因果応報
*若干暴力的な描写が出てきます。
苦手な方はお戻りください。
こんにちわ。
私はクマのチャコ。
あなたのお話し相手になるね。
仲良くしようね。
「チャコ聞いて」
「クラスのお友達が意地悪するの」
「あたしのこと」
「こうやって引っ張るのよ」
私の腕を乱暴に引っ張る。
イタイ、イタイよ。
「イタイって言ってるのに」
「止めてくれないの」
あなたも止めてくれないのね。
あなたは私を壁に投げ付ける。
「やっぱりぬいぐるみに話しても」
「つまんない」
あなたはそれっきり私に
話しかけてこなくなった。
数日後、あなたのママがやってきて
「ねぇ、もう飽きたの?」
あなたに言う。
あなたがうんと頷くと
あなたのママは私を
「ごみぶくろ」の中に入れた―。
コンニチワ。
僕は犬のシロ。
少しだけなら声が出せるよ。
仲良くしてね。
「シロ、こっちおいで」
僕は声は出せるけど
行くことは出来ないんだ。
ごめんね。
君とママがお話してる。
「本物がいいー!」
「偽物はつまんない!!」
「いったいどれだけ買ってあげれば気が済むの?」
「もうそれが壊れない限り」
「新しいのは買ってあげないからね」
ママが行ってしまったあと、
君は僕を見た。
「あんたが壊れてくれないと」
「新しいの買ってくれないから」
「―壊れちゃえ」
そう言って君は
僕のお腹に入ってるものを
全部出してしまった。
僕は声が出せなくなってしまった。
次の日、
君は僕を外へ連れ出す。
どこへ行くの?おさんぽ?
大きな「ごみのやま」の上に
僕は置かれた。
そして君は
僕を振り返ることもなく
そのまま去ってしまった―。
こんにちわ。
あたしはブチネコのチビ。
これからあなたの家族よ。
いつも一緒にいて
暖めてあげるわ。
「チビ、遊ぼう」
あたしが寝てるのに
いきなりシッポを掴んできたの。
あたしが怒ると
頭にきたのか、
「ネコのくせに生意気ね!」と
あたしを床に押さえつけて
何度も何度も叩いたの。
あたしはツメで
あなたの手と顔を引っかいた。
あなたの目の縁から血が出て、
あなたは大声で悲鳴をあげた。
その声を聞いてあなたのママが
飛んできたわ。
あなたは泣きながらママに
「何もしてないのに」
「いきなり引っかいたの」
「こわい!あんな子いらない!!」
そう言った。
うそよ、
あなたが何度も叩いたから
あたしも引っかいたのよ。
でもあたしの
言ってることなんて
通じないわよね。
「なんて凶暴なネコなの!」
「もう少しで目に傷がつくトコじゃない!」
ママはあたしを捕まえ、
「きゃりー」に無理やり入れる。
そして「でんわ」をしたの。
すぐに「ほけんじょ」の人が来たの。
そしてあたしを連れていったわ―。
こんにちわ。
僕は君の恋人。
これからたくさん
楽しい思い出作ろうね。
「あなたつまんないから」
「もういいわ」
君は僕をみることもなく
そう呟く。
君が喜んでくれるならと
何でもしてきた。
借金してまでブランドのバックも
プレゼントしたのに。
―そのバックは
僕がプレゼントして
すぐに質屋に入れたのは
後日知ったが。
「バイバイ」
飽きてしまった玩具のように
僕は捨てられてしまうのか・・・?
そう思った瞬間、
僕の頭の中で声がする。
「こんなヒドイ子は」
「捨てられる前に」
「先に捨ててしまいなさいな―」
たくさんの声が一斉に響く。
君が今まで
「捨ててきた」ものたちの声だと判った。
僕は君の腕を乱暴に引っ張った。
そして壁に叩きつける。
―君があのクマにしたように。
僕は君の髪を引っ張り、
床に押さえつけ、
何度も何度も殴った。
―君があのネコにしたように。
僕は君の腹の中身を
全部出し、ゴミの山に捨てた。
―君があの犬にしたように。
あの声の通りに、
僕は捨てられる前に
先に君を捨ててやった。
君があまりにもヒドイ子だから
捨ててやったんだ―。
裁判が閉廷し、僕は連れ出される。
僕が君のママの
目の前を通った時に
「鬼!悪魔!」
「あんなに残忍な姿で捨てるなんて!」
傍聴席で泣き叫びながら
僕に怒りをぶつける。
僕は立ち止まり、
君のママを見る。
「人に酷いことをしてはいけない」
「人だけではない」
「この世に存在するものに」
「すれば、それは全て自分に返ってくる」
「因果応報」
「―ご存じないようですね」
僕は微笑み、背を向けた。
―end―