25*始まりの町アリッチェ
そしてやって来た朝、ワクワクよりドキドキの方が勝っているが、行きたくない場所の方がいざ行ったら楽しかったということがあるので、前向きに考えよう。
小屋を仕舞い、バイクに乗る。
タブレットをハンドルに固定して、地図が見られるようにする。運転中はナビなんて見ている余裕は一切ないのだが、いずれ慣れる日も来るかもしれない。
何かあったら、ユイが教えてくれるので大丈夫だろう。
森から出たとはいえ、魔獣は出る可能性があるので索敵は切らさない。
索敵しながら運転してナビ見て魔獣を狩る、なんて荒業は私には出来ないので、索敵と運転だけで勘弁して。
魔獣が出たらどうしたらいいんだ。とりあえずバイク停めようとしても、間に合わないよ。
魔獣が出ませんように、出ませんように。
今日向かう町の名前はアリッチェだ。
この辺りでは大きな町で、人口は一万人位いるらしい。
地中海気候の温暖な気候で農業が盛ん。夏は暑いが日本と違って乾燥している。この辺は雨の量が少ない。冬もそこそこ寒い。
そういえば今は4月。
小屋に籠っている間に寒い冬が終わっていた。
寒くて震えた記憶は一切ないので、あの小屋は抜群の暖房を備えていたらしい。というか、エアコンを点けた記憶もないのですが。
太陽系まるごとをコピーしただけあって、満ち欠けも地球と同じで、一日は24時間で、一時間は60分。
非常に解りやすくて良いね。
一年も12か月だが、一ヶ月だけは固定で30日だ。
年末に5日間の年末日がある。これで365日。
年末日は休みになることが多く、新年の準備をしたり、お祭りがあったりするらしい。
地球の様に『今月は30日? 31日?』なんて悩まなくて済む。
『どうして2月だけ28とか29日で短いの?』と思ったものだが、地球も第7も考え方はあまり変わりないらしく、年末に帳尻合わせをしているだけらしい。
ちなみに閏年は第7には無い。年末日の5日間もかなりアバウトらしく、年に依っては日数が変わるそうだ。5日間になったのはここ最近とのこと。
精密な時計が無い場合は、誤差の範疇だろう。庶民にとっては5日間まるまる休みになることは無いので、日数が増えようが減ろうがあまり関係ないようだ。
ということが、第7検索のwikiに書いてあった。
誰だよまとめているの。運営に情報管理部とかがあるんだろうね。
森からアリッチェまでの道は無く、でこぼこで草が生い茂る中をガタガタ走る。
しかしそのうち、別方向から伸びた道に交差した。
おお、初めて見る人工物。といっても、かなり細い道である。
人が作ったというよりは、何度も歩いたので道が出来たというに等しい。
この辺には小さい村しか無いようなので、殆ど往来も無いのだろう。
私がやって来た方向は、基本人が近寄ってはいけない森なので、道などは一切なかった。『熊出没危険!』だ。
さて、細いながらも道に出て少し走りやすくなった。村から農作物を運ぶのに荷馬車が通っているのだろう。
でこぼこの砂利道だが、今までの草をかき分け走ってきたのに比べれば天国だ(天国存在しないけどね)。
視力5.0の目に、遠くの町らしき姿が見えてきた。多分あれがアリッチェだ。
何も無い草原をしばらく進むと、周囲に畑が増えて長閑な田園風景に変わる。
ああ、いいねー、こんな風景、田舎でスローライフも良いよねー。
なんて思っていたら、途端に強烈な匂いがした。
索敵には引っかからなかったが、魔獣? と思って周囲を警戒したが、理由がすぐに解った。
酪農の匂いでした。郊外のドライブあるあるだね。
柵の中で牛が10数頭寝そべっている。日本の牛とは違って角があるグレーっぽい色の牛だ。お休み中みたいなので、静かにその横を通り過ぎる。
魔獣と違って襲っては来ないと思うが、第7に来てから魔獣に襲われる日々が続いていたので、動物に対して身構えてしまう。
そういえばBOXの中にも牛がいたが、早く牧場に放してあげたいな。もし牧場の人と仲良くなることがあったら、相談してみよう。
そして、町がはっきり見えてきた。
このままバイクに乗って行っても大丈夫だろうか。
ゴーレムに似ているといっても近寄られたらバレると困るし、ゴーレム好きの男子に飛びついて来られても対処に困る。
とりあえず最初は早目にバイクを降りて徒歩かな。
遠くに荷車と人が見えたので、見られないうちにバイクを降りてBOXに仕舞った。
身支度を整えて、町に向けてのんびり歩きだす。
本日の服装は旅の町娘だ。第7の娘たちの服装に近い物を、北海道ワードローブの中から選び出した。コーディネイトに丸一日かかったのは勿論のことである。
北海道ワードローブ多すぎるから。北海道民のクローゼットの服も再生で新品になっているので、一体どれだけあるのやら。まだまだ魂さんたちが分解して分類中なので、全然先が見えないよ。
私が元々持っていた服は、当たり前だが今の体に合わなかった。ウエストがゆるゆるで、脚の長さが足りない。さすが外国人体型。おかげで全部総入れ替えになったよ。
ベージュのブラウスに茶系チェックの巻きスカート、上には旅人っぽいブラウンのフード付きマント。足元は編み上げのブーツ。髪は太めのヘアバンドをして、肩下でゆるく紐でまとめている。
本当はワンピースが良かったのだが、バイクに乗る都合上、長いスカートは不味い。ということで、バイクのときはパンツだ。そして降りた後に、上からロングの巻きスカートで隠す。
この辺の女性は頭にスカーフを巻いて、髪をまとめていることが多いみたい。
若い子は髪を垂らしているが、メイドさんが頭につけているやつみたいなのをしている。
メイドキャップとかブリムとかヘッドドレスとかカチューシャとか?
なんていうの? ちょっとずつ違うらしいが知らんがな。
BOXの中からコスプレ衣装専門店とか探せば見付かったのだろうけど、あれを毎日付ける勇気はないので、太いヘアバンドを選択した。
まとめた紐は外側だけで、中はヘアゴムである。紐じゃ落ちてきちゃうよね。
多少異国感はあるものの町娘っぽい格好で、意気揚々と町の入り口に向かって歩いて行く。
もっと人通りがあるかと思ったが、すれ違う人はいない。現在は昼前なので、時間帯にも依るのかもしれないね。
やっとはじまりの町到着です。
まだ門の前だけど。
転生準備長すぎだっつのって感じですが、今後もこんな感じでグダグダ続いていきます。
興味持ってもらえたら、ブックマークして頂けると嬉しいです(*^^*)
カノンが何やらかすのか気になったら、また遊びに来てください。




