場面1*ケイ様の事情
ブーン。ブーン。
マナーモードにしている彼のスマートフォンにメールが入った。
「お♪俺も そろそろメールしようと思ってたトコ♪」
フフーン♪と、彼の整った目尻が下がり口元が小さく微笑んで、いま来たメールにササッと返事を送りスマートに仕事に戻った。
そのうち仕事が忙しくなり、 メールに返信してから3時間も経過している事に気がついた。
『うわっ!!』スマートに仕事をこなしていた彼は落ち着きをなくし焦った様子で、同僚に
「ちょ、ちょっと外すけど、す、すぐに戻ってくるから!!」
かなり焦った様子。
「おう!了解!気をつけろよ!」
と、同僚の中田。
ガッシリとした体格で、肌は浅黒く日に焼けた男が、白い歯をニヤリと見せて送り出してくれた。
『あいつー!面白がってンなー!』
同僚の中田は、高校からの親友?いや、悪友だ。
その悪友中田の態度に、不満を募らせながら目的の場所に急いで向かった。
ふと、持っていたスマホにもう一度目をやると、1時間前にメールが入っていた。
「やべ!やっぱ遅刻!!」
と、早歩きになった。
メールの相手は、時間に口やかましい相手ではないのは解っている。でも、彼自身相手を待たせるのが嫌だった。
スマホに気をとられ焦ったせいか、無意識に近道を通ってしまった。いつもと違う通路を歩いてしまったのだ。
「あ♪」
女性達の目が、一同に彼の姿を追う。
『しまった!』彼の早歩きが小走りになった。
「ケイ様♪??」「え!?ケイ様♥️」「どこ!?」女性たちが『信じられない』と言う気持ちで、女友達同士手を取り合って喜んでいる。口々に呼ばれる自分の名前。小走りから駆け足になった。
何処をどう走ったのか、人目を避けつつ目的の場所には確実に向かって走っている。
少し角の死角になっている場所から、辺りをキョロキョロと伺いながら、進むべき場所への進路を考えている。ケイ様の脳裏に、ニヤリと笑って送り出した同僚中田の顔が浮かんだ。無性に腹が立ってきた。
『中田め~!』
中田が悪いわけでは無いのに、あのニヤリと送り出した中田のせいにしたくなった。
『あ!見つけた!!』
目的の店の窓の外から見慣れた三人の顔がみえた。
目的地を見つけた彼は、今日一番の走りをみせた。
だだだだだぁー!