立て魔法発動する試み。
水魔法だ。タクトの先端ちょっと離して位置を特定、空気中の水分子に運動エネルギー変換で極小魔方陣場に飛ばし分子間力に変換して結合。元になった数式を書き換える。強度は分子数で置き換える。アボガドロ数で2ブサ(約0.8g)。
「アクア」
一瞬で純水がポトンと落ちた。
「飛ばすときは重力制御で浮かせるんだろうな」
魔動回路式を追加、極小魔方陣に重力場とG強度と方向を設定した。
「アクアボール」
一瞬で水滴が飛んでいき壁に当たった。強度10Gなのでけっこうな音がする。
「お~」
熱力学では熱エネルギーは媒体が無いと伝わらない。水より酸素が良いだろう。
空気中の酸素分子を一点に集め極小魔方陣結界内に閉じ込め運動エネルギーを与えていくと何万度にも高まる。
結界ごと重力制御で打ち出し、結界には接触消失する性質を付与、熱エネルギーが伝わった対象は高温発火で燃えてしまうかも。
「危険なので部屋ではやらない、ふう、あ、熱心にやり過ぎ、寝よう」
「このライト、使い勝手が良いから複製させて貰えないかな」
「え!そういう魔法もあるんですか」
「材料を揃えれば、魔石を結構消費するけど、いちいち作るより早い、起動は触るか、タクトや指先で指定する方法にする」
「なるほど」
早速作って動作確認した完成品をゼネスが用意した材料で複製、20個作った。
「確認して魔道具屋に売り込む、取り分は・・・」
「それは良いですよ、先生には色々教えて貰って助かりました」
「お、そうかい、ならありがたく」
ゼネスはケンの魔動回路がよくわからないところもある。魔素による操作とエネルギー変換を別に考えるのは初めてのことで、効率化出来たのはそういうことかと漠然に理解した。