第三話 ママには内緒!
「おかえりなさい、ひかり」
お家に帰ると、ママがエプロンで手を拭きながらわたしを迎えてくれました。
「今日は随分と早いお帰りではなくて?」
「ちょっと忘れ物なの」
いつもはスケッチをした後にお友達と遊びに行ったり海岸線を探検したりしてから帰路へとつくのですが、今日のわたしは違うのです。カモメのおじさんと出会い、ロケットを作ることになったのですから。急いで帰宅し、おじさんに言われた材料を取りにきたのです。そしておじさんのことはママとパパにはヒミツにします。新たな自由研究をサプライズで見せてびっくりさせてあげるのです!
必要な材料その一、ペットボトル。ただのペットボトルではありません、炭酸で千五百ミリリットルのモノが二本必要なのです。まずはゴミ箱を探しに行きますが……おや?
「ママ、ペットボトルのゴミはどこ?」
「今日の朝がゴミの日だったから棄てたわよ」
なんと!? いきなり計画が頓挫してしまいました!
さてどうしたことでしょう。ゴミ箱にないとなると次なる一手、冷蔵庫を開けてみましょう。すると僥倖! サイズがドンピシャリのサイダーがちょうど二本ありました! わたしはいそいそとサイダーを取り出し、コップに注ぎ飲み始めました。
***
「けっぷ……」
一本目の半分ほどでわたしのお腹は限界を迎えました。もう飲めません……。
「あなたはさっきから何をしているのかしら?」
見かねたママがわたしに声をかけました。
「空のペットボトルが二本必要なのだけど飲みきれないの……」
あらあら、とママは困った顔をしています。
「仕方ないね、ママも手伝いましょう」
心強い助っ人が現れました! 何に使うのかというママの質問を華麗に躱しながら、わたしたちはサイダーパーティを続けます。
「けっぷ……」
「けっぷ……」
やりました。わたしたちの胃という尊い犠牲を持って、わたしはペットボトルを二本手に入れることに成功しました……!
***
必要な材料その二、牛乳パックを二つ。また飲み物だ! ゴミ箱には……一つありました。もう一つはどうしましょう? 恐る恐る冷蔵庫を再び開きます。ありました、あったけれども中身は半分以上残っているようです。もう飲めませんよ!
「それも必要なのかしら?」
またまたママが声をかけてくれました。そうだと伝えるとママは何とこんな提案をしてくれました。
「仕方ないね、プリンでも作っておいてあげるから計量カップに移しておいて」
思わぬ幸運、僥倖再び! ママの手作りプリンが食べられるなんて……ではありませんでした、目的の牛乳パックが手に入るなんて。ママはとっても優しいと、わたしは改めて自覚します。いつもありがとうございます、これからもいっぱいお手伝いをすることとしましょう。




