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喫茶モンブランの相談窓口〜依頼料はコーヒーで〜  作者: pippo
第二話 消えるチョークの謎

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チョークの使い道

「お兄ちゃん、教えて!」


香織の言葉で、マスターに皆の視線が集まる。


「そうだね。では、一つずつ可能性を精査しながら答えを導くとするか。」


マスターは香織と紗奈の顔を交互に見ながら微笑みかける。


「さっき言っていた、水曜日に活動しているクラブは数がちょっと多すぎる。そこから、直接犯人を導くのは非常に至難の業だ。だから、まずは和栗さんの言った通り、チョークの使い道の方から考えていこうか。チョークの使い道について2人は何か思いつくかい?」


「さっき言った黒板アートとか、地面に線を引いたり、普通に板書したり。他には、、、」


香織は言葉に出しながらも他の用途が思い浮かばず首を傾げている。


「あ、そういえば。私、短くなったチョークは肥料として使うことができると聞いたことがあります。」


和栗が手を鳴らしながら答える。


「そうなのかい?」


茂さんは初めて聞いたのだろう。少し驚いた表情を浮かべマスターの方を向く。


「そうですね。チョークの主成分は石灰です。石灰は炭酸カルシウムが含まれていて、それが土壌改良に効果があるという話があります。炭酸カルシウムは土壌の酸性度を中和し、根の成長を促進したり、植物の細胞壁を強化し病気や害虫に対する抵抗力を高めたりする効果があると言われてますね。」


「そうか!園芸部!」


香織がマスターの話を聞いて真っ先に声を上げる。


「園芸部がチョークを盗んで肥料にしてたんだ!」


香織は納得したような表情を浮かべている。


「確かに、私が高校生だった時の園芸部は、折れたり短くなったチョークを肥料として使うということをやっていました!」


和栗さんと香織は顔を合わせながら笑顔を見せ、マスターを向く。


「いや、それはどうだろうね。」


それに対してマスターが冷静な声色で香織に話しかける。


「どうして?園芸部だと思ったから肥料の話をしたんじゃないの?」


「私は一言も園芸部だと思うなんて言っていないよ。まあ、その可能性もゼロではないんだろうが。でも、香織たちは盗まれているチョークは白色だけって言っていなかったかい?さっきの肥料の話は、別に白色のチョークに限った話ではない。チョークの色ごとのpHの値はそこまで違いがないという実験の話もあるしね。それにこのチョークの肥料の話は、短くなったチョークの再利用の際に、肥料として使おうという話なんだ。学校でも余ったチョークはいっぱいあるだろう?わざわざ新品のものを盗んで使うことはしないんじゃないかと、私は思うけどね。今和栗さんも、()()()()()()()()()チョークって言っていたろう?」


マスターの言葉に、少し不満そうな顔を見せながら香織が答える。


「確かに。じゃあなんでこんな話したの。」


「一つずつ可能性を見ていくかと言っただろう。紗奈ちゃんは知っていたかい?」


マスターの問いかけに紗奈は軽く頷く。


「はい。確か生物の授業で先生が言っていたと思います。私たちの学校では短くなったチョークを集めていて、それを園芸部が肥料として使っているって。」


紗奈の言葉を聞き、茂さんがニヤリと笑う。


「生物の授業で言ってたってことは、香織ちゃんも聞いていたんじゃないのかい?聞いてないってことは寝てたな?」


香織は恥ずかしそうに顔を赤らめる。


「紗奈もそれを知ってたんなら早く言ってよ!」


香織は紗奈の顔を見ながら頬を膨らませる。



「さて、実はチョークには他にも面白い使い方があったりする。高校の化学で実験するかはわからないが、()()()()って知ってるかい?」


マスターが紗奈に問いかける。和栗と茂さんは首を傾げる。


炎色反応(えんしょくはんのう)。確かアルカリ金属とかアルカリ土類金属などの(えん)を炎の中に入れると、揮発(きはつ)した金属原子が反応して、その元素特有の色を発色する現象ですよね。実験はしませんでしたが、授業内の映像で見ました。いろんな元素によってそれぞれ異なった色を発色するんですよね。」


紗奈はマスターの質問にも難なく受け答えする。その様子にマスターも思わず微笑む。


「は〜。さっきから聞いたことない話ばっかり出てくるねえ。炎色反応?今の高校生は、そんなに難しい話も覚えなきゃダメなのかい。」


茂さんは紗奈に感心したように声を上げる。


「そんなに難しい話じゃないんですよ。名前や説明から難しそうに感じてしまいますが、私たちは生活の中で炎色反応を見ることもあります。」


紗奈が茂さんに微笑みながら説明する。


「そんなの見てるかなぁ?」


茂さんは首を傾げながら和栗の顔を見るが、和栗もわからないようで首を横に振っている。


「夏の夜空を照らす綺麗な花とか。」


紗奈が二人にヒントをあげると二人は少し悩んだ後、ピンときたようで声をそろえる。


「「花火!」」


「なるほど。あれが炎色反応ってやつを利用しているんですね。なんでいろんな色があるんだろうとか考えたこともありませんでした。というより、そんなこと習いましたっけ?」


「あ、和栗さんも高校の時、化学の授業寝てたんですね?」


少しにやつきながら、香織が和栗にいうと和栗はエヘヘと照れたように頭をかく。


「文系だったので・・・。」


和栗の言葉にマスターは微笑みながら頷く。


「で、その炎色反応が今回の事件とどう関係があるの?」


香織がマスターに問いかける。


「炎色反応を見る実験としてチョークを使った蝋燭(ろうそく)で反応を見るというものがあるんだよ。」


「「チョークで?」」


紗奈も初耳だったのだろう。香織と声を揃える。


「さっきの話を聞いた限り、高校で使っているチョークはダストレスチョークじゃなくて普通のチョークなんだろう?この実験はダストレスチョークでは向かない実験なんだ。そして、使うのは白色のチョーク。」


マスターは説明を始める。


「まずは、白色のチョークを何本か用意する。何かの容器、例えばビーカーを何個か用意してそこにエタノールを50mlくらい入れる。そのビーカーに、そうだな。簡単に用意ができるものと言ったら、食塩、ホウ酸、ミョウバン、塩化カリウムかな。それらをそれぞれのビーカーに入れてエタノールによく溶かす。その溶液に白色のチョークを入れてよく染み込ませる。粘土か何かを使ってそのチョークを固定して部屋を暗くし、そのチョークに火をつけると、炎色反応によって綺麗な色が出ると右側が牽制するっていうわけだよ。炎色反応によって、食塩はナトリウムの黄色、ホウ酸はホウ素の緑、ミョウバンはカリウムの紫、塩化カルシウムはカルシウムの橙色が出る。そこまで長い時間見られるものではないけどね。」


4人はマスターの話を聞き、ほー、と感心する。


「てことは、化学部?さっきの材料なら化学室に全部あるだろうし。」


香織が紗奈の顔を見ながら、話す。


「その可能性もあるとは思うよ。でも、私は()()()なんかが怪しいんじゃないかと思うよ。さっき話していたけど、来月末に文化祭があるんだろう。この演出は、短い時間でできる上に見栄えがいいからね。奇術部のショーなんかで盛り上がるんじゃないかな。」


「確かに。」


香織が納得したように頷く。


「なんで、奇術部って思ったの?」


香織が純粋な疑問をぶつける。先ほどの紗奈が言った部活動は種類が多く、一回聞いただけではとても覚えきれる量ではない。いくらマスターが卒業生だからと言っても、10年以上前の部活動の記憶が鮮明であるとは思えなかったのだ。


香織の当然の疑問にマスターは笑って答える。


「実はね。私が高校生だった時にも似たような事件があったんだよ。教室のチョークがなくなるていうね。その時はいろんな教室から無くなってね。その時も犯人は奇術部で、先生に怒られていたのを記憶しているよ。もしかしたら、その当時のノートかなんかを見て、その実験のことを今の奇術部の子たちが知ったんじゃないかな。」


マスターは懐かしそうに当時を思い出しながら、笑みを浮かべる。


「歴史は繰り返すっていうことか。」


茂さんも感慨深そうにうんうんと頷く。


「ありがとうございます。マスターさん。明日、まずは科学部の子たちに聞いてみます。材料を得るんだったら、まずは化学部に聞くと思いますから。真相がわかったらまた報告に来ますね。」


紗奈が笑顔でマスターにお礼を言う。それにマスターも笑顔を見せることで返す。


「次来た時、約束のカレーの作り方教えていただいてもいいですか?」


紗奈がマスターに問いかける。


「ああ、またいつでもおいで。」


店の外から雨が止んだのだろう、夕方の日差しが入り込む。


「お、雨が止んだか。私はそろそろお暇しようかな。」


茂さんがマスターにそう言うと、紗奈もでは私もと言い、席を立つ。そして、紗奈が財布を取り出し、お支払いをしようとする。


「何度も言うけれど、別にお金はいいんだよ。香織にも出しているんだし。」


マスターは紗奈にそう言うが、紗奈はすぐさま返答する。


「私も何度も言いますが、私の相談に乗っていただいているんですからお支払いさせてください。それにこんなに美味しいコーヒーがいただけるんですから、しっかりお金はお支払いしないと。」


笑顔でそう答え、会計を済ませる。


茂さんも会計を済ませ、2人は店を後にする。雨はすっかり止んで、夕焼けの赤色が店先の観葉植物の雫に反射し輝いている。


「では、私もそろそろお(いとま)させていただきます。マスターさん、この前の事件は本当にありがとうございました。おかげで事後処理を含めてあらかた完了することができました。これも全て、マスターさんのお力添えのおかげです。」


和栗はそう言いながら、マスターに敬礼する。


「いえいえ、お役に立てたのならよかったですよ。」


「今度、またちゃんとお礼させてください。と言っても、大したことはできないんですが。」


「では、今ひとつだけ聞いてもいいかい?」


「はい、何でしょうか?」


「和栗さんは、なぜ警察官を目指したんだい?それも刑事を。」


マスターの何気ない質問に和栗の表情は少し曇る。


「それは、、、」



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