第六話 完成!
まったく、おじさんはまったく……人を煽てることがお上手なことで。わたしの様な単純な人間は容易に驕り高ぶってしまうものです。自らを律し、謙虚にならなくてはいけませんね。
「……ふふふ」
「ご機嫌なご様子だね」
はっ!? これはいけません。おじさんの優しい言葉とロケット作りの楽しさでわたしは気が緩んでしまっていたかもしれません! フィン作りの作業、こちらは牛乳パックをカットして作成しております。刃物は取扱注意と言われたばかりです。わたしは頬をパンと叩き、気を引き締めて作業に戻ります。
完成しましたフィンをノズルに固定して……出来ました!
続いておじさんの指示監修の元、続いてロケット先端のノーズコーンを色紙で作成。中に油粘土と新聞紙を詰め込んでこちらも本体に取り付けました。
おおこれは凄い。外観だけならばもう完成と言っても良いのでは無いでしょうか?
「殆ど完成だね、後はこれをスカート内のペットボトル飲み口に取り付けるんだ」
おじさんはゴソゴソと懐の羽毛をかき分けて小さな部品をわたしに手渡しました。
「これは……何でしょうか?」
おじさん手渡されたそれは、ペットボトルの蓋にも見えますがちょっと違う様です。
「これはノズルだね。ひかりさんが作っているロケットを空に飛ばす鍵となる部品だ」
「いわゆるパッキンと……自転車のタイヤに付いてるヤツでしょうか」
しかしわたしの自転車に付いているものとは少し違うように見えます。
「その通り、自転車のバルブだね。これはその中でもフレンチバルブという種類のものだ」
ふむふむ、とわたしは新しい言葉と意味を学習し、咀嚼して理解をします。
「ではこのノズルを通して何かをロケットと繋ぎ、これまた何かをロケットへと流すということでしょうか?」
「ご明察」
やりました! 正解だったようです。小躍りでもはじめたくなる欲求を抑え、わたしはノズルをロケットに取り付けました。
あれ? そういえばおじさんはどこでどうやってこのノズルを手に入れているのでしょう。カモメさんてお店で買い物ができるものなのでしょうか……
おや? そもそもどうしてわたしはカモメさんと普通に会話をし、あまつさえロケット作りのご鞭撻をいただいているのでしょうか……
謎は深まるばかりです。
***
「スイングテストは……今回は省略しよう」
おじさんは何か作業を短縮したようです。それが何なのかはまた改めて聞くとしましょう。
「次の工程は……」
おじさんは神妙な顔付きで言葉を溜めます。さあ、次は一体どんな難関が待ち受けているのでしょうか。ドキドキしてきました。わたしの心臓はワクワクで早鐘のように打ち続けています。
「ロケットに名前を付けたり落書きをしよう」
まさかの作業が飛び出しました!?
いやとても楽しいですし、自分のオリジナルロケットに名付けたりデザインするんて興奮がとどまることを知らず鼻息が荒くなってしまっていますけれど!
「な、名前ですか?」
「ああ、これも大切な儀式。カッコよくしてもいいし、可愛くしたっていい。君の自由だ」
うふふふふ……どうしたものでしょうか。悩んでしまいます。
「ちょ、ちょっとだけ、待ってくださいね」
「納得がいくものにしてくれよ」
おじさんは苦笑しながらそう言ってくれました。
***
「……決まったかい? そろそろ夕暮れの時間が近づいてきてしまったんだが……」
はっ!? ついつい本気で熱中して悩んで悩んで悩み尽くしてしまっていたようです!
「ごめんなさい! 時間を忘れてしまっていました!」
「かまわないよ、そこまで自分の作品に愛着を持てるなんて良いことだ」
ああ、おじさんはまたも苦笑しながらそう言って下さいました。反省いたしましょう。
カラーペンや色紙でしたデザインは終わりました。
「名前は……」
いい加減に悩んでいた名前を決めましょう。
「ジョナサンがいいです」