第四話 おじさんはどこかな?
画用紙に油粘土にハサミにカッターetc.……
おじさんに指示された材料に工具を集めて鞄に詰めて、わたしは海辺へと戻ります。いつもより鞄は重いですが、足取りは軽いです。期待もたくさん詰まっているからでしょうか? それらはきっと気体よりとっても軽いのでしょうとわたしは内心でほくそ笑みます。
「おじさーん!」
海辺に再びやってきたわたしは、海岸に佇むカモメさんの元へと駆け寄ります。しかしどうしたことか、おじさんは一目散に飛び立ってしまったのです。びっくりさせてしまったのかと反省しようとしていたその最中の背中に声がかけられました。
「こっちだよ、ひかりさん」
振り向くとそこには一羽のカモメさんがおりました。どうやらわたしは別の方と勘違いして近づいたしまったようです。わたしはおじさんにひれいを詫びます。
「人間には私を見分けることは難しいだろうね、事実、私も暫くはわからなかったものだ。見分け方を教えてあげよう」
おじさんはそう言うと、わたしに背を向け両の翼を広げました。おじさんは透き通るように白と灰色の羽毛で覆われていますが、その背中は一部が黒い羽毛になっていて、それはまるで三日月の模様となっておりました。しかし、おじさん自身も暫くわからなかったとはどういうことなのでしょうか。
「きれい……」
思わず口を衝いた言葉にわたしは自分で驚きました。しかし、おじさんの背中の模様は鋭く繊細で、とても美しく見えたのです。おじさんはそれを聞いて恥ずかしいやらなにやら、複雑な表情で翼を閉じました。
「さて」
おじさんは右羽を口元に当ててコホンと咳払い。それはまるで人間のような仕草でした。
「それでは、共にロケットを作ろうぞ!」
「おー!」
私たちは右手を高々と挙げて宣言しました。まだまだ日は高く、太陽は燦々と輝いているのでした。