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ふたりぼっちのセカイでキミと 中編

 ある日、俺と水姫は光に包まれていた。

 騒がしい耳障りな音が聞こえて、それと同時に俺と水姫の身体に重い衝撃が走る。

「こーく…」

「みず…うわあああ!」

 その直後、誰かの悲鳴が耳に飛び込んで来た。

 



 朝日が射し込み、爽やかな朝。

 俺はそんな日差しとは対称的に最悪の夢を見て目を覚ました。

「う、あ…はっ!?」

 ベッドで寝ている俺の横から水姫の可愛らしい声が聞こえる。

 水姫は裸で、俺は下着だけの姿だ。

 俺は寝ている水姫の細い手を握ると、水姫は目を覚ます。

 ぬくもりを感じて、安心する…

「ふわあ…こーくん…おはよ…」

「水姫、朝だぞ…ってか下着ぐらいつけろ…別の所が起きるから…」

 俺はぼんやりしている水姫を起こして、二人で服を着る。

 俺昨日持ってきたは惣菜パンをテーブルの上に置く。

 水姫はツナ缶でサラダを作ってくれた。

 クーラーボックスに入れてた缶コーヒーを取り出し、俺に差し出す。

 インスタント食品の朝食、だけど俺は水姫といっしょに食事が出来る事が嬉しい。

 何故か俺も水姫も空腹にならないけれど、心が満たされる。

 水姫といる事が俺の幸福だ。



 俺はライダースーツを身に付けて、水姫は白いワンピースだ。

 二人でホテルに向かって手を振り、バイクとサイドカーに乗り込む。

 時間はいくらでもある筈なのに。

 何故かはわからないが、俺は急がなきゃいけない気がしていた…

 頭の中にモヤがかかっている様に感じる…


 海岸線を移動していると、岬が見えて来た。

 俺が水姫の手を引くと、そこには綺麗な海が広がっていて。

 岬の突端にある白い灯台が目を引く。

 風は強いけれど、とても美しい景色で、潮風の匂いがする。

 視界の奥には別の島も見えて、美しい景色だ。

「わあ!綺麗だね!」

 水姫はその景色に見入っていた、

「そうだろ?俺も水姫に見せたかったんだよ」

「嬉しいよこーくん」

 俺の言葉に水姫は微笑んでくれた。

 水姫のワンピースが風に舞い、とても可愛らしい。

 自撮り棒を使って、海をバックにして写真を撮影した。

 これも良い思い出だ。


 俺たちがバイクで移動していると、俺たちの眼前には大きく透明な湖が広がっていた。

 湖には太陽が反射されていて、景色を彩っている。

 水姫は湖を見ると笑顔になっていた。

 以前に水姫と来た事がある場所だ。

「綺麗だね、こーくん」

 俺は水姫の言葉にこくんと頷いた。

「そうだな、眩しくて綺麗だよ」


 俺と水姫は透明な湖を見ていた。

 浅い所なら底まで見える程の透明感だ、太陽が反射している水面も、透明な風も心地良い。

 俺と水姫は手こぎボートに乗り込む。

 水に浸かると少し揺れるけれど、それもスリルがあって楽しい。

 空に何も飛んでいない様に、湖の中には魚が一匹もいない。

 まるでこの世界に俺たちしか生きてない様な…ふたりぼっちのセカイ…

 水姫もそれを感じていると思う。

 俺は彼女を不安にさせたくないから、それは口に出さなかった。

「透き通ってて綺麗だねー♪」

「のんびり出来て安心する、水姫といるとまるで天国にいるようだ…」

 日の光が俺と水姫を照らし出す。

 俺と水姫はしばらく湖の真ん中で佇んでいた。

 自然と笑顔になり、俺は水姫の手を握っていた。

 水姫も俺の手を握り返してくれた。

 何気ない幸せな日だ。


 俺と水姫は湖の遊泳エリアにいた。

 水姫はスカートがついた白いワンピース水着を着て楽しそうに波打ち際を歩いている。

 俺はそんな水姫を見て幸せな気分になった。

 水姫が歩くと湖が跳ねる。

「こーくん、見て見て、可愛いでしょ♪」

「うん、可愛いよ」

 無邪気に笑う水姫を見ると、俺は水姫がいない世界なんて考えられなくなっていた。

「えいっ♪」

 水姫がいたずらっ子のように笑いながら水をかけてくる、俺もそれに負けじと応戦する。

「ははっ、やったな!お前だけ水着でずるいぞ」

 他愛ない事だけど、俺と水姫は笑い合っていた。

「ん…貸し切り状態だね♪ぜいたくだー!」

 不安もあるけど、水姫はその非日常も楽しんでいた。

「そうだな、広々としてて人に気を使う必要も無いしな」


 昼食時、水姫はワンピースの上にエプロンをつけてレトルトカレーを調理していた。

 キャンプに不向きな格好だが、水姫はワンピースを好んでいた。

 また着替えるのが面倒なだけかもしれないが。

 昼食を取りながら俺と水姫は湖を見ていた。

 普段人がいる筈なのに、今は俺たちだけの湖は非常に美しかった。

 しばらく食事を続け、水姫がデザート代わりのチョコレートを食べ終わると水姫は服の袖を掴みながら俺に言う。

 普段の明るい口調とはギャップが大きい重い口調…

「ねえ、こーくん…キャンプ場戻ろ…」

「ああ…」

 俺は短く答えた。

 そう、あの出発地点のキャンプ場は俺たちとって始まりの場所でもある。

 俺と水姫の関係の始まりは突然だった。



 2年前、俺は趣味のキャンプをしていた。

 誰にも束縛されない一人キャンプを満喫していて、その日の空は曇り空だった。

 俺はキャンプ場を回っていると、アスレチックが目に入った。

 すると木に足を打って、痛みで思わず涙を流している女の子の姿が目に入った。

 俺は水とハンカチを持って女の子に駆け寄る。

「君、大丈夫かい?」

 俺が訪ねると、女の子の涙目だった表情は何かに見とれるかのような顔になっていた。

「あ...あ」

 俺は突然の女の子の変化に戸惑ってしまう。

「え、えっと…何か?」

 俺が訪ねると、女の子が言う。

「カッコいい!お兄さんどこに住んでます!?」

 女の子が大きな声でそう言うと、曇り空は晴れていた。

 俺と水姫の馴れ初めは一目惚れされたからだ。

 明るい水姫と暗めな俺の性格は正反対だが。

 気があっていつしか恋仲になっていた。

 たまたま住んでいた所が近かったのは本当に幸運だった。

 きっかけは逆ナンと言う軽い理由だが、運命、かもしれない...

 だから俺と水姫はあのキャンプ場に思い入れがあった。


 俺がバイクを走らせると、すでに夜中になっていた。

 美しい夜空を見上げると、冷たい風が吹いて来る。

 キャンプ場に再びたどり着くと、俺と水姫もどこか安堵する

 俺と水姫は手を繋ぎながら展望台に昇る。

「ふふっ、なんだか私お嬢様みたい」

「はは、しっかりエスコートしますよ、お嬢様」

 そんな軽口を叩きながら、俺たちは展望台の上を昇る。

「わあ…綺麗…」

「そうだな、俺たちだけの星空だ…」

 広がる星空、綺麗な満月…最高の星空だ。

 だけど、そんな星空とは対照的に俺の心には恐怖と不安があった。

「ねえ、こーくん…私たち」

 水姫が重い口を開く、俺はその言葉を訊きたくないが。

 水姫が勇気を振り絞るからには、俺も逃げたら駄目だ…



「もう、死んじゃってるんだよね…」

「ああ…」



 水姫が不安そうに俺の手を握る、彼女の身体も震えていて…

 そう、俺たちは交通事故で、死んでしまった...

 だから、俺たちの世界で俺たち以外の生物は存在しない…

「そうだな…」

 俺はそれしか言えなかった…水姫の顔も恐怖を感じていた…

 俺も内心は同じだけど、水姫の前では弱い部分を見せたくないから。

 余計な事は言わなかった。

「水姫…」

 俺は水姫の華奢な身体を抱き締める。

 小さくて、あったかい…心臓の音を感じる…

 生きてるのは、このふたりぼっちのセカイの中だけで、実際は…

 身体が震えていて、涙を流している。

「こーくん…私怖いよ…」

 俺は水姫の可愛い顔を見つめる。

 俺も怖いけれど、水姫を見ると恐怖心よりも、彼女への愛が上回っていた。

 大きな瞳…小さな唇…長い髪…

 俺は強く抱き締めて、キスをする。

 そうすると、水姫は少し安堵した表情になる。

「大丈夫…仮に生まれ変わってもまた側にいるよ…」

 俺がそう言うと、水姫の涙で濡れた顔が笑顔に変わる。

「うん!うん!こーくん…大好き…だよ…」

「俺も、大好きだよ…ありがとう、水姫…」

 ふたりで強く抱き合っていた。

 俺の身体が光の粒子になって消えて行く。

 水姫の身体も…

そして、満ち足りた気分のまま、俺たちは天に向かって行った。


つづく

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