Ⅰ
HAブレイダー 第1話
ヴォグルの襲撃から3年後 森の中
「もう! なんであたしがこんな森の中に一人で行かなきゃならないのよ!」
ブツブツとボヤキながら森の中を歩く杖を持った金髪のポニーテールの少女がいた その少女の名はミーナ・エルテス
「仕事だから仕方なく来てるのにもしヴォグルが出たらあたしだけじゃ倒せないっての…」
彼女は仕事である会社の武器を受け取りに行く最中だった。が、誰か付き添い人がいるのかと思ったが 生憎一人が怪我をしていて これは無理だと判断した彼女の会社は、彼女一人で行かせる事にしたのだ。
どうせならせめて変わりくらい用意しとけよとボヤキながら歩くと 近くからガサガサと草が揺れる音がした
「えっ? ちょっと、なんなの?」
ミーナは驚いた様子で少し後ろに下がり、構えをとっている
その時、草から人が出てきた
少し黄銅色が混じったような金髪のロングヘアーで顔は無精髭を生やしていたが顔つきからすれば少年のようだった。
背中に古びたソードを装備して 鋭い目つきでこちらを睨んでいる
「あなた…誰?」
ミーナが少年に名前を聞く
「カズアキ…カズアキ・ミシマ」
「あたし、ミーナ・エルテス よろしくねカズアキ。ところで此処で何してるの?」
互いの自己紹介が済んだ所でミーナがカズアキに
「何してるって…別に。食料調達しに来ただけだけど。そっちは?」
「あたし? あたしはこの森で人を迎えに来たの」
「人を…迎えに…?」
「そう 仕事で」
その時、森の奥から人の悲鳴らしきものが聞こえた。
「今の悲鳴、森の奥から⁉︎」
そこに一人の男がユニコーンのヴォグルに襲われていた
男は手に何かを持っていたる状態だった
「あれは…母さんを殺した奴…」
「え?」
小声で呟いたため、ミーナはカズアキが何を言ったのか読み取れなかった
「あの白い服装にシルバーのバッジ…ってあれ、ガルドラス社の人じゃん!」
「ガルドラス社?」
聞き慣れのない名前にカズアキの頭にクエスチョンマークが出た
ガルドラス社が分からないカズアキのためにミーナが簡潔に説明する
ガルドラス社というのは武器を専門に扱っている大規模の会社である。
そのため、多くの討伐専門社がガルドラス社の武器を輸入している。
本来社員と待ち合わせの場所で渡すのではなく、輸送トラックなどでその討伐専門社へ送るのが通常のやり方である。
しかし、輸送トラックの台数が不足していたり 輸送トラックでは行けれない所もあったりすると邪魔になるだけという事もあるため事前に待ち合わせ場所を決めて後日その場所へ受け取るというのもある。
「とりあえず助けに行こう!」
二人が救出に向かう。
「うわあああ! やめてくれ!」
ユニコーンヴォグルの自慢なツノを突き刺そうとした所へカズアキのソードが炸裂し、その傷跡からユニコーンヴォグルの体内の蒼い液体が出た。
そこにミーナが杖から火の玉を出して追い打ちをかける。 炎属性の呪文である「フレア」である
「今よ!」
「おう!」
ヴォグルユニコーンは、ミーナのフレアとカズアキの攻撃で見事にヴォグルを撃退した。
「あ、ありがとうございます! おかげで助かりました! それにしてもあなた達ってあのジェネクスの社員ですか?」
二人の見事な連携プレーを見たガルドラス社員は二人に感謝し、二人に所属を尋ねた。
「あたしはそうですけど、この人はちょっと違うんですよ たまたまこの森で会っただけで…」
「いや、それでも凄いですよ! 会ったばかりであの連携 やろうと思っても出来ないですからね!」
興奮気味に話し続ける社員を宥め武器を受け取ったミーナは、ガルドラス社員と別れ、カズアキをジェネクスへと連れて行った
「そうだ、丁度目的を達成したしウチの会社に寄って行かない?」
「会社って…さっきの人が言ってた会社か?」
カズアキがミーナに問うとミーナは「そうだよ」と答えた
ジェネクス モンスター討伐専門社の大手企業である
主な仕事内容は、モンスター討伐を専門とするブレイダーと、そのブレイダーの武器を仕上げたり、強化したりするチューナーの2つの種類がある。
ジェネクスの代表者であるハルヴァート・エルテス つまりミーナはそのハルヴァートの娘であり、ジェネクス所属のブレイダーの一人であった。
「ここがウチの会社 ジェネクスだよ」
数十分間かけてジェネクスに着いた二人 カズアキはあまりの大きさに少し驚いた様子だった。
「お前の会社、凄いな」
「そりゃウチは大手企業の一つだからね 大きいのは当然だよ」
二人は入り口の近くにあるエレベーターで最上階まで登る
二度ノックし、中から「入れ」と声が聞こえ二人は社長室に入る
「親父〜、ガルドラス社からのお届け物だよ」
「テメェ、武器受け取るだけにどんだけ時間かかってんだ」
「しょうがないでしょ、色々あったんだから。」
「まあいい。所でそいつは?」
ハルヴァートはミーナの側にいたカズアキに目を向き、ミーナに問う
「この人は偶然森で知り会ったから連れて来た。名前はカズアキ」
「カズアキ?」
聞き覚えのある名前だったのか、ハルヴァートは少し考えた。
「お前…あの時の…」
「どうしたの親父?」
「ミーナ、今からコイツと大事な話があるからお前は外で待ってろ」
カズアキを見たハルヴァートは何か感じたのか、ミーナを外に追い出し社長室は二人だけになった。
「あの時は本当にすまなかった。」
ハルヴァートはカズアキに謝罪した
内容は、3年前のヴォグルの襲撃の事で、あの時アイナと一緒に戦っていれば、アイナを戦わせずカズアキと一緒に連れて行っていればアイナを死なせることはなかった。
ハルヴァートはそう後悔していた。
「気にしなくていいよ アンタは母さんを止めようとしてくれた けど母さんは俺を守ろうとして死んだ 別にアンタが悪かったってわけじゃない。もし俺が戦えたら…」
ハルヴァートのせいではない 自分に戦える勇気があれば 力があればアイナを死なせずにヴォグルを倒せた
カズアキは己の力の無さを悔やんだ。
「お前、ウチに入らないか?」
ハルヴァートはカズアキに ジェネクスへの入団を勧めた。
「ウチはヴォグルの討伐を専門としている。 討伐を専門 つまり、実力さえあれば試験に合格出来るという事だ ちなみに武器は装備してる武器を教えてくれれば、その種類の武器を支給する」
「その試験はいつなんだ?」
「丁度明日から行う事になっている 」
「明日か……分かった その試験受けさせてくれ」
少し考えた結果 カズアキはジェネクスの入団試験を受ける事にした
「分かった、それじゃ8時にロビーへ集合してくれ」
社長室から出てきたカズアキにミーナが声をかける
「明日の試験 受けるみたいだね」
明日の試験の事についてカズアキに聞いた カズアキが試験を受ける事を知っているという事は 恐らく盗み聞きしたらしい
「そうだけど?」
「ここの試験はかなりハイレベルで厳しいよ あたしもギリギリで合格したぐらいだから」
先程のヴォグルをカズアキと一緒とはいえ討伐したミーナでもギリギリで合格出来た程のハイレベルである試験
「そうか…けど、それでも俺は合格してみせる だって俺は、死んだ母さんが何のため戦って来たのか、何を守るために死んでいったのか 俺はそれが知りたいんだ」
カズアキの決意を聞いたミーナは微笑むと「そっか」と一言言って指定された部屋へカズアキを案内していった。
部屋まで案内するとカズアキは明日の試験に備えて部屋へ向かう
入る前にミーナはカズアキに「明日の試験、頑張ってね」とエールを送り仕事に戻った
「ありがとう」
カズアキもミーナにお礼を言って部屋に入り 明日の試験に備えて準備をするのであった
To Be Continued