第9話 入学式と学友
「多くは進学か」
「そういうことさ、ま、転出した者も多いらしいよ」
「成績か・・・または、もっと良い学校、アトラン国?」
「兵学はね、歴史があるから、魔法学はこっちの方が高度なんだよ」
「へえ~」
「魔道具はベトラン国かな、有名なドワーフの工房が近くにあるから」
「ふむふむ、加護持ちのアルギス様か」
「有名だ。知ってるのかい?」
「弟子のジルギスと親しい」
「あ、グランに居るか」
隣の男子はエールン国のエドガ・ドス・ペンテス、公爵家の次男、魔道剣士を目指し、魔法を高めたいと転入してきた。その向こうはやや落ち着きの無い女子、同じくエールン国から魔道具士を目指すラベル・ルルシア・トーレス嬢、あとツェリン国のクルト・パーム・ハラホ嬢、フェリン国からのワンド・ドス・ゾイド君だ。
ちょっと聞くと両国もベトラン国に2・3人留学していて、魔道具のレベルアップを図っているとのことだ。
進学生はすでにグループ化されているので、なんとなくこの5人で行動するかも知れないと思った。
式は何処の世界も同じようなものだが、5人は名前を呼ばれたので立ち進学生達にうなずく礼をした。転生者であることは首脳陣しか知っていないのでわざわざ教えたくは無いが、貴族なら抜け目なく調べはついているだろう。
「う~む、贅沢な部屋だなあ」
「うらやましいわ」
「まあ、祖父は有力貴族だからね」
「父君はグラン国の新たな領主になるんだろ?」
「1期10年計画の6年目、人口は5千人を超えて少し前倒しかな、潜在的に5万人を保持出来る範囲の土地に防護設備を構築したら領主に就任する予定だ。そうしたら国庫に税を納める」
「へえ、どういうこと?」
「大森林の一角を崩す、防護設備内の魔物や魔獣を駆逐して、開拓して農地を増やすんだ」
「なるほど」
「それと、冒険者を使って更に探索を広範囲に広げる。有望な鉱山が開発出来るか魔素の特異点を見つければさらに計画を前倒し出来るって寸法だ」
「お茶を入れ替えますね」
「あ、どうも」
「このケーキは何処で買ったの?」
「ラエルド商店だよ、取り寄せるなら連絡先を教えよう」
「いえ、休日に買いに行くわよ、あたしは貧乏貴族だし」
「なら、イリヤ、地図を用意しておいて」
「かしこまりました」
「ケン君、なんか偉そう」
「う!」
「わかるわかる、ムリしていそう」
「ううう、やっぱそう思う?」
「ガチガチだったもの、式場でも」
「田舎で育ったからさ、母上に仕込まれたけど、付け焼き刃、ふ~疲れた」
「アハハハ」
「なあ、あの馬車の模型見て良い?」
「お、目をつけたか、どーぞ」
「え、え、何コレ」
「開発中の新機構を組み込んだ馬車さ。車輪が上下することで揺れを軽減することができる。その他にも新機構を組み込んで、年内には国王陛下に献上する予定だ」
「これって魔道具なの?」
「いや、一切魔法は使用していない」
「魔道具で揺れない馬車ってあるけど、重力魔術が高度すぎて大きな魔結晶が必要だからめっちゃ高価なんだよね」
「らしいな、それなりに高価だが庶民にも買える値段になるだろう」
「へええ~~」
「革新的だな」
「そういえば、ワンド、本で調べたんだけど君の国にこの木は群生してる?」
「ん~、ああ、ネタネタか、コレがどうしたんだ?」
「幹に傷をつけると白い樹液が採取できる。何かに使用してるのかい?」
「いや、聞いたこと無いな」
「特産品になるぞ、10エサを百金貨1枚で送ってくれないか、特急料金込み」
「なんだって・・・」
「もちろん、商売は別だ、買うとなったらその10分の1ぐらいか」
「よ、よし、父上に連絡してみる」
「なんかな~」
「ケン君って商売人?」
「領地を儲けさせるのが貴族の義務だからさ」
同学年の貴族はヘルンに居なかったのでお茶会に招いて色々話すのがとても楽しかった。4人とも気軽に話せて付き合いが深まる予感がした。
みんなが帰った後に、『キモオタ先生』が女子、女子と会話、やった~って興奮してて、少し可哀想になった。