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幻視幻影  作者: 矢島誠二
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序章開演

 いつまでも一緒だと少女は思った。

「お姉ちゃん、私がいつもいて嫌いにならない?」

 そう語りかける。隣にいた姉さんは、首を曲げながら片手を少女の頬にあててささやいた。

「安心して、私はあなたのことが嫌いになった事なんて一度もないわ」

 姉さんの言葉に妹は安心し、片手と片足を使って抱きしめた。

「じゃあ、お姉ちゃんはカラダが分かれても、私の事は好き?」

「あたりまえじゃないの・・・・・・あなたはもしかして私がうっとうしいから、カラダを分けようって思ったの」

 見つめあう二人の顔は、極端に近く。相手の息づかいでさえ聞こえてしまう距離にいる。

「ねえ、私たちはこれから大人になって社会に出て行かなきゃならないの。あなただって恋人を見つけたり、自由な時間がほしいでしょ」

 姉さんの言葉に妹はうなずく。でも何故か妹は、自分が見捨てられてしまうのではないかと感じた。

この手術をすれば自由な体が手に入る。両親も障害のない生活をおくれるのを何よりも望んだ。

 姉さんは、手で私の髪をすくうように頭にからませる。

 カラダはたとえ2つに分けられても――

――心は一緒だよ――

 それは、分離手術が行われる。2日前の出来事。



 今日も夢は見られないなあ。

 月明かりに照らされながら、僕は部屋を真っ暗にして自宅から天体観測をしている。最初は宿題をやっていたのだが、それも終わってしまい、ただボーっとする。

――眠るってどういうことなのだろう?――

 眠ったままの状態では、意識がないという。それは、死んでしまっているのと同じではないだろうか?

 それなのに、人は眠ることをひたすら求める。もし、眠ったまま、永遠に目覚めなかったらどうするのだろうか?眠ることは怖くないのか?疑問は尽きない。

 僕の出した結論は、人間は夢を見たいがために、ひたすら眠ることを求めるのではないか?

 そうなると気になる・・・・・・夢を見てみたい。

 ルルルル――♪

静寂を破るように、電話が鳴り響いた。着信を見る。母さんだ。

「あ、母さん」

 常識的に見て深夜に電話を掛ける人間はいない。しかし、僕こと葦原和彦の場合は事情が違う。

「和彦、いま死んでいた?」

「死んでないよ!母さん」

「フフッ、元気そうね。喜んで、久しぶりに家へ帰るから」

 母さんが帰ってくる・・・・・・胸が少し踊った。

「ちょっと大きいお土産も持っていくけど、誕生日プレゼントだと思ってちょうだい」

「わかった。ありがとう母さん。」

「じゃあ明日の夕方ごろに行くからね」――ガチャ

 伝える事だけ伝えて、唐突に電話を切った。

「フッ、誕生日プレゼントか・・・・・・」

 母さんが出てって以降もらっていないけど、何なんだろう?

 夜空を見上げながら自分の境遇について考えた。

 僕の住んでいる家は1人暮らしには、不釣り合いな洋館だ。普段から手入れを行っていないので、近隣の住民からはお化け屋敷と呼ばれている。先月も小学生が肝試しに勝手にあがりこんで追い出すのに苦労した。

 両親が結婚した後、僕が生まれたので、3人で母方の祖父が所有するこの家に入居した。ここは、利便性もよく、自分の通う学校も小学校から大学まで一貫した高校なので、何も心配がいらないはずだった。

 だが、父が・・・・・・いやうちの家に代々伝わる遺伝病が、家族を苦しめ始める。

 眠れず、そして次第に現実と夢の区別がつかなくなっていき発狂死する――葦原家にかけられた呪い。

 母さんは、発狂する父に追い出され、しばらくして鉄道事故で死んだと聞かされた。僕が1人残された。

 母さんは、柳瀬沙織という優秀な医者だったが、医療事故の責任を取らされて首になり、家族からも白い目で見られていたが、それを救ったのが父だった。それが、結婚の一番の理由――

 父や僕の遺伝病を研究するためなのか、発狂した父に暴力を振るわれた自宅に住むのが嫌なのか、今も研究所の近くにある実家に住みつづけている。

 そして自分も生まれた時から、この病気にかかっている。

――眠ると死ぬ病気。

 意識を失うと、呼吸や心臓が止まり死に至る病。

 だから僕は眠らない。眠ると意識が保てないから・・・・・・

 医者の間ではこの病気はこう呼ばれている。

――『オンディーヌの呪い』――




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