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第十三話 雨の日の外出

 足元の水溜りを長靴で弾く。波紋が広がり、消えていく。レインコートのフードを通して、バタバタと雨の音が間近に聴こえる。ジメジメとした空気がコート内に留まり、少し不快に感じます。しかし、時折吹く風はわたしの顔を爽やかに通り抜けていく心地よさを与えてくれます。

 今年の梅雨、パパに買ってもらった薄黄色のレインコート。傘をさしたカエルさんがワンポイントで、とっても可愛らしくてお気に入り。この長靴も一緒に買ってもらいました。水玉模様がチャーミングでこちらも自慢の逸品となっております。お出かけが雨の日だとしても、これらのおかげでちょっぴり気分は幸せになれるのです。

 ロケットのジョナサンはお家でお留守番させて、わたしはカモメのおじさんのもとへ向かう途中です。おじさんはいつもの場所にいてくださるでしょうか? 雨天中止の約束はしていないので、待ちぼうけさせては大変失礼なことです。これからは雨が降った日はどうするのか話し合わないといけませんね。

 しかし、元々おじさんはわたしのお絵描きによる自由研究が雨の日には決行することができないと指摘してくださったことが始まりです。そんなおじさんなのにこのような事態に陥ってしまうとは。あんなに頼りになるおじさんだけれども、抜けているところがあるのですね。完璧に物ごとを進めるということはやはり難しいものなのでしょう。


 さて、いつもの海岸にわたしはたどり着きました。眼前に広がる海は暗く、冷たい鈍色の表情をしています。波は白い泡を立てながら、無機質にこちら側へ打ちつけられます。晴れた日の優しく穏やかな海とは対照的で、わたしは少し寂しく感じました。


「ひかりさん」


 雨に打たれながら海を見つめていると、背後から声をかけられました。おじさんの声です。わたしはほっと胸を撫で下ろして振り返ります。

 そこにはおじさんが、いました。しかしいつもより少し身体が大きいような……? よくよく見ると、おじさんも雨合羽を羽織っております。おじさんの羽毛に近い色だったので気がつきませんでした。頭の部分は、クチバシまでしっかり覆うことができる透明なヒサシで雨を防いでいます。しかし、これは。


「かわいい……」


 恐らく年上のおじさんにこのようなことを言うのは失礼なこととは存じますが、思わず口にしてしまいました。しかし、雨合羽を見に纏ったカモメさんというものがとてもかわいく、我慢ができなかったのです。

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