死亡
「アナタハドノ死ニ方ガイイデスカ」
コンビニへ行く道中、急に機械音声の様なものが聴こえてきた。
いや、聴こえてきたという言い方は相応しくない。
言うなれば脳内に直接語りかけてくる感じ。
「イチ、びるノ作業現場カラ鉄骨ガ頭上ニ落チテ死亡」
「ニ、空キ缶デ足ヲ滑ラセテ死亡」
「サン、巨乳に興奮シスギテ死亡」
何かどれも恥ずかしい死に方だな!?
「40秒以内ニ決メテ下サイ。40、39、38...」
まぁ、多分ゲームのやりすぎで幻聴が聞こえてんだろう。
うん。そうだ。
そうにちがいない。
無視無視。
「...27、26、25...」
コンビニの5000円くじ何が当たるかな。
この前みたいな別に推してもないキャラの消しゴムだったら店員ぶっころがす。
「...17、16、15...」
そういや今日はあのゲームのサーバーメンテだったな。
さて今回は何分延長するのやら。
俺ほどの忍耐力があれば半日くらい伸びても余裕だけどな。ドヤ
「...5、4、3...」
にしても今日は暑いな。
汗が止まらない。
「...1、0」
「希望選択ナシ、べーしっくきるヲ発動シマス」
その瞬間、見えない糸が俺の体を縛り上げた。
ミシミシッと音を上げ、その糸は次第に拘束力を増していく。
「おっ...あっつ...」
段々身体が熱くなってきた。
その糸が熱くなっているのか、それとも俺の身体が痛みを熱と勘違いしているのか。
真偽は分からないが、とにかく俺が今まで経験したことのない苦しみだった。
見えざる糸の制裁はより強くなっていき、腰の辺りがくびれてきた。
ついには首ほどの細さまでくびれ
ブチッッ
鈍い音がした。
嫌な予感がした。
首は拘束されていないので、恐る恐る下を見る。
無かった。
下半身は既に俺のものでは無かった。
俺の意志とは関係なく、地面にべったり倒れていた。
「くっ...ぁ...」
下半身を俺の身体から千切り取った見えざる糸は、今度は俺の首を締め付け始めた。
「ん...ぇ...」
呼吸ができるってこんなに有難かったのかと知った。
肺の中の空気は行き場を失い、肺に息を届けようと必死で肺を膨張させたが、それは徒労に終わった。
空気空気空気空気空気空気空気空気空気くうきくうきくうきくうきくうきくうきくうきくうき...
「ウッ...ガ...」
ついに空気が欲しいという気持ちを超えるほど首が痛くなってきた。
強く締め付けられる。
首の骨は既に折れていた。
メシメシという音が大きくなり
ブシッッ
シューーーー
俺は三つの部品に分解され、薄れゆく意識の中、胴体から噴き出す紅の飛沫を眺めながら、
死んだ。
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