表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら戦国時代の米問屋だった ~武将でも剣豪でもない俺が、兵糧で天下統一を支えます~  作者: 水原伊織


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
87/102

第八十七話 市場を制する者

東海道。


商人組合が動き始めてから、三か月。


街道の流れは大きく変わっていた。


以前なら。


大きな問屋が情報を握り。


一部の商人だけが有利な取引をしていた。


しかし今は違う。


荷の情報。


取引の記録。


信用の評価。


それらが共有され始めている。


「若旦那。」


庄吉が笑顔で帳面をめくる。


「小さな商人たちの取引量が増えています。」


「良いことだ。」


「はい。」


「でも……。」


庄吉の表情が少し曇る。


「一つ気になることがあります。」


---


「何だ?」


「売る場所です。」


弥助は顔を上げた。


庄吉は続ける。


「荷を運ぶ仕組みは良くなりました。」


「信用も広がっています。」


「ですが。」


「最後に商品を売る場所は。」


「まだ昔のままです。」


---


弥助は考える。


確かに。


物流とは、運ぶだけでは終わらない。


生産する者。


運ぶ者。


売る者。


買う者。


全てが繋がって初めて流れになる。


「市場か。」


弥助は呟いた。


---


その頃。


黒潮屋。


源兵衛は、新しい商いを始めていた。


「黒潮屋が?」


正信から届いた報告を読む弥助。


「大きな市場を作った?」


庄吉が驚く。


「はい。」


「堺でも東国でも。」


「黒潮屋が場所を提供し始めています。」


---


それは一見すると、良いことだった。


商人が集まる場所。


商品を売買できる場所。


情報が集まる場所。


市場が発展すれば、町も豊かになる。


しかし。


弥助には違和感があった。


「条件は?」


庄吉が調べた帳面を見る。


「黒潮屋を通した取引には。」


「手数料が必要です。」


「そして。」


「市場内での商売には、黒潮屋の許可が必要。」


---


弥助は静かに息を吐く。


源兵衛らしい。


市場を作る。


だが。


その中心に自分を置く。


信用を集めた次は。


商いの場所を握るつもりなのだ。


---


一方。


黒潮屋の新市場。


源兵衛は商人たちを集めていた。


「皆様。」


「これからの商売は変わります。」


「昔のように。」


「店先だけで待つ時代ではありません。」


---


源兵衛は広い市場を見渡す。


「人が集まる場所には。」


「情報が集まる。」


「情報が集まれば。」


「商機が生まれる。」


商人たちは頷く。


確かに魅力的だった。


---


しかし。


一人の商人が尋ねる。


「では。」


「我々は黒潮屋なしでは商売できなくなるのですか。」


一瞬。


空気が止まった。


源兵衛は笑う。


「違います。」


「皆様は自由です。」


「ただ。」


「最も便利な場所を使うだけです。」


---


その言葉を聞いた弥助は、少し考えた。


自由。


便利。


間違ってはいない。


だからこそ難しい。


強制ではない。


しかし。


気付けば一つの力に依存してしまう。


---


「若旦那。」


庄吉が言う。


「黒潮屋は悪いことをしているのでしょうか。」


弥助は首を振った。


「違う。」


「商売としては正しい。」


---


「では。」


「何が問題ですか?」


弥助は答える。


「選択肢がなくなることだ。」


---


「市場は。」


「誰か一人のものではない。」


「商人が自由に集まり。」


「自由に競い。」


「新しい商いを生む場所だ。」


---


そこで弥助は新たな計画を立てる。


「作る。」


「市場を。」


庄吉が驚く。


「弥助さんが?」


「いや。」


弥助は首を振る。


「皆で作る。」


---


それは、


**共同市場**


だった。


商人組合が運営する。


参加者全員が支える。


誰でも参加できる。


誰でも取引できる。


誰か一人が支配しない市場。


---


「黒潮屋の市場が大きな城なら。」


庄吉が言う。


「こちらは町ですね。」


弥助は微笑む。


「そうだ。」


「城は一人でも作れる。」


「だが。」


「町は皆で作るものだ。」


---


その知らせは、すぐ源兵衛の元へ届いた。


「共同市場ですか。」


玄蔵が尋ねる。


源兵衛は静かに笑う。


「予想通りだ。」


「弥助は。」


「必ず対抗する。」


---


「ならば。」


玄蔵が聞く。


「どうされますか。」


源兵衛は市場の帳面を閉じた。


「競争するだけだ。」


「しかし。」


「商人の世界では。」


「競争こそが。」


「最も厳しい戦いになる。」


---


数日後。


東海道に二つの市場が生まれる。


一つは。


黒潮屋が作る、巨大で整った市場。


もう一つは。


商人たちが共同で作る、小さな市場。


人々は選ぶことになる。


どちらを信じるのか。


どちらの未来を選ぶのか。


---


弥助は新しい市場の入り口に立つ。


まだ小さい。


まだ未完成。


しかし。


そこには多くの商人の声があった。


「ここなら挑戦できる。」


「ここなら小さな店でも参加できる。」


弥助は思う。


商いとは。


大きな力を持つ者だけのものではない。


挑戦する者に道があること。


それこそが。


本当の市場なのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ