第3話 傾国の狐 揺れる教室 戦え男子よ
クラスメイトの心は一致団結した。
ウカノミ先生に滅されない様に羽目を適度に外しながら青春を謳歌すると。
「さてさてそろそろ自己紹介といきますか♪あ、家名が無い方もいるのでそこは自分の名前だけで紹介お願いしますね」
やんごとなき事情なんてあるのか。
凄いな、そんなに家柄が良かったりとかなのかな。
あれ、そういえば牛鬼君もこれだけ人当たりがいいのに周りの常世人がちょっとだけ遠慮してるのも何かあるのかな。
うーん、全然常世人の文化が分からないなぁ。
神見?もなんか常世人の人たちはある程度分かってるみたいだったし
それに直通系がどうのこうのって話も気になる。
そういばウカノミ先生が神の加護とも言ってたけど僕も加護が貰えたのかな?
んん?門番してた阿形吽形がヤタの御仁とか言ってたのも気になってきたぞ。
今まで気にもしてこなかったけど気になってきて少しだけ自分の世界が広がってきた感じた。
あ、やべ自己紹介全然聞いてなかった。
大分順も進んだ所であの子がいた。
同じクラスだったんだーってボケっとしてたらクラスに衝撃が走った。
こほんっと小さな咳をついて彼女は壇上にあがり
「こんこんきーつね!白葉と言います!」
白の長いストレート髪にぴょこんと生えてる狐耳、すらっとしたスタイルに腰より低い位置から、もこもこの白い尻尾をふりふりしながら彼女は手で狐の形を作りながらニコッと笑った。
撃ち抜かれるような音がしたに違いない。
・・・・・・沈黙。否フリーズ。
「あれれ?もしかしてこれってこっちだと正しい挨拶じゃない・・?」
あまりの反応のなさに困る彼女。
ぴくぴく片耳が揺れながら困惑してあたふたし始める彼女。
それすら可愛く目の前で狐耳の美少女があたふたしてる。
控えめに言って可愛い。
周りを見れば欠伸をしてる牛鬼君と寝ている黒ずくめの男子と一部の女子を除いて口が開いている。
「あれあれ?これすれば友達100人できるってひいおばあ様が言ってたのに・・・」
間違ってないです。ひいおばあ様。
ただ。
ただ。
思春期の男子には刺激がーーー強すぎます。
突如沸く教室。
うおおおおおお!?!?
狐美少女キタァァァァアアアアア!?
嫁きたあああああ
!?!?
あまりの声の大きさに狐耳をきゅっと閉じて目を閉じすくむ彼女。
かわいいいいいい
青春キタコレェ!
連絡先を!!
拙者、結婚を前提に(ry
さっきまで静まり返ってた分、反動は凄まじく止まらぬ質問の嵐。
彼氏はいますか、許嫁はいますか、将来を誓い合った人はいますか、伴侶になってもいいですか
お家にご挨拶に伺ってもいいですか、尻尾触ってもいいですか、
いや似た内容の質問になんならセクハラしてんじゃんって思いながら
すげー人気だなぁって。
流石に彼女もあたふたしていて一つ一つの質問に返事しなきゃってなってきたところで
パンッッッ
物理的に揺れたんじゃないかって位に柏手が響き窓がびりびりと揺れた。
熱狂的な質問の嵐は一拍の柏手にかき消され、微笑むウカノミ先生。
「はいはい、白葉さんが困ってますよ?おいたはその辺にしましょうね?」
「「「は、はい・・・ウカノミ先生ごめんなさい」」」
「はい、間違った事をして謝れるのは素直で大切な事です。先生素直な子たちの担任になれて嬉しいです♪」
近いうちに誰か滅されても可笑しくないなと思いました。
「えっと、すいません先生、ありがとうございます」
耳をぺたんと下げて申し訳なさそうに謝る仕草すら可愛い。
あ、勘違いしないで貰いたい僕は今男子の気持ちを代弁してる過ぎないからな。
「いえいえ、続きをどうぞ」
「はい!改めて白葉と言います!同年代の狐族以外の方とは初めての交流となりますので至らぬ所があるかもしれませんがよろしくお願いします!」
「は、初めてぇ!?俺が初めてだと!?」
「滅しますよ?ゲコタ君」
「すいませんでしたっっ」
言って3秒で土下座してるやつがいる
「白葉さん、結婚してください!」
「待て待て出会って何すぐ結婚申し込みしてんだよ!?」
「これは運命の出会いだ!白葉さんは純白のドレスが似合う!式はどこで挙げようか!」
「てめー抜け駆けしてんじゃねーぞ!?」
「ああん!?」
「やるか!?ごらぁ?」
「滅しますよ」
「「すいませんでしたっっ」」
コントかよって思えるくらいに思った事を口にする面々に僕は衝撃を受けていた。
すげー。
俺ら人はここまで思ったことを言葉にして口に出さないのに
常世人は思ったことを素直に言葉にして言ってくるんだな。
今まである意味では裏とも言える世界にいたのに。
言い方としては正しくないかもしれいし、それこそ失礼な物言いにはなるが表にいた俺らの方がよっぽど裏表があるなぁって。
表に生きて本音を裏で、裏に生きて本音を表に。
今までの普通がまた違った見え方がしてきて自分が恥ずかしく見えてしまった。
「なんか、かっこいいな」
思わず口に出た。
さっきまで眠そうにしていた牛鬼君が反応する。
「あん?白葉のご令嬢がか?」
「いや、今バカやってる奴ら」
「いや、バカやっててかっこいいってなんだそりゃ」
「バカはかっこ悪いよ。でも思ったことを素直に言葉にできるのって凄いなって表裏がないのって凄くない?」
金色のギラっと輝く目が一瞬まん丸になりガハハと笑い肩を叩いてくる。
「ほんと面白いないろはは」
ガハハと笑う牛鬼君。
むむマジでかっこいいと思ったのに。
むーっとちょっと不機嫌そうにむくれる僕。
「俺ら常世人はよ、嘘が最大の悪なんだよ。だからそこに表も裏もないんだ。言葉にして伝えなきゃ伝わんないんだ。まぁ俺ら牛族は力が物をいうがな」
ガハハ
「はー、本音と建前がないのって楽だねぇ。中学の時なんてある日突然話さなくなるなんてザラだったのに」
「めんどうだな。殴って拳で語り合えばいいじゃねぇか」
「すぐ殴る思考は辞めなよ」
ガハハ
「そうは言うがよ、あんなご令嬢巡って火花散らしてる奴らも大概だぞ」
「いや、確かにそうだね」
「まぁ俺としてはだが、どうにもあいつらには勝ち目はねーと思うんだけどな」
「ええ?もう既に引かれてるから?」
「んや、ご令嬢はもう見つけたと思うぜ」
「見つけた?何を?」
ガハハと笑って肩を叩いてくるだけでそれ以降は何を見つけたかを教えてくれなかった。
席に戻る白葉さんと一瞬目があった。
ニコッと微笑んで小さく口が動いたが生憎僕は聞こえなかった。




