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第一話 わたしの自由研究

 わたしは周りの大人たちからは真面目な子だと形容されております。ママもパパも、学校の先生も、回覧板を回しに行った家のお爺さんもみんな、わたしのことを真面目な良い子だと言ってくれます。なぜ皆さんがそのように言ってくださるのか、わたしなりに考えてみました。

 わたしはまだ小学校の五年生ですが、ママのお手伝いも積極的にします。学校のお勉強にも余念はありませんし、難しい図鑑や百科事典もパパに教わりながらたくさん読んでいます。小学校では学級委員長を任されたことがあるうえに、先生のお話を静かに聞くことができるのです。お友達の話を聞いてみると、お手伝いなんてしたくない、勉強もいやだ、という方たちが多いように感じます。

 みんながやりたくないことでも素直に取り掛かることができる、そんなわたしを皆さんは真面目だと評して下さります。


 ※※※※※


 七月二十五日、午前九時。町の海辺でわたしは夏休みの宿題である自由研究の真っ最中。ツバの広い帽子をかぶってはいますが日差しがとても強いです。スケッチブックや色鉛筆など荷物が多いせいもありますが、家から歩いて来ただけなのに汗ばんでしまいました。ママが持たせてくれた水筒には冷たいカルピスが入っています、こまめに飲むようにします。

 自由研究をしに海辺へとやってきたにもかかわらず、わたしの荷物はスケッチブックと色鉛筆。その理由を説明いたしましょう。

 わたしの自由研究の内容は「毎日同じ場所から海を絵に描く」というものです。小学校への通学中に眺める海の姿は、わたしには毎日ちがうものに見えていたのです。しかし具体的にどこがどうちがうのかを言葉で表現することができずもどかしい思いをしていました。そこで気づいたのです。毎日同じ場所の海を描いて、それを見比べてみれば良いのだと。以上がわたしの自由研究の内容です。

 今日は自由研究が始まって五日目です。スケッチブックをパラパラとめくると、たったこれだけでも、一日一日で海が変化していることがわかります。波の高さ、水の色、飛んでいる鳥の数、一つとして同じ景色だったことはありませんでした。発見をするということはなんて楽しいことなのでしょうか。わたしは心がウキウキと弾むのを感じます。

 今日も定位置で海の風景をスケッチします。時間の目安は一時間ほどを目標にしています。他の宿題もありますし、お友達と遊んだりもしなければいけませんからね。わたしは砂場にシートを敷いて本日の自由研究を開始しました。


 ※※※※※


「何を描いているんだい?」


 本日分のスケッチも仕上げが終わるというさなか、わたしはどなたかに話しかけられました。しかしどうしたことでしょう、周りにはどなたもいらっしゃいません。しいていうならば、わたしのシートにいつのまにかカモメさんが鎮座していることぐらいです。わたしがきょろきょろと辺りを見回していると、また声が聞こえます。


「話しかけているのは私だよ、君の隣にいる一羽のカモメだ。栗色の髪をしたお嬢さん」



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