名も無き世界
地平線まで続く空。雲一つない、文字通りの青空。
地面に土はない。白い、ガラスのようなものが永遠に続いている。
それ以外なにもない、どこまで行っても何も変わらない、単調な世界だ。
空気もないようで、息が吸えないし音も聞こえない。
唯一動くものは私の身体。
「………」
しばらく歩いて気がつく。
なぜ、この世界にないものを知っているんだろう?
私は、雲も、土も見たことがないし、呼吸だってしたことはない。
不思議な感覚だ。何かがおかしい。
(そうか、きっと私は夢を見ているんだ)
つまり、この世界は私が創り出したということ。
それなら、私が思うことで変わるんじゃないだろうか。
ぎゅっと目を瞑る。
空には雲
地面には土
土には草
世界には空気が充満し
空気の流れで風が吹く
目を開け、大きく息をつく。
突風に体が吹き飛ばされた。
◇ ◇ ◇ ◇
「んっ……はー、よく寝た」
大きく伸びをする。
近所の芝生公園では、子供たちが元気にはしゃいでいる。
空にはぽっかりと雲が浮かんでいた。