死神・白1
目の前に現れた君は、天使なのか。
真っ白な、大きな翼を背中に生やし、僕を見つめている。
でも、僕は死のうとしていたのに…。
「私は天使じゃない」
僕が何を考えているのか分かったように、彼女が言う。
「私は死神。あなたを迎えに来た」
「俺、を…?」
「本当に死にたいの?
あなたを待ている人がいるのに」
「一体、誰が…」
考えてみても、思い浮かばない。
僕に、そんな人がいるのだろうか。
昔から独りだった、この僕に…。
「そんなんじゃ、あなたに会いたいって人がかわいそうね」
「でも、僕にそんな人がホントにいるのか…?」
「じゃあ、もう少し生きている事ね。待ってればその内現れるわ…」
「あ、ちょっと…」
僕の声も聞かずに空の上へ消えていく。
真っ白な、死神。
* * * * * * * * * * * * * *
僕の元に、一通の手紙が届いた。
送り主は、僕の幼なじみの女性だった。
「久し振り。会いたかったよ。あ、同時になっちゃったね」
目の前に、僕の幼なじみが現れた。
僕の手の中にある手紙を見ながら小さく微笑む。
僕に、会いたかった…?
「もう、一人じゃないよ。私がいるから…」
「どうして、俺がこうなってるって、分かったんだ?」
「小さな女の子がね、あなたが危ないって、私のところまで言いに来てくれたのよ」
あの、真っ白な死神か。
彼女、死神なのに、良い奴なんだな…。
「これからは、私が一緒にいるから大丈夫よ」
彼女は僕に、笑顔をくれた。
感謝する。僕の生きるべき道を教えてくれた、優しい死神に……。