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アイテムBOXに北海道丸ごと入っているので、異世界でも食べるものには困りません  作者: 柚木 冬


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23*いざ森を脱出

 グループリーダー坂口さんのOKも出て、森脱出のために移動することとなった。


 ようやく人里にと泣きそうになるが、町まではまだまだ先だ。



 翌朝小屋から出てすぐに、ユイから止められる。

「カノン、小屋をBOXに入れてね」

「はあ?!」


 北海道丸ごと入るBOXなんだから、小屋位余裕だった。


 BOXに収納しておいて、今晩野営する場所でまた小屋を出すそうだ。

 野宿する必要もないし、寝ている間に襲われる心配もない。


「普通に仕舞って大丈夫なの? 貯水槽とか配管とかついてくる?」


「大丈夫。まるっとグループ化してあるからね」


 空中で弧を描くようにドラッグすると、いきなり何も無くなって木が沢山生えてきた。


「え? え? プロジェクションマッピング?」


「いや、そっちが本物。小屋を置く前に元々あった木だよ。ついでに言うと、小屋の周囲にプロジェクションマッピングを施した状態でグループ化しているので、プロジェクションマッピングもし直す必要なし。他の人からは見えないよ」


「あーついていけないーでも脳が理解を拒んでいるので、そういうものと受け入れます」


 森の中なのに大声出してはいけない。

 すぐに魔獣が飛んでくるから、いつでも水弾を撃ち出せるように準備しておく。


 水弾も練習の甲斐あってグレードアップした。

 たかが水?

 侮っちゃいけない。超高速の水がどんな威力なのかお解りだろう。

 高圧洗浄機の如く噴射するよ。細くしたら岩をも砕きそう。


 火弾とかもやってみたいけれど、森の中では躊躇する。


 水弾だと魔獣にも傷が少ないので、販売するときに高値で売れるそうだ。そのため水弾ばかり使っている。


 今日は、運営側にはユイと甲田さんがスタンバイしている。

 魔獣と闘いながらタブレットで方向を見るのは危険なので、イヤーカフから二人が進路を教えてくれる。


 いつもは甲田さん一人で静かに見守ってくれているが、二人いるのでやたらとうるさい。

 基本うるさいのはユイだが、話し掛けられると甲田さんも返事をするので、イヤーカフから聞こえる声がうるさい。音消してやろうかと思うが、迷子になること必至なので我慢した。


「ちょっと何であんなに早く2匹も倒せるの?」

「魔力の発動スピードが尋常じゃないですね」

「ベテラン魔法使いの能力と比べるとどうなの?」

「広範囲魔法はまだ見ていないので解りませんが、スピードだけなら勝ちです」

「おおーこれなら魔王倒せるのでは?」


「いや、魔王いないって何度も言ってたよね?」

 実況と解説みたいな二人の会話に、思わず割り込んだ。


「もし仮にいたとしても、倒せそうですねって話。索敵は大丈夫なの? あ、魔兎いるよ」

「うっさいわ」


 ユイへ暴言を吐きながら、後ろ手に水弾を撃つ。


 魔兎程度にやられる私ではない。


 しかし魔兎は本当に可愛くない。ふれあい動物園で抱いたうさぎの面影はどこいったと泣きたくなる位、怖い顔をしている。

 これが魔素のせいなのかな。魔素が抜けたら可愛くなるの? いやもう別種だと思うな。


 その後もうるさい解説の声を聞きながら、魔石を拾って魔獣を撃つ。

 この辺の魔石は一昨日拾った筈なのに、まだあったのか。

 魔石はポンポン生まれてくるものなのか。それか生態系の争いで敗れた魔獣の中にあった魔石なのか解らないが、結構落ちている。


 あまり面白味が無い作業なので、たまにキレイな色の魔石が見付かるとちょっと嬉しい。

 ピンクの魔石が落ちていて喜んだが、あまり魔素が含まれていないので価値は低いらしい。

 それでも可愛いから良いのです。宝石の代わりにとかならないのかなー。


「えと、あのですね」

「なーに? カノン」

「トイレに行きたくなってきた」

「簡易トイレ出したら?」


 あーBOXにはそういうのも入っているか。簡易トイレで検索。


 しかし甲田さんから待ったがかかった。

「そろそろお昼なので、トイレ休憩がてら食事もしましょう。小屋を出してください」


「あ、はーい。普通に出すだけ? 木が沢山あるけれど大丈夫なんだよね?」

「大丈夫―」


 では、と小屋をBOXから取り出し。

 目の前にいきなり、よく見た小屋が出てきた。

 本当に目の前の木はどこいったんじゃい!

 うん、これ以上は思考は停止。


「あれ? 隣の庭がない」

「庭は今要らないでしょう? 小屋と庭で分けてアイテム化しているから」


 グループ化してアイテム化とか、画像編集ソフトじゃないんだから。


「これも私には見えるけど、他の人からは見えないんだよね」

「そうだよー。他の人には森にしか見えない」


「まっすぐ歩いたらぶつかるの?」

「保護膜でふわっと止められる。あれ? と思うけれど、通れないんだと脳が解釈して、他の道を探すことになる」

「見えない壁にぶつかって怪我したりはしないんだね、良かった。まずはトイレ」


「じゃあ、私は戻って別の仕事してますので、何かあったら呼んでください」

「はーい、甲田さん、ありがとー」


 水もきちんと出るし、何て便利な運営、BOX、グループ化、アイテム化。



 トイレから帰ってきたら、ユイが真剣な顔で何かを見つめていた。

 いつも明るくお気楽な感じのユイしか見ていないので、真剣な顔のユイは珍しい。


「どうしたの?」

「日替わり定食のAとBで悩んでる」


「あー、やっぱりそれかー。いや、ユイが悩んでいるの珍しいなと思ったら、いっつものユイだったよ」


「だって、焼餃子定食と水餃子定食なんだよ。悩むじゃん」


「何それ有り得ないじゃん! どっちかなんて決められない。餃子ミックス定食にしてよ! ジョージ!」


「本当だよ。どうしてこの組み合わせにした! ジョージ!」


 結局悩みに悩んだ挙句、ユイは焼餃子、私は水餃子をチョイスした。

 こういうとき一口頂戴と言えないのが、オンラインランチの残念なところだ。

 念のため焼餃子もお気に入り登録しておいた。ジョージが勧める焼餃子は、今度是非とも食べたい。



「そういえば魚やカニを捌くのが面倒くさいって、私この間言ったじゃん」

「まぁ面倒だよね。結構な量だし。私も嫌だ」


「画期的な方法が見付かったよ! BOXの中で分解を使うと、魚の肉部分と皮や骨や内臓に分かれてくれるんだ。小骨も排除してくれるんだよ。すごいね、分解」


「確かにそういう使い方も出来なくないか」


「甲田さんが魔獣の分解すると、肉と骨と革と角とかに分けてくれるよって言ってたから、魚にも使えるんじゃないの? と思ってやってみたら出来たー。でもね問題があって、先にバラしてから焼くと焼きすぎになっちゃうのよ。やっぱり焼くのも煮るのも皮がついていないと魚は美味しくないらしくてね。でも魚によっては全部剝がしてからの方がいいのもあって、種別に考えないとダメみたい。今色々試してみてるところなんだ」


「はー、カノンは、マイペースでいいねー」

「え? 喧嘩売られてる?」


「売ってない売ってない。魔法使いでこんなこと研究している人いないわ。めっちゃくちゃ平和で良いと思います。上手くいったら、魚別に分解方法を登録しといてね」


「やっぱり馬鹿にされている気がするんですけど。小骨取らなくっていいってすごく便利だよ」

「馬鹿にしてないよー私もそう思うよー」


 馬鹿話していたら、1時間たっていたので、そろそろ活動再開の準備をする。


 午後も2時間位歩いて小屋で少し休憩し、また2時間位歩いて、本日は終了となる。


 久々に魔熊に遭った。2m超あってやっぱり威圧感が半端ない。ただ遠くに見えた途端に水弾で瞬殺なので、近くでは見ていない。


 果たしてこの戦闘方法で良いのか不安になったので、夜に甲田さんに相談してみる。


「遠くからの水弾ばかりなので、接近戦の対処方法を学んでいないですよね。いきなり後ろから殴られたら、どうしたらいいか解らないです。ちょっと格闘技とか勉強した方が良いでしょうか? 襲われたことが無いので、多分固まって動けなくなっちゃうと思います」


「杞憂だと思いますよ」

「私もそう思う」


 二人ともそんなことを言って、全然相談に乗ってくれない。

 襲われたらどうしてくれるんですか。私が怪我してもいいんですか。そんな風に聞いてみても、首を振るばかりだ。


「私たちが気付くより早く水弾撃ってるじゃないですか。5、6匹でも余裕で対処している。襲われることなんて無いと思いますが」


「ありますよ!」

「体にも保護膜かけているので、魔熊に全力で殴られても怪我しませんよ」


「え、そうなんですか……でも魔熊が10匹で来たら、無理だと思いますよ」

「魔熊はそんなに群れる性質ではないです」


「魔鹿や魔山羊の角すごいじゃないですか。あんなので刺されたら、保護膜だって危ないのでは」


「大丈夫です」

「え?」


「絶対に大丈夫です」

 結局甲田さんは頑なに大丈夫を繰り返して、帰っていった。


 ユイも笑いながら後を追って、モニターを消した。


「えー大丈夫なの?」

 誰もいない空間に思わす語りかける。


 まぁ、格闘技を学びたいと言っても、モニター越しの甲田さんと直接組み手とかできるわけではないので、第7の人に教えてもらうしかない。


 町に着いたら探してみよう、そう思った私であった。


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