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第二十三話

 沈黙が流れました。一分、二分、三分。時計の針と、沈黙は止まりません。

 静寂を破ったのはおじさんでした。


「……私は、何を残したのだろうか」


 ポツリと、呟きは重く、ズシリと響き、口火を切ったそれは溢れ出しました。


「友を亡くし、家族を疎かにし、飛行機と共に死んだ。私が設計した数多くの飛行機も多くの犠牲を出しているだろう」


 語気荒く、ここまで感情を乗せて話をするおじさんは始めてみました。辛い、悲しい目をしています。でも、涙は流れない、流せないようでした。そして、その感情は溢れ出したら止まらないようでした。


「代謝もできない身体では涙も流せない。私の誇りは何だ? 私は何を作ってきたんだ、何を残したんだ? 私が本当に作りたかった物はなんだったんだ?」


 おじさんは俯き、そう叫びました。


「ーーわたしではダメですか?」


 わたしはおじさんに声をかけます。上手く伝えられるかわかりませんが、精一杯にわたしの気持ちをおじさんに伝えたい。

 わたしの、精一杯を。、


「わたしは、おじさんに様々なことを教えていただきました。ロケットの作り方、フィン、ノズル、実験の仕方……他にも沢山です」


 ロケットのジョナサン、二冊目に突入した実験ノート、部品の製図にチャレンジしたスケッチブック。わたし一人では成し遂げられなかった成果の積み上げです。


「わたしはおじさんのお陰で成長したと胸を張って宣言できます! 出会ってからの時間は短いのかもしれませんが、おじさんがものづくりに込める想いは少なからず受け継いだと自負しています! だから!」


 ーーだから。


「わたしではダメですか? わたしはおじさんに育てられた弟子みたいなものです。わたしがおじさんの誇りになってみせます」


 わたしは立ち上がり、拳を握り、天高く掲げそう宣言しました。おじさんはわたしの影に覆われ、言いました。


「……涙が流せないことはやはり悲しいものだ」


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