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ウチのあかり知りませんか  作者: ノット(野兎)


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1/1

もしも、守りたいモノが出来たなら。前編

最初に、皆様にお詫び申し上げます。エピソード1で、初投稿にテンパってしまい後書きを載せないまま

投稿してしまい、申し訳ございませんでした。今回から、アカリとサツキに後書き任せたので、よろしくお願いいたします。

今回の物語は、デスマーチと言う前人未到のミッションに挑む二人が、多くの人と共に立ち向かって行く、戦闘中心のエピソード。その前編になります。

戦場の臨場感が、少しでも伝われば幸いです。                

それでは、又本編で、お会い出来るのを楽しみにしております。





「おはようございます」

誰にともなく挨拶する。目覚まし時計は午前4時を少し回ったところ。窓を開けて、外の空気を吸い込むと夏が近いから、ほんのり暖かい。窓辺に肘を付いて、ぼんやり外を眺めながらコーヒーを一口

「桜も、もう終わりかな」

窓辺には、桜の花びらたちが散りばめられて春の終わりを告げてる。

ふと、アカリもしかしてログインしてたりして。ヘッドギアを被ると十文字サツキの名前が表示される。ログインしてみると、視界に入ったのは窓辺に肘を付いて外を眺めるアカリの姿が有った。私と同じ事してるし。にしても、綺麗な娘だよね。初夏の風にアカリの黒髪が、微かになびいてる。黒髪かと思ってたけど濃い赤だったんだ。私が見とれていると、アカリが何か呟いてるのが聞えた。

「アタシね友達出来たんだよ。ちょっと変な子だけど、いい子っポイ」

「だからね、心配しないで。次はバルハラで会いましょう」

ここは二階で、当然窓の外に誰か居るはずも無いから、独り言って事だけど、この娘も色々有ったんだな。そんな想いに更けていると、アカリと目が合ってた。

「いつから、いつから聞いてたの」

顔を真っ赤にして、アカリがにじり寄って来た。

「私が変な子って辺りから」

私が身を起こしながら呟くと、いきなりアカリが襲ってきた。そして、私の両肩をガッシと掴むと前後にブンブン揺さぶりだす。

「忘れろ~、一万回位やれば記憶飛ぶよね」

「そんな事したら、頭もげるわー」

ブンブン揺られて、気持ち悪く成って来た。

「分かった。忘れるから手を放して」

「本当」

俯きながらシュンとしてるアカリを見ると、なんか可哀そうに思えて来た。

取りあえず話題を変えようと。

「アカリって、こんな時間まで何してたの」

「魔法の研究」

まだ赤みがかった顔でポソッと呟た。

「それ、私もたまにやる。時間経つの早いよね」

あれ、なんかアカリがジーと私を見てる。

「サツキこそ、何でこんな時間にログインして来たのよ」

「私、私かー。実はログインする時に履歴みたら、昨日ログアウトした時間夜の8時だったんだ。その後、爆睡しちゃたから早く目が覚めて」

そこまで話したら

「退屈だったからインして来たと」

勘違いして暮れたみたい。

「これだから若いもんわ。アタシ一度落ちるね。昼前には来るから」

なんかブツブツ言いながらアカリが落ちたので、私も研究室にコモル事にした。研究室にコモル理由は、色々有るんだけど、一番の理由は、新しいレシピを発見したら、自分で名前が付けれるから。中には、僕のピーピー(18禁)バスターとか付けた奴がいる。ブッ殺してやりたい。

それからしばらくして、外がやけに騒がしいのに気が付いた。ステータス画面を閉じて窓から下を覗くと

凄い人。ただ、賑わうのでは無く騒がしい。何だろうと思ってたら部屋のドアが叩かれた。

「お客さん、起きてるかい」

ノックの主は、この宿屋の女将さんだった。

「おはようございます。どうかしました」

ドアを開けるなり、女将さんが凄い剣幕で

「あんた達急いで準備しな。この町デスマーチの進路に入ったんだよ」

「私は他の、お客にも伝えて回るから、あんた達も気を付けて」

「はい ありがとうございます」

女将さんの剣幕に圧倒されていたが、私もデスマーチの事は聞いた事が有る。と言っても、本来なら町に近づかないモンスターが町の中まで進入して来る位しか知らないんだけど。とりあえずアカリに緊急メール送ったんだけど、メール内容を運営が判断して通信するか決めるから、返信来るまで不安なんだよね。

それから1分もしない内にアカリから返信がきた。

(分かった 直ぐ行く)

ログインして来たアカリは、ステータス画面を開いて何かを検索しだした。

「サツキ これ見て」

アカリが指し示す画面には、天気予報でよく見る台風の進路予想図みたいなのが載ってる。

「これって、デスマーチの進路予想図」

「そだよ、ステ画面のタウンて所にね。自分の居る町の情報が色々出てるんだ」

「到達時間は昼の2時だから、まだ大丈夫だね。忙しく成るぞー」

アイテムの在庫確認を、しだしたアカリに

「アカリ。私、デスマーチの事あんまり知らないんだけど」

ん~と、アゴに人差し指を当てて考え込むアカリ。多分説明の構成を考えてるんだろうけど、アレッて

あの娘の癖なのかな。とか思ってたら構成が纏まったみたい。

「デスマーチはね、モンスターの行軍で平均レベルは、この町周辺のモンスターのレベルの約3倍。問題は、その圧倒的な数の多さと大中小の混じった編成で、本来近づかない町にも入って来るんだ。種類も色々だから討伐大変なんだよ」

「それって、マーチを防いだ町とか有るの」

「無いよ。災害みたいなものだから」

「そうだったんだ」

これは、逃げるしか無いって話しなんだよね。マーチが通り過ぎた後、この町どうなっちゃてるんだろう。出来れば無傷で有って欲しいけど、無理だよね。この町結構気に入ってるんだけどな私。

アイテムの在庫確認が終わったみたいで、アカリが

「アタシ一度落ちて、ご飯食べてくるね。サツキも、ちゃんと食べといてね」

「了解」

私、朝ごはんも食べて無いや。もう10時回ってるから、お昼込みで良いか。そう言えば、アカリあんまり寝てないよね。大丈夫かな。取りあえず一度落ちよ。

それから30分後私がインすると、アカリがフル装備で待ってた。靴も何時ものローファーじゃ無く、ブーツ履いてる。私も装備を、整え

「アカリ、こっちも準備出来たよ」

「うん。んじゃ買い出し行こっか」

「エッ買い出し」

私てっきり、この町から逃げ出すのかと思ってたけど、どうやら違うみたい。

買い出しの途中、情報屋の前を通り掛かった時。看板の隅に小さく書かれた文字に気が付いた。

(バーカ)って書いて有る。私は、思わずクスッと笑ってしまった。

「サツキどうしたの」

「何でもない。妖精のイタズラを、見つけただけだよ」

「妖精かぁ。又会いに行こうかな」

「えっ」

この世界,妖精居るんだ。てか、会えるの。

「あんた達、そっち逆方向だよ、逃げるなら東門に向かいな」

道行く人が声を掛けて暮れたんだけど。「ありがとうございます」と挨拶するだけで、方向を変えない。

やっぱり、この娘立ち向かう気だ。

「サツキ。アタシこの町を守りたいんだ。だから・・・サツキは付き合わなくて良いんだよ」

微笑みながら話す私の友人。それに、この娘言わないけど、アンナちゃん達の為も、有るんだろうな。

コツっと、アカリの頭をコズく。

「サツキさんをなめんな。たかが、ディスペナ1回位で逃げたりしないよ。アカリが、やるって言うなら付き合うよ」

「ありがとう」

さっきの哀しそうな笑顔じゃなく、ちゃんと笑って暮れた。オッシ、久しぶりに本気出そう。

「でも、私たち二人じゃ足止めにもならないよ」

「そうだね。ある程度の人数が居れば、なんとか、成るかもしれないけど」

「それは、本当ですか」

いきなり、後ろから声を掛けられて振り向くと、フルプレイトの青年が立っていた。

「何、何か用」

アカリのいつもの、反応。アカリって若い男の子に話し掛けられると、すごく不機嫌に成るんだよね。

あの容姿だし色々有ったのかな。

「すいません突然話しかけて、お二人が南門に向かってるのが見えたので、注意しようと近づいたら

お二人の会話が聞こえて来て。つい声を掛けてしまいました」

申し訳なさそうに話す青年はシルバーグレイの髪をした、かなりの美丈夫。しかも、フルプレイトなのに

ヨロイ特有のカチャカチャした音がしなかったから。かなり高級な装備みたい。

「そういう事なら、別に良いよ。さっきの話しだけど、ある程度の人数と条件が合えばの話しだから」

「やってみないと分からないけどね」

「策が有るって事ですよね」

顔が近い、近い。 そして、町中にアナウンスが流れた。

「って。凄い人」

今、私たちは中央広場に設けられた壇上に立ってるんだけど。ざっと見て200人以上居る。

引きこもり気味の私には、ハードルが高過ぎて、めまいがして来た。

アカリはと、見れば。緊張の欠片も見えない。こう言うのに慣れてるんだろうか。

「みんな集まって暮れてありがとう。私が紹介にあった詩宝 アカリです。そして、この子がアタシの相棒」

手で指し示された私は、噛まない事を祈りながら

「十文字 サツキです。よろしくお願いします」

オッシ乗り越えた。後、相棒って言われたの、ちょっと嬉しい。

「さてと、んじゃ本題に入る前に皆に聞いて起きたい事が有るんだ」

「マーチが通り過ぎた後、この町が消滅するのは知ってると思うけど。その後どうなるか知ってる?」

「運営が又作って暮れるんだろ」

前に居た戦士が、なに当たり前の事をと。そんなソブリで言ってくる。

「残念な事に運営が作って暮れたのは、始まりの町だけなんだ。後は全てプレイヤーが作った町なんだよ」

周りのザワツキが一気に静まり返る。

「さっきアナウンスが入ったでしょ。彼が、この町のタウンマスターなんだ」

「それなら、そのマスターが又作ればいいんじゃないのか」

先ほどの戦士である。

「それは、可能かもだけど。早くても3ヶ月は掛かるんだよ。この町は、始まりの町に一番近いから皆、苦労すると思うよ」

「それに正直に言うと、アタシこの町好きだから、こんな事で消滅して欲しくないってのが本音なんだ」

再び、ザワツキだす。

「それなら、やるしかないよね」

「そうね。この町には、お世話になってるし」

「そうだよな。俺も、この町が気に入ってるからな」

周りから口々に、賛同の声が上がり出す。

「んじゃ、みんなの同意を得たって事で話し進めるね」

「その前に、確認したい事が幾つか有るんだ。この中に上級魔法使える人居ますか」

パッと10人の手が上がる。意外と多いのに驚いた。ここ低級LVのモンスターしか居ないから一人も居ないかと思ったから。

「うん。十分だね居て暮れて、ありがとう」

「次に、土属性の魔法使いの方」

集団の中から、5人の少女達がアカリの前に出てきた。

「私達に、何か用」

少女達は、まぶかにフードを被り不機嫌そうに、その先頭の子が

「土属性なんて、地味な属性の私達に何か用かって聞いてるの」

なんか、ご立腹の様な。そんな事全然気にしないアカリは

「やったー!しかも、5人も居る」

ワーイと壇上から飛び降りて、先頭の子の手を握ってメッチャ喜んでる。

「あのさ、そんなに喜んでる理由聞かせて貰える」

「なんでって、そりゃ、もっとも恵まれた属性の人が5人も居るんだよ。喜んで当たり前だと思うけど」

そう言えば、私達魔法使いは土属性の魔法使えないんだけど。なんでだろ。

「恵まれてる。私達が」

少女達の目に、怒りの色が浮かんでいるのに、アカリは全然気にした様子もなく

「そだね。ちゃんと説明するね」

「まず、一つ目に各属性の中で最も物理ダメージの強い属性だから、魔法耐性の有るモンスターとも戦えちゃうとか凄くない」

少女達の表情が一瞬で変わったのが、壇上の上からでも見て取れた。

「言われて見れば、そうだよね」

5人で、ひそひそと話してるけど。少し機嫌が良く成って来たかな。

「もう一つは、召喚士でも無いのにゴーレムを使役出来る事」

「そうだけど、ゴーレムは動き遅いし簡単な命令しか聞かないから、使えないじゃん」

(これは、相当こじらせてるなー)

「そうだね。とりま、最初に言ってた地味って所からにしよっか」

「あなた達鉱物とか、例えばダイヤモンドとかも土属性に含まれるって知ってた」

「エッ」5人全員ハモッタ。

「そう言えば、アイアンゴーレムとか、そうだよね」

「うん。例えばアースニードルをダイヤモンドにしたら、カッコイイと思うけどな。後マグマも土属性だから、ど派手な魔法も作れるんじゃないかな」

5人の少女達は勿論。周りの人達からも、感嘆の声が上がる。

「工夫と創造ってヤツだね」

「んじゃ。次はゴーレムの話しをしよっか」

5人の中の先頭の子が、慌ててアカリの話しを遮った。

「ちょっと待って下さい。アカリさん。さっきから凄い情報バンバン言ってるけど、大丈夫なんですか」

この世界では、情報は売り買い出来るから、情報は個人の資産でも有るんだ。だから、今アカリがしてるのは、お金をばら撒いてるに等しい行為なんだよね。そりゃあ心配にもなるよ。ちなみに、情報を情報屋に売る時は、運営が信頼度とレア度を付けて、それを見て値段付けてるみたい。

「気にしないで。あなた達は、もっと誇りを持って良い属性の人達なんだから。それが出来ないのは寂しいじゃん。だから、良いの」

「ありがとうございます」

5人の少女が頭を下げる。その表情に、少し涙が浮かんでるのが見える。

「ここまでの話しは大丈夫?」

コクコクと頭を振る少女達。なんか、カワイイ。

「じゃあ、続けるね。ゴーレムは人型のイメージ強いけど、戦闘向きなのはビーストタイプなんだ。ビーストタイプの方が機動力が高いから、外殻を金属に変えて中身を空洞にすれば、速さも防御力も上がるから、頑張って戦って暮れるよ」

そこまで話した時には、アカリが少女達に抱きつかれてた。5人とも、メッチャ泣いてる。

そりゃそうだよね。自分たちの持ってた属性のイメージが180度変わったんだから。

そして、アカリの小さな呟き。(今まで、よく頑張ったね)

微笑みながら少女達の頭を撫でてるアカリ。お姉さんしてるなあ。

「アカリさん。私達の属性の事は、よく分かりました。ただ、今更だけど何故私達は、こんなにも恵まれているのでしょうか」

今だ、抱き付いたまま、アカリを見上げる少女達に

「それはね大地の精霊に、もっとも愛された属性だからだよ」

その言葉が余程響いたのか、少女達の瞳に強い意志の力が宿った様な。

「アカリさん。私達何をすれば良いですか。何でも言って下さい」

「うん、ありがとう。あなた達には、この町を任せたいんだ」

「まず、防壁をアースシールドで強化して。それが済んだらビーストタイプのゴーレムを何体か作って町の警護に当てて欲しいんだ。一体はスネークタイプで、。実はスネークが一番移動力があるんだよ」

「命令は、敵意有るものに攻撃で良いから」

いつの間にか、アカリの前に整列してた少女達。良い顔してる。

「後ね、魔法は防壁の上から使って。防壁の上は町中と同じ扱いだから、魔力の消費抑えるられるから」

「分かりました。全力でやります」

そう告げて防壁へ、走って行く少女達。その中の一人の少女がアカリの元に駆け戻って来た。

「私達チーム土っ子って作ってるんです。よろしく、お願いします」

「うん。頑張ってね」

手を振りながら、仲間の元へ走って行く少女を見送った後。壇上に戻り

「ゴメンね。話し中断しちゃて」

「弓使いの方も、土っ子の子達と一緒に、この町の防衛に回って欲しんだ」

「おう、任せとけ」

群衆の中から突き上げられたコブシの数が意外と多い。ざっと20人位居る。私、弓使いの事あんまり知らないけど、強いのかな。

「矢の補給は、生産職の方にお願いしたいんだけど」

「俺たち生産職は、それ位しか協力出来ないから。弓でも何でも好きなだけ使って暮れて良いぜ」

「ありがとう。よろしくお願いしますね」

その頃、防壁へ向かった土っ子達は。

「どうしよう。私メチャメチャテンション上がってる」

土っ子の中でも、小柄な少女の呟きに

「私もだよ。大地の精霊に愛されてるとか、言われた時なんて。もう、逝っちゃうかと思ったもん」

若干ヤバイ表情してる。ツインテールの子が応えると。

「そうだね。あの人凄く優しくってさ。私、大好きかも」

「分かる~。あんな人が、お姉さんだったらって思うし」

「ハイ。おしゃべり終了」

先ほど、先頭に立ってた少女の苦言に

「ごめ~ん」と残りの少女達。

「あっ」

「どうしたの」

「私達アカリさんに自己紹介してない」

「だったら、この戦い何が何でも勝たないとだね」

「気合い入れてくよ。土っ子、オー」

「オー」と持ち場に駆け出す少女達。すっかりアカリ信者だ。

一方広場では、アカリが前線の話しを始めていた。

「マーチは、大中小のモンスターの混合編成だから、速度の遅い大型を避けて中型小型が左右に

広がって進行して来ると予想されるんだ」

「つまり、逆Ⅴ字の形だね」

今、この広場に居る人達は、誰一人話すこと無く真剣にアカリの言葉を聞いて暮れてる。

みんなアカリの事、信頼して暮れてるんだ。

「それで最前線なんだけど、上級魔法使える片達に、お願いしたいんだ」

「ちょっと待ってください。この人数だと私達を守る人なんて、回せないんじゃ」

前に集まって来た、魔法使いの中でモデル体型と思える程の女性が話して来た。

「うん。みんなは、アタシとサツキで守るから」

「えっ、たった二人」

途端にザワツキ出す魔法使いの皆さん。そりゃそうだよね。それに、なぜ私?私の実力アカリ知らないのに、聖女は、ある程度のステータス見れるから、それでかな。

「んと、こればっかりは信じて貰うしか無いんだけど。正面から来るモンスターは、そんなに多く無いから、大丈夫だよ」

「とりあえず、その話しを信じるとして。何で私達が、最前線なわけ」

モデル体型のお姉さん、ちょっと怖いい。

「えっとね、質問に質問で返してゴメンなんだけど、皆は上級魔法使った事ある」

前に集まってる魔法使い達は、誰も手を挙げない。えっ、そうなの。私は、中級までしか修得して無いけど、ちょっと意外だった。

「上級魔法てさ、試し打ちしないと威力分かんないじゃん。かと言ってソロで試し打ちなんてしたら、

魔法使いはペーパーアーマーだから、即ヤラレるし。パーティーだと仲間巻き込むかもだから、使えないよね」

うんうんと、相づちを打つ魔法使い達。

「でしょ。最前線なら、打ちたい放題なんだけど」

「それは魅力的な提案ね」とモデルのお姉さん。

集まった他の魔法使いたちも口々に

「やっと、打てるんだ。やったー」

「私、結構ストック有るから全部ぶち込みたい」

「どうしよう。私の魔法で皆、驚かせちゃうかも、デへへヘ」

どうやら、最前線に立つ恐怖より、魔法が打てる魅力の方が勝ったみたい。

「えっと、了承て事でいいのかな」

魔法使い達が、全員サムズアップしてる。

「それじゃあ、話し続けるね」

「まず、上級魔法の使い手の方は、大型のモンスター倒したら直ぐに町に戻って、魔力の回復とスタミナの補給に努めて下さい。魔力の回復は自然回復に任せて、大体1時間位で回復すると思うよ。緊急時以外マジックポーションは使わないでね。マジックポーションは、数に限りが有るから取っときたいんだ」

「回復したら、ここに戻って。大体2,3人で回してけると思うから」

「つまり、ローテーションしてくって事なんだ」

「うん。分かったから、早く行こ」

上級魔法魔法の人達、我慢しきれないみたいで、メッチャ鼻息荒い。目付きもヤバイんだけど。

「ゴメンね。もう少し我慢してて」アカリも、大変だ。

「次に、近接攻撃の人達は左右に分かれてモンスターに対応して欲しいんだけど。あなた達が一番負担が大きいから、他の魔法職の人にはサポートをお願いしたいんだ」

「アカリさん。俺ら正直逃げ出そうと思ってたんだけど、あんたの話し聞いてたら、やれる気がしてきたんだよな。だから、とことん付合うぜ」

「ありがとう。よろしくネ」

「あのー、私も近接攻撃の人に魔法当てない様に頑張ります」

メガネっ子の呟きに

「当てちゃあ、ダメなんだゾ」と人差し指を、オッタテぴっぴと指を振るアカリ

アカリの言葉にクスクス笑い出す周りの人たち。みんなが一つに纏まってく感じ。いいなぁ、これ。

ちなみに、メガネっ子ちゃんは「ハウー」とか言ってテレテレしてる。

「後、生産職の皆さんには武器や食料なんかの補充を、お願いしたいんだけど」

「ああ、たいした武器はないけどバンバン使って暮れ。ただ、前線に運ぶのは俺らじゃ、無理なんだよな」

アカリも、その事は予想してたみたいで、思案に暮れてると

「それは、私達にお任せください」

「あれ、あなた達確か」

「その節は、お世話になりました」

群衆の中から現われたのは、このパークタウンに来る時助けた、商隊の人達だった。その中から、やけにカップクの良い人が前に進み出て

「私は、この商隊を率いる音羽 銀次と申します。アカリさん達が居なければ、私達は依頼が達成出来ずに困り果てていた所でした」

「それに、我々商人は商人の誇りに掛け、借りた恩は必ず返す事にしているのです」

「ありがとう。でも前線はシャレにならないレベルで、危ないよ」

そうだよね。いくら商人が多少戦えるって言っても、今回は無理だよ。

「それについては」

銀次さんが道を開けると、商隊の中から一人の少女が現われた。髪型をサイドアップにした茶髪の少女は、ジーンズの短パンにタンクトップ赤のジャージ。こんな子居たっけ。

「こないだは、商隊を救って頂きありがとうございます。アカリさんサツキさん。改めて、お礼を言わせて下さい」

私達の前まで来て、お辞儀をする少女。間近で見ても記憶に無いみたい。アカリもキョトンとしてる。

「私の命を救って頂き。ありがとうございました」

「私たちが?」やっぱりアカリも覚えていないみたい。

「私、強い呪い受けちゃて」

「もしかして、カウント」そう言えば、アカリ聖女だったよね。呪いのエキスパートだもん。

「はい。あの日がラストカウントで、危うくアカウント消える所でした」

「そんな強力なのを、じゃあ、あの日運んでたのって」

「聖女さまです。私、動けない状態だったから。なので、あなた達には返し切れない恩があるんです」

「こう見えて、私メチャメチャ強いですから、商隊を守る位へっちゃらです」

「あっ、すいません。自己紹介まだでした。私、春野はるの 彩花あやかて言います。よろしくお願いします」

「うん。ありがとう。それじゃあ商隊は、お願いね」

「はい」と元気な返事。

もしかしたら、アカリも呪い解除出来たのかな。あの服装だと、聖女とは思われ無いから気づかれなかったかも。

そんな事を思っていると、なにやら、熱い視線を感じる。視線を、たどれば彩花さんがガン見してた。

「サツキさんて、相当強いですよね。アカリさんの相棒て言うのも頷けます」

「なっ、私なんて全然だよ」

私が、全力で否定してるのに。既に周りの視線が私に集まってる。引きこもり気味の私としては目立ちたくないんだけど。

「それじゃあ戦場で」と去っていく彩花さん。アカリといい。あの人も、何で私を強いと思ったんだろ。

「これで、物資の補給の懸念も消えたから、説明は、これで終わりなんだけど。今回の戦いは、

初戦が一番の山場なんだ、上級魔法を放った後は小型や中断のモンスターも巻き込まれて消滅するから、

楽に成るんだけど、それまでは大量のモンスターを相手にしないといけないんだ。だから」

逃げるなら、今が最後とでも、言いたかったのかも。しばらくの静寂の後、そこかしこから、笑い声が

聞こえだす。

「なあ、あんた達は、その大群の最前線に立とうとしてるんだよな。しかも、たった二人で、それなのに、俺らの心配するとか、どんだけ良い子なんだよ。つい笑っちまったぜ」

アカリの意図を理解したみたい。にしても、今話した人バカでかい剣持ってたなぁ。

「本当なら、俺達が最前線に立つべきなんだけど、近接は大群相手だと対処しきれないんだよな。

すまんな、大役を任せちまって」

ひげ面の、バイキングみたいな人の発言に

「いいよ。いいよ。私たちが自ら言い出した事なんだから」

と、笑顔のアカリ。この娘ずっと笑顔のまんまなんだよね。多分、皆に不安にさせないように頑張ってるんだ。後でホッペをムニュムニュしてマッサージして上げよう。

「アカリさん。サツキさん」

あっ、さっきのオッ〇〇の大きなお姉さんだ。

「私たち、あなた達が危ないと思ったら、速攻で魔法使うから」

「そうならない様に、頑張るよ」

突然の静寂。そして、凛と佇むアカリが

「みんな。これから挑むのは、前人未踏のミッションだけど。そんなのは、私たちには全然関係ない。

この町に向かって来るなら。私たちは私たちの全力で、これを叩き潰すまでです。みんなヤルよ」

「おおーー」大歓声。

目の前ではメガネっ子が「やっちゃうぞー」と飛び跳ねてるし。

オッ〇〇の大きなお姉さんは、何故か唇に手を当てクスクス笑ってる。

良い感じに盛り上がってきたし、私も頑張るかー。それにしてもアカリ凄いな。一人で皆をまとめちゃたよ。しかも、あの娘私のフレなんだよね。へへへへ♪。

時刻は午後1時を少し回った所。私達は、町から少し離れた小高い丘の上に布陣を構えていた。陣形は、

相手と同じ逆Ⅴ字の形を取り、先頭を私達。側面を盾持ちで覆い、その後方から魔法使いが攻撃。魔法使いのMPが減ったら、近接が切り込むと言う流れで行く事になっている。そして、左右にはバカでかい大剣の人とバイキングみたいな人が、それぞれの陣頭指揮を取って暮れてる。こう言うの、凄く助かるよね。

先頭には、私達と10人の上級魔法の人達。それと弓使いの子が一人。この子遠見が出来るからと、同行を希望して来たんだけど、アカリが「危ないよ」と言っても「私、近接も強いんで」と付いて来てしまった。ちなみに、遠見とは、弓使いのスキルで遠くが見えるものなんだ。アカリも戦況に役立つからと、了承したみたい。

「サツキさん アカリさん。まだ自己紹介してませんでした」

「私、彩花お姉ちゃんの妹で花菜って言います。よろしくお願いします」

と、挨拶して暮れる。さっきは移動中で気が付かなかったけど、間近かで見ると、ポニーテールのクリッとした目の美少女。ヤバイ、美少女来ちゃった。私がアカリを羽交い絞めにしようと、にじり寄ると

「花菜ちゃん。彩花さんの妹なんだ。いいなぁ彩花さん」

(サツキ、妹属性来ちゃったよ。どうしよう)

(属性じゃ無くて、ちゃんと妹だから)

(そんな事いわれても、私どうしたらいいの)

(どうにもしないで。ジッとしてて)

私達が、小声で言い争ってるのをジーと見ていた妹ちゃん。

「あのー、お二人共どうかされました?」

「平気平気。アカリね美少女が近づくと、鼻血出す病気なんだ」

「病気?ああ呪いの事ですか。すいません花菜、美少女で」

(その反応も、どうかと思うけど)

とりあえず、アカリを落ち着かせようと振り返ったら、アカリの姿が無い。

「サツキ、来た。始めるよ」

見れば、オオカミの群れをアカリが迎え撃つのが見えた。この世界のモンスターはリアルの動物を模したものなんだけど、角やら牙やら生えててメッチャ凶悪なフォルムしてる。

それじゃあ私もと、中央のブットイ線の右側に移動する。この線アカリが、こっからこっち私のね。と

線を引いたんだけど、私の方が狭かったから引き直した結果こうなった。

アカリはと、見れば既に戦闘が始まってた。なんか、アカリ焦ってる様な。とりあえず、私も持ち場にと駆け出す。

「サツキさん」

現場に着いたら、赤いローブの魔法使いの人に声を掛けられた。心配で声を掛けてきたみたい。

ここは、小高い丘に成ってて周りは緩やかな斜面に成ってる。そこを、迫りくるモンスターの群れが大地を染め上げて来てるんだから、怖いよね。

大丈夫だよと、手を振り私が斜面を少し下ると。先頭のオオカミ系のモンスターが見えてきた。

デカい、牛くらい有るんだけど。

(大きい方が当て易くていいよね)

とか、思いながら腰の二本のワンドを引き抜く。それを正面に構えると

「アイス ガトリング」

力有る言葉によって、二本のワンドから射ち出された無数の氷の弾丸が、正面のオオカミの群れを打ち砕いていく。この魔法、射出速度を上げているから貫通力もかなり有る。

そして、打ち出しながら二本のワンドを、それぞれ左右に広げていく。

(アレッて、ダブルスペルよね。使える人初めて見た)

後ろから、そんな言葉がヒソヒソと聞こえて来る。本来ワンドを二本持って魔法使っても、発動するのは

片方だけなんだ。

大体回りのモンスターが一掃出来たので、一息入れた時だった。そいつは突然現われた。前方から、あらたに迫り来るモンスターの群れを飛び越えて来たから、そう言う風に見えたんだけど。

見た目は牛なんだけど、サーベルタイガーみたいな牙生えてる。既に私の直前まで迫ってた牛さんに

「アイス ガバメント」

力有る言葉に氷の弾丸が撃ち出された。同時にバーンと言う射出音と共に、私の肘から先が跳ね上がる。

極限まで射出速度を上げると、こういう事が起こるみたい。

凶悪な一撃を受けて霧散する牛さん。魔法は、距離が近い程威力が高いから弱い魔法でも、それなりに

使える。そうこうしてる内に第二波が、迫って来る。登り坂なので、速度は早く無いけど、とにかく数が多い。後方には、魔獣の姿も見られた。魔獣はモンスターと違い、どちらかと言うとキメラが近い印象

大きな違いは魔獣は全てがユニークスキルを持ってる。火を吹いたりするのだね。

(仕方ない。アレを使うかぁ)

私は、二本のワンドを重ねて握り、力有る言葉を唱える。

「アイス バルカン」

「こんにゃろ~う」

ズガガガと、凄まじい発射音と共に無数の氷の弾丸が撃ち出された。この魔法ガトリングの強化版なんだけど、その射程距離と破壊力が凄まじく、振動も凄いので両手で持たないと、どこに飛んでくか分からないから、ついつい声が出てしまう。一斉掃射が終わった時には、広範囲のモンスターが消えてた。

(よし、これで暫くは大丈夫でしょ)

私は、アカリの様子を見ようと丘を登り。さて、何処に居るかなと辺りを見回してると、オオカミの群れと対峙してる所だった。アカリが宝剣を手に角の生えたオオカミに切り掛かると、その切っ先が触れた瞬間ボッと燃え上がり消滅した。

(あれって、魔法剣だったんだ)

魔法剣は魔力を強化する機能も付いてる激レア品。魔法使いの人達はと見れば、見惚れてるが最も近い

かな。そんな表情してる。ちなみに、妹ちゃんも。

そして、モンスターの群れに宝剣を一閃二閃。すると、炎の波がモンスターに押し寄せた。

「魔法剣に、あんな使い方あるんだ」

私の横で魔法使いの人達が、話してるのが聞こえて来るんだけど、本来魔法を行使する時は相手をロックオンして打つのが普通。もちろん魔法剣も同じなので、あんな風に使うと魔力が拡散して効果が落ちるはずなのに、燃えちゃてるんだよね。モンスター。

燃え上がるモンスターの群れをを搔き分け、アカリに襲い掛かる巨大熊を後転して、つま先で熊のアゴを打ち砕くと、アカリが一瞬消え私達の前に現われた。そこに炎を避けたオオカミの群れが襲い掛かる。

「えりゃあー」

と先頭のオオカミに回し蹴りを、叩き込み。二匹目に後ろ回し蹴りを食らわせ、二匹を後方の群れに吹っ飛ばす。巻き込まれたオオカミの群れごと霧散していく。

新たな群れに、炎の波を一閃。炎の波に付いてアカリが切り込んでいく。

その頃、後方では飛んでもない事態が起こっていた。

「後方が破られた。誰か、支援に回って暮れ」

見れば、南門近くの戦線が破られ、なだれ込んで来たモンスターの群れにビーストゴーレム達が迎え撃つ

所だった。

「私が行きます。皆さんは、ここをお願いします」

そう告げて、破られた戦線に向かう彩花さん。

現場に着いた、彩花さんの第一声

「土っ子の皆さん。ゴーレム下げてください。私の攻撃に巻き込んでしまうので」

ゴーレムが退くと、再びなだれ込むモンスターの群れ。そこへ、彩花さんが扇子を飛ばす。紙ヒコーキの様に飛ぶ扇子がモンスターに当たると、そのまま切り裂き2、3体切り裂くと耐久力が無くなったのだろう扇子が霧散する。それを、次から次へと飛ばして行く。彩花さんが早く動いてる様には見えないけど、

飛んでく扇子の量が、半端ない。あっという間にモンスターの群れを、押し戻してしまった。

「今です。体制を立て直して」

「おおっ」

と戦士達が、破られた戦線を塞ぐ。その頭上を、巨大な扇子に乗った彩花さんが飛び越えモンスターの群れに、突撃する。どうやら、モンスターが多過ぎて、また破られるのを考慮してのことみたい。

着地した彩花さんが、巨大な扇子を大上段から振り下ろす。

「飛んでけー」

彩花さんの気合いの入った言葉とともに、前方に居たモンスターの群れが、空中に吹き飛ばされ霧散していく。

「もう一発」

更に掬い上げられた扇子によって、モンスターも巻き込んで地面がメクレかえる。そのまま周辺のモンスターを巻き込みながらゴロゴロと転がり、巻き込まれたモンスターが消滅すると、地面も元に戻った。

どうなってるんだろう。

自分で強いからと、言ってたけど。確かに。この短時間で100体位倒してるから相当の使い手みたい。

場面は前線に戻ります。

炎の向こうで戦ってるので、アカリの姿は見えないけど善戦してるのは分かる。モンスターの数が目に見えて減っているから。

私も、そろそろ持ち場に戻ろうした時だった。

「きゃっ」

悲鳴を聞いた気がして、振り返るとモンスターの群れの中から何かが、放物線を描いてこちらに飛んでくるのが見えた。

「サツキさん。あれアカリさんです」

妹ちゃんの、慌てた声に私は、その場で飛び上がりアカリの落下地点の逆方向に最も反動の強い魔法をブチかます。そう、私の体を落下地点に届ける為に。反動で空中をぶっ飛ぶ私の視界に、アカリが見えた。

なんとか、アカリを抱き留め、着地と同時に回復薬を2本取り出す。その1本をアカリの口に突っ込み、もう1本傷口にぶっかける。空いた小瓶を投げ捨て、ワンドを握ると後ろから迫り来るモンスターの群れに後ろ向きのまま、ガトリングを浴びせ掛ける。

「この子、今無詠唱で」

「そんな事は、いいから」

「サツキさん。アカリさんは私達が」

駆け付けて暮れた二人の魔法使いのお姉さんにアカリを託し、前線に赴くと、そこに黒い虎の群れが居た

。そして、後ろから妹ちゃんの声がした。

「サツキさんの持ち場は、花菜が」

「ありがとう。お願いします」

私は、振り返る事が出来なかった。

(こいつら、モンスターじゃないかも)

見た目は既存の動物なんだけど、雰囲気が違う。多分魔獣。私がワンドを構えた時、黒虎の群れを押し退け、そいつは現われた。周りの黒虎より一回り大きい。さしずめ、この群れのボスって所か。

そいつが、進み出て来た時。その足爪に赤いモノが付いているのに気づいた。

(あれは、アカリの血)

そう思った時、私の中で有る光景がフラッシュバックした。

壇上に立つ前、一生懸命に説明の構成を考えてるアカリ。

嫌な態度を取ってくる人にも、優しく丁寧に説明するアカリ。

常に笑顔で周りに不安を与えない様に頑張るアカリ。

「そうか、おまえか」

問答無用でガトリングをブチかます。

ネコ科の動物は、他の動物に比べ反射神経が優れているので、あっさりコレを避け私に肉迫して来る。

飛び掛かって来たボス虎の下に体を滑りこませ、その腹にガバメントを解き放つ。

その時、信じられない事が起こった。ボス虎が、空中で体を横転して避けたのだ。

再び、対峙する私たち。

私は有る事に気が付いた。

私、笑ってる。理由は分からない。だが今は、そんな事どうでもいい。全て後回しで、最優先はアイツをブッ倒すことのみ。

「アイスリンク オン」

力有る言葉に、ハーフブーツの下の地面だけが凍る。まるでスケートリンクの様な氷に

「コロシテヤルから、掛かって来い」

私の言葉に反応したかの様に、ボス虎が体を大きく左右にステップし私に牙を突き立てようと、迫って来た。その牙が私に届く寸前。ボス虎の顔面にガバメントを解き放つ。それを、いともたやすく躱す。

ガバメントを撃った衝撃で、私の体が氷の上を滑る様に後退する。魔法を撃った衝撃を利用した私の戦闘時の移動手段。

追撃して来るボス虎に、後方に滑りながらボス虎と、その右側にガバメントを撃つ。

先程から、見ていて気が付いたんだけど、ボス虎は回避する時、必ず右に回避する。狙いは、的中し魔弾は当たったけど、肩の一部を凍らせたに過ぎなかった。それでも、直ぐ襲って来ないから、動きに支障が

出てるのかもしれない。

ボスのピンチを察し、私に迫って来る2匹の黒虎をボス虎との直線上に誘導し。私、自らが挟み撃ちの形を作り上げる。正面から、襲い来る2匹の黒虎と背中を向けた私に、チャンスとばかりに襲い来るボス虎

タイミングを見計らい、私は地面にガバメントを解き放つ。空中に飛ばされた私の目に映ったのは、目標を見失いもつれあう3匹。そこへ

「アイス ネット」

巨大な氷の網が、覆い被さる。捕獲用のネットを模した物なんだけど、私のは、強力なので捕まえた黒虎達をギシギシと締め上げ、更にピキピキと凍らせ始める。わずかな時間で霧散する3匹。

(ダメ。こんなんじゃ全然足りない)

私が、残りの黒虎を処分しようとワンドを構えたんだけど。ボス虎の消滅を確認した黒虎達が、立ち去り始めた。やはり、魔獣だったみたい。モンスターなら、撤退はしないから。

「逃げんな」

ガトリングの一斉掃射を浴びせ掛けたのだが、それを器用に躱し立ち去ってしまった。

「なっ」

私の、この感情の捌け口が無くなってしまった。絶望にも似た、この感覚。

その時、斜面を駆け上るモンスターの集団が見えた。巨大な角を持つ鹿の群れが私に向かって来る。

(そうだよね。マーチなんだから、こんなんで打ち止めとか、有り得ないよね)

「アイスリンク オフ」

移動用の魔法を解除し、私は嬉嬉として魔法の溜めに入る。本来、上級魔法の時だけ溜めの時間に様々な現象が起こるんだけど。私が使おうとしてる、この魔法中級なのに、その現象が起こってしまう。

私の両肩に、幾つもの発射口を備えたミサイルポッドが出現した。

「アイス ランチャー」

力有る言葉に撃ち出される無数の氷のミサイル。それは、着弾すると氷爆し辺りに氷煙をまき散らす。触れたモノを凍らせ、属性の相乗効果で中級のモンスターまで凍らせて行く。それを、乱射し続ける。

「アハハハ」

なんか、笑ってるんだけど私。大丈夫か。

「サツキさん」

声を掛けられ、振り向いた私に一瞬恐怖の色を浮かべる赤いローブのお姉さん。

私、どんな顔してたんだろ。

「なに、どうかした」

「アカリさん回復薬、効き始めました」

「そっか。良かった」

スチャっと再び、ワンドを構える私の肩に、そっと手を置く赤いローブのお姉さん。

「もう大丈夫だから。大丈夫だからね」

優しくササヤクお姉さんの声に、斜面を見下ろすと一面氷の世界に成ってた。しかも、その先の平原まで

真っ白。今、初夏なんだけど。

(これ、私がやったの。こんな子に育った覚えないんだけど)

赤いローブのお姉さんに、連れられてアカリの元に行くと、お〇〇の大きなお姉さんに抱き抱えられた

アカリが、足を伸ばして座っていた。近づく私に気付いたアカリが、弱々しく手を振って来る。

「アカリ、大丈夫」

「うん。ありがとお。もう少しで動ける様に成ると思うよ」

私が、アカリの隣に座ると

「サツキ、アタシ焦ってたのかも」

「だね。ここは、ゲームなんだから楽しまないとって、アカリが教えて暮れたんだよ」

「そうだったね。アタシ忘れてたよ」

「それと、アタシの代わりに頑張って暮れて、ありがとね」

「気にしないで、私相棒なんでしょ」

エヘッと、笑顔を見せて突き出されたコブシにコツンと、私のコブシを当てる。

「ここは、当分大丈夫そうだから私、妹ちゃんの所に行って来る」

私たちの見下ろす先には、魔力が拡散し始めた為。吹雪に成ってる大地が見える。

「大丈夫そうだね」

アカリが、若干引いてる様な気もするけど。済んでしまった事は気にしない。

私が、立ち去ると。赤いローブのお姉さんがアカリの横にしゃがみ込み

「アカリさん。サツキさんて何者なんです。さっき無詠唱使ってたみたいだし。それに、あんなに魔法使ったのに、平気にしてるとか普通じゃないですよ」

「そうだね。とんでもない娘だからねサツキは」

その頃、私は妹ちゃんの所に辿り着いたんだけど、妹ちゃんの両脇に置かれた矢ずつに驚いた。一個一個がドラム缶位有る。しかも片方は、既に空にに成ってる。

「お疲れー、ありがとね」手を振る私に

「あっ、サツキさん。アカリさんは、大丈夫でした」

「うん。大丈夫。回復薬、間に合ったから」

「良かったー。サツキさん花菜、切りの良い所まで、やりますから」

そう告げて、矢を射ち始めた妹ちゃん。

私も、初めて見る弓使いの戦いに興味が有ったから、見学させてもらう事にした。

弓事態も変わっていて、真ん中と上下に持ち手が付いてる。矢も一度に4,5本を左右に射ってるから、

あっという間に矢が無くなって行く。

(何で正面残してるんだろ)

左右の群れが消滅し正面の群れだけ残すと、矢は殆ど無くなっていた。そこへ、襲い来るモンスターの群れに弓を、ブン投げる妹ちゃん。

(弓投げちゃったよ)

これは、マズイとワンドを引き抜く私。しかし、それは杞憂で有ったようで。投げられた弓が先頭のモンスター数体を切り倒し、空中に跳ね上がるとブーメランの様に妹ちゃんの元に戻ってきた。

よく見ると弓は金属で出来ていて、外側に刃まで付いてる。あんなにシナル金属って何だろう。

妹ちゃんが弓をキャッチすると、口に黒い矢を咥えモンスターのモンスターの群れに切り込んで行く。

(正面を残したのは、最初から切り込むつもりだったんだ)

この時、持ち手の部分が三ヶ所有る理由を、私は理解した。乱戦の時は真ん中を持ち、敵との距離が取れると端の持ち手を掴み、大振りの攻撃に切り替える。自分の状況により、攻撃パターンを変える為の物だったみたい。

そして、切り進み最後尾に達した時、そいつは居た。ミノタウロス、牛の頭をした獣人なんだけど、デカい3メートル以上有りそう。しかも、棍棒持ってるし。それを、振りかぶり妹ちゃんに叩き付けて来る。

ギリギリで躱し地面に、めり込んだ棍棒に切りかかる妹ちゃん。なんと、棍棒を両断してしまった。

なんて切れ味。棍棒を切られた事で、僅かに体制を崩したミノタウロスに追撃を掛ける。

だけど、傷を付けた程度で終わってしまった。ミノタウロスが物理攻撃に強いのは知ってたけど。

まさか、棍棒より上とは。どんな筋肉してるの。

物理攻撃がダメならと、私がワンドを構えると、それに気付いた妹ちゃんが私に微笑む。

(何か策が有るって事かな)

武器を失ったミノタウロスが、妹ちゃんに掴み掛かりに来るのを、バックステップで躱す。見れば、腰にダガーが装備されてる。掴み掛かろうとして、体制を下げたミノタウロスの頭上に向け、ジャンプして

バックステップで移動。移動しながら体を一回転。ミノタウロスの頭にかかと落としを叩き込む。

ダメージは少ないみたいだけどミノタウロスが、うつ伏せで地面に倒れ込んだ。

妹ちゃんは、後方にバックステップ2回ミノタウロスと距離をとると地面に足を伸ばして座り、両足で弓を構え黒い矢をツガえる。それを、体の全てを使って引き絞って行く。極限まで曲がった弓から射ち出された黒い矢が、上体を起こしたミノタウロスの胸に突き刺さる。途端にミノタウロスが燃え上がった。

(あの黒い矢は、魔法の付与された物だったみたい)

ミノタウロスが消滅したのを確認すると、笑顔で手を振る妹ちゃん。

(弓使いって私が思ってたのと、全然違うんだけど。)

そして後方では、

「なんか、急にモンスターが減って来たけど前線で、上級魔法使ったのか」

「いや。反対側は減ってないから、それは無いと思うけど」

「ここは、俺らで十分みたいだから。魔法使いの嬢ちゃん達は、反対側の支援に回って暮れるか」

「分かりました。MPの減ってる人は町に戻って。余裕の有る人は、反対側に行きますね」

指揮を取って暮れてたのは、あのメガネっ子ちゃん。数人の魔法使いを連れて反対側に、辿り着いた時

目に入ったのは、とんでもないモンスターの数。よく、持ちこたえてた思う。何時、決壊しても可笑しく無い状況。{私がヤラカシたせいで、モンスターが片方になだれ込んだみたい。ごめんなさい}

(仕方ないですよね。アカリさんにオコられたくは無いんだけど)

「皆さん。前を開けて下さい。感電しても知りませんよ」

メガネっ子ちゃんの言葉に、振り向いた戦士達の目に飛び込んで来たのは、全身をパリパリと放電している少女の姿だった。放電してる所から、既に発射体制に入ってるみたい。

「ヤバイ。雷使いだ」

「みんな、ここから離れろ」

雷系の魔法は、コントロールがとても難しいから、使う人少ないんだけど。効果範囲は、とんでもなく広い。

戦線に穴が空いた事で、なだれ込むモンスターの群れにメガネっ子ちゃんが一歩近づく。

途端に、なだれ込んで来たモンスターの群れが放電に触れ麻痺しだす。力有る言葉を唱えず一歩一歩戦線に近づいて行くメガネっ子ちゃん。どうやら、魔法の効果範囲の調整をしてるみたい。そして

「ボルティク フィールド」

力有る言葉に応え、雷の龍が地面を駆け巡る。縦横無尽に雷が飛び交っているのに、誰一人感電してないのは、凄まじい集中力とコントロールの成せる業だと思う。

遊び疲れたかの様に、天に昇って行く雷の龍。フィールドには、今だ燻る雷の痕跡だけが残っていた。

急激な魔力消費による疲労で、ふら付いたメガネっ子ちゃんをバイキングの人が支え。

「凄いなアンタ。お陰で助けたぜ」

バイキングの人に、そう言いながら背中をポンと叩かれる。

「えへへへ。ありがとうございます」

戦線は、安定したものの最前線は、大丈夫なんだろうか?誰もが、不安に思っていた。今だ上級魔法が打たれていないのだから。後方では、最前線の様子は分からないから仕方ない。

前線では、回復したアカリと私が戦闘を繰り広げていた。そこへ、弓の補充を終えた妹ちゃんが戻ってきて着くなり、遠見を発動。

「アカリさん。大型見えて来ました」

「うん、分かった。みんな詠唱開始して」

上級魔法は、力有る言葉だけでも発動するんだけど詠唱を加える事で、威力が何倍にも膨れ上がるんだ。

実は、魔法使いの人達「これ位なら大丈夫」と初級魔法でサポートして暮れたりして、結構仲良しさんに

成ってたりする。そして、アカリの魔法が響いた。おそらく風魔法だと思う。

「みんな大型見えて来た。もう少しだから、頑張って」

アカリの声は後方にまで届き。それを聞いた戦士や魔法使い、商人までもが

「良かった。みんな生きてた」

「まったく、心配させやがって」

「アカリさん。無事みたいですね」

それは、たった二つのちっぽけな希望だった。それが、あまりの過酷さに絶望へと変わり始めた頃、

アカリの声が聞こえて来た。。それは、希望が奇跡に変わる瞬間だったのかもしれない

今、後方の戦線はサツキのヤラカシとメガネっ子ちゃんの頑張りでモンスターが、激減しているので

戦士達は、交代しながらスタミナの補給や武器の補充に務めていた。

「お前ら、今の聞こえたか」

バカでかい剣を持った戦士の声に、全員が注視する。

「あの娘たち。生きてて暮れた。生きてて暮れたんだぜ」

自分たちが体験したのだから分かる。あれは、一人や二人で対処出来るモノでは無いと言う事に。

「あの二人が頑張ってるのに、俺たちがヤラレル分けには行かないよな」

「それに俺らがヤラレルと、あの娘ら絶対悲しむから。それは、一番ダメなヤツだと思うが、違うか」

「そうだな。もし勝てたなら、あの娘らには笑ってて貰いたいしな」

「なら、俺らは全力で戦って全力で生き延び伸びなきゃ行けないって事か」

「こりゃあ大変な話しだな。でも俺らの後ろで頑張ってる魔法使いの嬢ちゃん達も居るんだし

何が何でもヤラレル分けに行かないって分けだ」

周りの戦士達の呟きに

「そうだ、ここに居る全員で戦い抜き。生き抜いてやる。お前ら気合を入れろよ」

「オオオー」

でっかい剣の戦士の言葉に、戦士や魔法使い。商人までまが声を上げる。

その頃、防壁の上では土っ子達が車座に座り、金髪の少年が運んで暮れた、おにぎりにパク付いてる時にアカリの声が聞こえて来た。

「弓使いの人に見てもらって、無事なのは分かってたけど。やっぱり声聞くと安心するよね」

ご飯粒をホッペに付けながら話してるのが、土っ子のリーダー松田 舞ちゃん。

「私は全然心配して無かったけどね」

一番心配して挙動不審に成ってた、ツインテールの子の呟きに。他の子達がジト目を送る。

視線に耐えかねたツインテールの子が

「リーダー話があるって言ってたけど」

「そうだった。戦ってて気付いたんだけど、襲って来てるモンスターって、この町が通るのに邪魔だから

攻撃して来るだけなんだよ。だから、素通りするモンスターは攻撃しないで。刺激すると余計な戦闘が増えちゃう」

「さすがリーダー。一番身長高いだけは、あるね」

それ、褒め言葉なの。何故か舞ちゃんテレテレしてるし。

そして、土っ子達の密談続いて行った。

「次回予告 ついにアカリが可愛い子をゲット」

これ一度やってみたかったんだよね。

「ゲットしちゃダメでしょうが」

「なんでよ~。アタシ本能に忠実に生きる女なの」

「本能に忠実なのもダメ」

「もう」

すみません。冒頭から、アカリが暴走モードで

改めまして、十文字サツキって言います。エピソード2では、なんと死者0と言う偉業を成し遂げ

3章に突入したのですが。

「やっと、大物狩りのシーズン来たー」

「アカリ、私たちは護衛なんだから、狩っちゃあダメ」

「えええー。いいじゃん、アタシも魔法ぶち込みたい」

「そんな事したら、護衛誰がやるのよ」

「サツキ」

「アホなの、無理に決まってるじゃん」

「しょうがないな~。前半だけ頑張るよ」

「前半だけ?。まあいいわ。私後書き続けるから」

次回も戦闘中心の物語なのですが、初めて上級魔法を目にした私は、その壮絶な破壊力とド派手な

演出に、私も修得しようかと思った位です。修得出来ないのですが。

後、最後の方で私に災難が訪れるのですが。今、思い出してもトリ肌もんの、流石にリピートする勇気は

無いので後書きは、この辺にさせて頂きます。

ちなみに、アカリは寝ちゃってるので、この後顔に落書きしてやろうと思います。

それでは、又次の物語でお会いしましょう。

最後まで、お付き合いいただきありがとうございました、               サツキ

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