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幻視幻影  作者: 矢島誠二
5/12

阿鼻叫喚

 翌朝、僕はいつも通り家を出て学校に向かう。

「今日は楽だな――」

 昨日学校に行った葉月だが、今日は疲れたのか家で留守番をしている。家では、母さんが面倒をみるらしい。

――だから、昨日みたいに重い車イスを押して歩いたり、トイレに行かせたりする必要もない。イヤ―――『介護って大変だったんだな』ってつくづく思う。

「おはよう、カズ!」

「蓮華・・・・・・おはよう」

 登校中に蓮華と出会った。彼女と一緒にいるとロクなことにならないのは気のせいだろうか?

「今日はやけに元気がいいわね。何かあったの?」

「・・・・・・別に。むしろ、何もないから嬉しいんだ」

「変な理由で喜んでいるのね」

「そうか?フフッ」

 僕にとって楽なのは、何も変わらない生活だ。それが一番安らぐ。だって、同じことを繰り返しているだけだったら、頭を使わなくて済むもの

 などと思っていると、朝の平穏をかき消すように、警察の車が大音量でやって来る。

――ご町内の皆様“母さん助けて詐欺”にご注意ください!――

 街宣車や選挙カーに勝る大音量で危険性を訴えている。何だ?“母さん助けて詐欺”って?

「振り込め詐欺の新しい名称よ。前は、オレオレ詐欺だっけ?よく変わるわ――」

「犯人が方法を変えたら意味ないと思うけど。それに、よく確認すれば息子だって分かるのでは?」

「じゃあカズは、騙されない?」

「ああ、大丈夫だ」

「・・・・・・」

 蓮華は、少し考えて僕の顔を見ながら、クスッと笑う。

「そう言っている人間ほど騙されるのよ」

「まあ、そうかもしれん――」

 人間は焦っている時ほど冷静な判断ができないと、前に母さんがしゃべっていた。

「それより、いいの?この道で?」

「?・・・・・・どういう意味だ」

 何か忘れている・・・・・・思い出した瞬間、蒼ざめた。心臓の鼓動が早なる。

「お返しだああああ!」

 突然、横から2日前に倒した不良が出てくる。手には金属バット。

――――ッツ

 蓮華が事前に教えてくれたおかげで、何とか寸前に回避する。・・・・・・っていうか、知っていてわざと教えたんだろう!

――ガスッ――

 隙をついて不良の股間に蹴りを入れる。不良悶絶。その時、思いっきり手を引っ張られた。

「カズ、走りましょう!」

「ああ」

 蓮華に手を引かれて、急いで学校へ向かう。まったく、蓮華といるとロクなめに合わない。校門につくと蓮華から離れて、やや足早に教室へ向かった。


「・・・・・・?」

 教室の雰囲気がいつもと違う。

「美雪様が今日も休みだなんて」「何かあったのかしら?」

 どうやら、美雪は今日も休みのようだ。風邪かな・・・・・・?それとも、インフルエンザ?などと考えていると、ヒソヒソ話がとんでもない方向に進んでいる。

「昨日、葦原君といっしょに、見たっていう人がいるけど・・・・・・」「葦原、昨日早退したから・・・・・・」「美雪様と休んでデート?」

 おいおいおいおい。違うって、それ美雪じゃない。葉月だ。一緒にいたところを見られていたのか・・・・・・

「おいおい、そんなにゆうなら本人に聞いてみたらどうだ」

 慌てて、教室で僕のうわさ話をしていた女子グループに声をかける。彼女たちは、僕を見るなり机を5センチ後ろに下げた。

「葦原君、いったいに美雪様に何したのよ!」

「だから、本人に聞けばいいじゃないか?だれか瀬川の携帯にかけたらいいだろう」

「・・・・・・」

 女子グループは、互いに顔を見合わせて、黙ってしまった。

「ひょっとして、誰も瀬川の携帯電話の番号を知らないのか?」

「だって、話したことないし」「美雪様は、あまりに恐れ多いんで」「番号教えてって言いにくいオーラを放っているのよ」

 意外だった。美雪の番号を誰も知らないなんて・・・・・・

「じゃあ、知っている人はいないのか?」

「・・・・・・・・・・・・鹿目さん・・・・・・かな?」

「じゃあ、蓮華に聞いてみたらどうだ」

「!!!」

 何やら、女子グループがビックリした表情で、こちらを見つめる。

「鹿目さんを下の名前で呼ぶなんて・・・・・・」「二股かけてるの?」「サイテー」

「ああ、もういい!後で聞いてくる!」

 僕は怒って、自分の机に戻る。

(美雪に心を許せる人って蓮華だけなのかな)

 そう考えながら、授業が終わるのを待った。



「携帯の番号なら知ってるよ。でも滅多にかけることないわ。いつも会っているし・・・・・・でも、なんでそんなこと?」

「エッ・・・・・・いや――じつは」

 僕は今朝、女子グループとの会話の内容について大まかに話す。

「じゃあ、その人たちに教えておくから。でもねカズ、女子の携帯の番号を知るのは禁則事項よ。特に美雪は慕われているからなおさらね」

「まあ、何か用件があるわけでないから・・・・・・ただ・・・・・・その――なんとなく心配で・・・・・」

 蓮華は僕の言葉にうなずくが、教室に耳を傾けても、美雪が休んだことは話題になっていた。

「みんな心配しているわ。美雪が無断で休んだ事について、ワタシも何度か聞かれたから・・・・・・」

「そんなに、大事だったのか!でも、なぜ、みんな電話番号すら知らない?」

「私が思うに、美雪は自分の事柄について何も話さないから、立派に視えるだけかもしれない」

 意味がどうもわからないので、蓮華に尋ねる。

「カズ、人間って言うのはね。謎に包まれた・・・・・・訳の分からない人物に出会うと自分の理想でそれを塗りつぶしてしまうのよ」

「抽象的でよく分からないや」

「そうね。例えば、北朝鮮は謎に包まれた国だったから、勝手に地上の楽園だとみんな思った。新撰組の沖田総司は顔がよくわかってないのに美男子だと思ってしまった。アニメや漫画に出てくる勇者やお姫様は、実在の人物よりも美しく描かれていることが多いのも、みんな虚像のせい・・・・・」

「つまり、瀬川さんの人気が高いのは、その虚像のせいだっていうのか?」

「そういう一面もあるかもしれないわ。ごめんね、美雪の悪口みたいで」

 蓮華も美雪を神聖視しているものとばかり思っていたので、今の発言を聞いて正直、驚く。

「いや、瀬川さんも人間だから完璧じゃないのはわかる。でも、それを差し引いたって瀬川さんはすごいよ」

「すごい・・・・・か。そうね。私に比べたら美雪の方が優秀よね。成績も。容姿も。人格も・・・・・・」

 顔が少し引きつったように見えたが、美雪をほめて蓮華が怒るわけがない。

「でも、美雪はそれに苦しんでいる。だから、電話番号も教えてあげるわ。美雪が、もっとつながりを持つことができれば、変な神格化もなくなるから」

「でも僕には、番号を教えないのかよ」

「そうね、カズだったらつながりすぎるわ・・・・・・」

 蓮華は少し笑っていた。



 蓮華から女子グループ宛ての電話番号が入った封筒をもらう。メールか携帯で女子グループに直接伝えたらと思うが、「それじゃあ、カズと女子グループの誤解がとけないじゃない」と蓮華に言われたのでしょうがなく受け取った。

 女子グループに、声をかけて手紙を渡す。最初は、ラブレターとでも勘違いしたのかびっくりした表情だったが、蓮華からの手紙だと知ると、あっさり元のすまし顔になった。

 さっそく、女子グループの1人が、はやる気持ち抑えてをその番号にかけてみた。

「トゥルルルルル・・・・・・トゥルルルルル・・・・・・トゥルルルルル・・・・・・」

コール音が何回も続いている・・・・・・?・・・・・・変だな?

「ねえ葦原君、アンタ、本当にこれ美雪様の番号なの?つながらないけど?」

 女子グループの1人がイライラした口調で僕に問いかける。ダマされた顔つきで他の女子グループが僕を見つめる。

「違う番号だったら、コール音がしないだろ!きっと、電源が入っていないか、圏外のいずれかなんだろう」

「でも、それだったら自動的に音声案内に切り替わるけど?」

「・・・・・・」

 確かにそうだ。でも、つながるからには実在の電話番号なのだろうし、休んでる美雪にとって通話はひと苦労なのかも知れない。

「もうすぐ自動的に留守電に切り替わるからその時にメッセージを残せばいいさ。そもそも、休んでいる相手は気軽に出られないだろう」

 そう女子にいうと、ショゲタ顔をして彼女は電話を切ろうとした。その時――


「助けて!!誰か!!」

 電話から悲鳴が聞こえてきた。受話器にない僕の耳でも聞こえるからかなりの大音量だ。その叫び声に、電話につながった女子はどう反応していいか分からず、呆然とする。

「どうしたの!瀬川さん!」

そばにいた女子がつながった携帯を奪い取り、必死になって叫んだ。

「エッ、ナニ?オンガクシツ?」

 女子はそう復唱した。何を本人が言っているのか聞き取れないらしい。

「待ってて、すぐ行くから・・・・・・アッ、通話が切られた」

 女子グループは、半分パニック状態で一心不乱に音楽室へ向かう。僕も後からついて行き。グループの1人は震える手で警察に電話しているようだ。手際がいい。

 階段を駆け下りて音楽室へ向かう。音楽室は生物室と同じ別棟の2階だ。

「ちょっと、気をつけなさいよ!」

女子グループの1人と軽くぶつかった蓮華に、僕は声をかけた。

「美雪の身に何かあったらしい!これから音楽室に行くところ」

「ちょっと、どういう意味?」

 あわてて蓮華が僕の後についてくる。すでに女子グループは音楽室へ入っていたので、すぐ蓮華と音楽室に入り込む。防音のためかやや重い音楽室の扉を開くが

「誰もいない――――」

 音楽室には、女子グループと僕たち以外にいない。今日の授業はないし、部活は例の猟奇事件で休止している。

「ここでは・・・・・・ないかな?」

 イタズラにしては叫びが真にせまっていたが、音楽室と聞こえたらしいから、ここで間違いないはずなのだが・・・・・・

「ねえ、あそこに携帯電話があるわ。あれって美雪が使っているのと同じ機種――」

 蓮華が足元を指差した。確かに非常階段のドアの前に携帯電話が落ちている。恐る恐るドアをゆっくりとあけて、非常階段をのぞき込む。この階段は校舎の裏側につながっている。そこにたたずむ、普段はあまり人目につかない校舎裏の倉庫に何か不気味な異様さを感じてしまった。

――カンカンカン――タッタッタッ――

 速足で階段を駆け下りる。後ろには蓮華が付いてきた。女子グループは、まだ音楽室を探しているようだ。倉庫が視界に入った時、蓮華が震えるような声で言った。

「あれ・・・・・・ちょっと!血?」

 倉庫の入り口から血が滲みだしている。急いで開けようとするが、どうも中から鍵がかかっているらしい。押しても引っ張っても開かない。

「カズ、下がって!ハアアアアアアア――――――」

 蓮華が、倉庫の裏側に置いてあった工具用のバールを使って、おもいっきりに叩きつけ、鍵を壊そうとした。

――バキッ!バキッ!――と音をたてて鍵が壊れるが、扉が変形したせいで逆に開きにくくなった。

「蓮華、僕に貸して!!」

 蓮華からバールを取り上げた僕は、それをドアと壁の隙間に入り込ませる。そして、心拍をめいっぱいまで上げ、腕のリミットをはずし、瞬間的に自分の体重と腕の筋力を使って思いっきり力をこめた。バールがねじ曲がる。

――バンッ!!――

爆音をたててドアが開いた。急いでリミットを解除するが体勢を立て直すのがうまく行かず地面に転ぶ。力を入れたわりには、腕は痛くないが脳や心臓に激痛がするが、それをこらえて起き上がった。さっきの爆音に反応したのか女子グループも音楽室から倉庫にやって来た。

 蓮華と一緒にドアから奥をのぞき込むが、部屋は真っ暗で何も見えない。手探りでドアの横にある照明のスイッチを押す。

 その瞬間――

「!!!!―――――――」

 高い声で聞き取れないくらいの悲鳴が聞こえた。

――――腕だ!!――

 片腕がそこに転がっていた。そして手のひらには鍵が置かれている。

 何をすればいいのか分からずその腕を凝視していると、蓮華が

「見て、血が・・・・・・」

 見ると血の跡が、本棚の奥まで続いている。本棚の奥に犯人が潜んでいるかもしれない。バールを握り閉めて、恐る恐る前へ進む。

 本棚の裏側を見る。嫌な予感は的中した。

「!!!!!!!!」

 僕は絶句する。

「美雪――そんな・・・・・・う、そ、でしょ」

 蓮華は顔を蒼ざめる。

 そこには、首のないバラバラ死体があった。



「君が殺したのかい?」

「・・・・・・」

 あの死体を見た直後、蓮華は口を手でおおってトイレに駆け込み、僕は電話でもう一度警察に通報した。女子グループが先に通報したせいか、警察は早く来てくれたのだ。しかし、叫び声を聞いてから、10分は経っていると思う。学校中は死体で大騒ぎになり、下校命令が全員に出たのだが、僕と蓮華は家に戻れず、通報した数名の女子グループと一緒に警察へ行って、個別に事情聴取を受ける事になった。

「意味がわかりませんが?」

「君が殺したのかと聞いているのさ」

 刑事は少し僕をにらんだ。少々小太りながら、やや重い声で話す刑事は、威圧感があり、自白をうながそうとする意図がまるわかりだ。

「私は、殺してませんよ。何を根拠に僕だと?」

 無表情でそう答える。以前にも取り調べを受けた時があったので、その時と同じ表情をした。

「フーン――――。いや、第一発見者を疑うのは当然の事じゃないか」

 刑事は僕の目をじっと見てうなずく。些細な感情を読み取ろうとしているようだ。僕は正直に今までに起こった事件のあらましを話す。

「瀬川さんの悲鳴を電話ごしに聞いて、最初に音楽室へ駆けつけました。しかし、誰もいなくて蓮華――鹿目さんが非常階段に続くドアの手前で、携帯電話を発見したんです。そこを降りたら、倉庫のドアの前が血まみれで、中にバラバラの死体が――――」

 淡々と話したのだが、刑事は話を聞き終える間もなく、僕に向かってこう切り出す。

「普通の人間はたとえ殺してなくても『殺したのか?』と言う質問に対して動揺する。だが、君にはそれがない・・・・・・おそらくは・・・・・・感情をひた隠しにしている」

 僕は、ツバを少し飲んでから「つまり、私が殺したとでも?」と刑事に喰ってかかる。やはり、あらぬ嫌疑をかけられているらしい。

「私には、電話ごしに悲鳴を聞いたアリバイがあります。他の生徒も証言している。何の問題もないでしょう」

「確かにそうだ。電話口から悲鳴が聞こえたことは、多くの生徒が証言している」

「だったら何も問題は・・・・・・」

「だがな!」 刑事は大声を出して僕をにらみつけた。

「死亡推定時刻が合わないのだよ。死んでから少なくとも2日以上経っている」

 一瞬驚くが、自分の神経をコントロールしてそれを顔に出さないように頑張った。

「驚かないようだね。君は相当、人が死ぬのになれているんじゃないのかい?」

「・・・・・・」僕の無言をいい事に刑事は演説のようにまくしたてる。

「さらに、だ。バラバラにされていた遺体だが、首と両腕、両足の計5つに分けられていた。しかし、そのうち首と片方の腕が見つかっていない。だから、鍵を持っていた片腕の指紋から美雪と判断したのだよ」

 刑事は突然、演説をやめる。そして、僕の耳元で語りかけるように話す。

「おかしなことに、『昨日美雪を見かけた』と証言している生徒がいるんだよ。もっとも名前は明かせないが・・・・・・おかしなことだね。幽霊を見たわけでもないのに・・・・・・」

「――――」

 葉月だ。昨日見かけた美雪・・・・・・間違いない・・・・・・

「ひょっとしたら、死体や君のアリバイに偽装があると思ったのだよ。おや?さっきから、口が少し空いているようだね。何か心あたりがあるのかい?」

「・・・・・・いいえ、何も」

 葉月がここに来てからすぐ美雪が死んだ。偶然とは思えない。しかし葉月は手足がないから殺人は・・・・・・できないから、いったい誰が?

「以前君は、事情聴取を受けていたじゃないか?あの時、父の死に対して君は何の感情もいだかなかったのかね?」

「・・・・・・いいえ、何も」

 発狂した父に何の悲しみもいだくわけがない。むしろ、母さんが帰ってくることを願った。あの頃の僕はその希望に未来を託した。そして今、母さんが帰って来た。だから、僕は・・・・・・

「うれしいのではないのかね。父が死んだことは?」

「そんなわけありません!」

 うれしい、そうだとも。だが、そんなこと言い出せるはずがない。反射的に声は少し大きくなる。

「そうか、過去の出来事を詮索してすまなかったよ。そうだ、何か質問することはあるかね?」

「・・・・・・いいえ、何も」

  あんまりいうと、過去のことについて、根ほり葉ほり聞かされるのではないだろうか。そう思って話を打ち切ろうとしたが、刑事はなにか思い出しのか、人差し指をたてて

「ああ、キミに聞きたいことがある。倉庫のドアの鍵は最初から閉まっていたのかね?」

「?はい、そうですが」

「そうか、キミと一緒に入った同級生も同じ証言をしているよ。もし共謀していないならキミは犯人ではないね」

 刑事は頭を掻きながら笑うが僕にはその意図が分からない。

「どういうことですか?」


――密室殺人――


 刑事が言うには、遺体の片腕の手のひらに、倉庫の鍵があった。ドアは内側からロックできるが、外側からはあの鍵でしかロックできない。少し前までただの南京錠だったが、ホームレスが寝床にするために鍵を壊したことがあって、頑丈で壊れにくい新型に変えたという、どうりで蓮華のバール攻撃でも壊れなかったせいだ。

「じゃあ、犯人は合鍵か複製を使って・・・・・・」

「複製の難しい鍵だ。取り換えたのもつい最近の事。おまけに合鍵は職員室に厳重に保管されていた。だからあの部屋には、誰も入れない」

 刑事は僕をチラチラ見ながら、部屋をうろつく。

「なんで犯人は、密室にしたのだろうね?」

 そして、事情聴取は終わった。



 殺さずにすんだ。そう自分に言い聞かせることができるほど、見事に成功した。

「でも、これで半分。これからが本番ね」

 切り取った彼女の首に言い聞かせると顔が引きつった。どうやら喜んでいるみたい。

 私の技術では、もってあと2日。警察の取り調べは、何とか泣いて誤魔化した。アリバイも訴えたけれど、あの様子だとまだ疑うと見て間違いない。

 誤算だったのは―――いったい誰だろう、通報をした人物は・・・・・・

 少し考えると結論がすぐに出た。何のことはない、もう一人のアイツが電話したのだ。そして、電話をさせるよう誘導したのは・・・・・・

・・・・・・!

 思考が止まり、恐怖が襲いかかる。いったいどこまで、気づいているのか?

「早く手を打たないといけないかも・・・・・・」

 早くしなければならない。早く元どおりにしなければならない。そう、すべての関係に元に戻すために

 そう言い聞かせて、ワタシは彼女の首を優しくなでる。


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