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アンバランスハート  作者: kero*kero
5/8

場面5*想い

時計は、午後九時半になろうとしていた。


うさぎは、少し早めに店を出ていた。

啓太には内緒で 化粧室で身なりを整えている。そして、鏡に写った自分の姿を見ている。


「はぁー。」

洗面台に両手を着いて鏡を見て、ため息が出てしまう。

『フツーだ。こーんな普通の私で良いのかなぁ?亀城さん めっちゃ綺麗でキラキラしてたなぁ。』

少し酔っ払って赤くなった、ほっぺをツンツン突っついて、鼻の先端を『高くなれ!』と引っ張って、自分の顔に問いかけている。


啓太とは安心していられる。とても居心地が良い。いつも大好きな気持ちを伝えたいけれど。。。駆け引きとかじゃなくて、ただただ、単に無茶苦茶照れくさくて言えないでいるだけだった。


急に頭の中に はーちゃんが現れて『それは俗に言うツンデレや。』と、一言言って消えていった。自分ではツンデレとは認めたくないんだけれど…。

本当は、啓太の事が大・大・大好きで、すごーくヤキモチ焼き。それが素直に上手く言葉に出せないでいる。それなのに、啓太は うさぎの心の言葉や気持ちを分かってくれて、何も言わずに代弁してくれる。


『私…ツンデレですか?』

自分に問いかけながら髪を整え、少し酔っ払い顔のメイク直しも、うっすら整えて『ん♪こんなモンで良いかな?』と、鏡の前で小さく頷き、いつもの待ち合わせ場所に向かって行った。


その時ケイ様は、先輩や同僚にソッと

「お疲れ様です。お先に失礼します。」

と、挨拶をし終えてから啓太も軽く身支度をしていた。


「お!お疲れ!月チャンによろしくな!」

と、中田くん。

「ヤなこった。お前は月チャン言うーな!」


啓太も、うさぎの事が大好きだ。心から愛している。


…………………………………………


高校入学当時、うさぎの髪はロングヘアーだった。ポニーテールが余裕で作れる程の。


それはそれで、男子から人気があり、啓太も『可愛い子やなぁ。なんでこんな子が就職高校に来てるんやろ?』と思って見てはいた。が、それまでの感情だった。


入学してから一年が過ぎた。うさぎは常に成績トップだった。益々この学校に入学した理由が分からなかったけれど、高二の夏に、何となく理由が分かりだした。


うさぎ は家庭の事情で アルバイトを始めた。そう!進学する気がなかった(?)、就職率の高い この学校に入学してきたのだった。

うさぎの家庭は裕福では無かったので、大学進学は考えられなかったのだ。


バイトを始めて長い髪が邪魔になった。だから、何の躊躇もなく、突然、ロングからショートにバッサリ髪を切って登校してきた。


クラス全員の反応は大きかった。『失恋したの?』と何人にも聞かれた。それを聞かれる度に、うさぎは笑って

「違う違う(笑)暑かったから切っただけ(笑)」と答えている。


そのショートの髪の月野うさぎを見て、啓太は座っていた中田の机から落ちそうになった。『ドン!』心臓を何かに撃ち抜かれた!その衝撃は凄かった!《ど》ストライク!と言うヤツだ。

『か、可愛い。めっっちゃタイプ…。』


その後は、うさぎの事が気になって気になって仕方がなかった。

そして、うさぎの行動、性格、笑った顔、怒った顔、真剣な顔、ボーッとした顔、色~んな月野うさぎを見つめ続けて、大好きになっていた。『ヤバい…このままやったらヤバい奴や。ヤバい奴になりそうな気がする…』

だから、告白せずには いられなかった。


告白された数は 数知れず。のケイ様。

校内にはケイ様ファンクラブも、いつの間にか存在していた。

初めて好きになって、初めて自分から告白する竹田啓太は、ある程度『即!OK!』の自信があった。


そして、最初のジャブ程度の告白をしてみた

「オレ、お前のこと好きやねん。付き合ってくれよ。」

と、廊下で通りすがりに自信ありげに月野うさぎを呼び止めて言ってみたのだった。


その時の うさぎの態度は

「え?も~ビックリするや~ん。またまた竹田は何を言ってんのやら~ハハハ~」

と、笑顔で答える。特に気にも止めない態度で、一瞬だけ止めた歩みだったが、すぐに引き続き歩いて行ってしまった。スルーされたのだ。


この位の声かけなら、うさぎには、よく有る事だったので、いつもの皆の冗談だと思っていたのだ。いつも冗談と思ってしまう所が、鈍感 月野うさぎ。


冗談混じりにでも勇気を出して言ってみる男子諸君は、皆、気の毒だ。鈍感 月チャンに本気にされず、軽くスルーされているのだから。


その現場をいつも近くで、はーちゃんはハラハラしながら見ていた。

「月チャン?今のは告白してくれたんちゃうかなぁ~?」

うさぎに駆けよって小声で話しかけてみる。

「え?あれはいつもの冗談でしょー?(笑)皆、私の事からかってるんやろ?(笑)もし本気やったら、もう一回 言いに来てくれるんちゃう?誰も そんな事 言いにけーへんから本気ちゃうよ(笑)」

まったく悪気のない笑顔で はーちゃんに応える月チャン。


はーちゃん『あ~あ~。月チャン。男子の気持ちわかってあげて~。』と、スルーされた啓太をチラッと肩越しに振り向いて、同情していた。


自信があった啓太も大ショックを受けた。

一週間食事が喉を通らない日々が続き体重2kg近く減った。

見かねた悪友中田が『もう一回ちゃんと言ってみろ。ダメだったらスッパリ諦めろ』とアドバイスをした。


今度は、キチンと告白して、こっちの真剣な気持ちを打ち明ければ付き合ってくれるだろう。と、うさぎが帰る時間に呼び出して、告白してみた。


が、しかし うさぎからの答えは

「え?…え!?あれ本気やったの!?…ごめん。本気にしてなくて…ごめん。少し考えさせてくれる?ごめんな。」

ビックリした月チャンは、そのまま走り去って行った。

しばらく放心状態・・・途方にくれる啓太。


返事を貰えるまで、またもや食事が喉を通らない。

片思いってこんなにツラい?告白なんて二度としたくない。しなければよかった。とさえ思った。


そんな恋わずらいの苦しみのせいで、啓太の体重が二週間で 3キロ減った頃に、うさぎから『じゃあ付き合ってみます??』の返事を頂いたのだった。


うさぎからしてみれば、啓太の存在は 全然、全くの無関心中の《只の》クラスメートだったのだから。

女子から人気があるなんて、全然全然まったく知らなかった。無関心にも程があるのかも知れない。


はーちゃんからも

「竹田君、優しそうやから良いンちゃう~?めっちゃイケメンやし」

と、押してくれているけれど

「そお?私一回もイケメンと思ったことなかった。ははは」

自分のタイプじゃない男子だから、そう考えてしまうのも仕方がない。


そんな《只の》クラスメートから突然告白されても、すぐに返事が見つからなかった。それでも悪い人ではなさそうだし、少し距離が近くなれば、どんな人なのかが分かるかも…。と思って、お試し期間。と言う感じで、お付き合いを始めたのだった。


うさぎは、気が合わなければ、長くは付き合わないようにしよう。と言うことも頭にあった。


でも付き合いだしてみると、自然と気が合っていく。うさぎのことを大事にしてくれる。その事が凄く伝わってきた。うさぎもその気持ちに応えたくなった。と言うのが、本心だった。


ただ…ケイ様は、おモテになる。

だから、ついつい天狗になってしまう時もあった。


他の女子が、ケイ様の事を好きになるのは仕方ないとして。それを真に受けて啓太が調子に乗っている姿をみて、ヤキモチを焼いている うさぎを見て喜んだりしていた。


うさぎは、啓太の その態度が不満だった。そして、ある日爆発した。

「イケメン、イケメン。って、啓太の何処がかっこいいのか私には分かれへんのやけど!」

うさぎは困った顔で啓太に話続けた。

「皆は、啓太の事かっこいいと思ってるかも知れんけど、私は啓太の外見なんてタイプじゃない!・・・啓太の見た目なんて なんとも思ってないんやで・・・見た目で付き合ってる訳じゃないんやから!」

と、啓太に言い放った。


それを聞いた瞬間、啓太は胸の奥が熱くなり、思わず うさぎを抱きしめた。

「ちょ、ちょっと!こっちは怒ってるんですけど〰️!?」

思い上がっていた自分が恥ずかしくなった。うさぎが本当の自分を中身を見て付き合ってくれていることに気づいたからだ。怒られているのに、嬉しくてたまらなかった。


『一目惚れから始まる恋もあるけど、うさぎは違うんや。オレ、いつもいつも皆から外見しか見てもらってなかった。うさぎは違うんや。そんな事言ってくれるヤツ初めてや。』


思いが膨らんで、ますます好きになっていった。


…………………………………………


そんな事を思いだしながら、帰り支度をしていたら、今すぐうさぎに会いたくなって、うさぎが待つ地下駐車場まで走っていった。

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