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微笑みの痛み  作者: JMVV
第二章:あの女
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第一章 路地(ろじ)

背中には、ゴミ捨て場で拾った古いリュックを背負っていた。

消えない奇妙な臭いが染みついている。

夜の冷気が傷口から入り込み、左腹の切り口からはどれだけ押さえても血が止まらなかった。

あの白い粉のせいで、いつ“あれ”に刺されたのか気づかなかった。

傷は深く、黄ばみがかった粘液に覆われていた。

痛みは感じなかったが、皮膚の下で何かが動くような痺れがあった。

まるでそれが体の中に入り込み、俺を餌にしているかのように。

掻きむしりたかったが、無駄だと分かっていた。

爪の間には肉と汚れがこびりつき、乾いた血が全身を覆っていた。

それが自分の血なのか、それとも別の何かのものなのか、もう分からなかった。


静まり返った通りが、妙に落ち着かなかった。

目はこの地区の闇に慣れていたが、その「空虚さ」には慣れることができなかった。

すべてが腐り、崩れ、忘れ去られた場所。

断末魔の叫びが遠くから響き、そして突然、息を止めたように途絶える。

その瞬間、静寂が鋭く刺さる。

空気は血と腐敗の混ざった匂いを含み、それが皮膚にも染みついて離れない。


行きたくはなかった。

だが、あの汚れた路地を通らねばならなかった。

そこは捨てられた猫たちの縄張りであり、

わずかな食べ残しをめぐって子供たちと争う場所だった。


何度かその中を覗いたことがある。

見るたびに、心にこびりついて離れないものがある。

何が「普通」なのか、もう分からない。

そこでは、ゴミと肉声が同じ匂いを放っていた。

路地の奥から響く鳴き声──それが猫なのか、人なのか、

耳が拒むほどに判別できなかった。




「煙草、持ってない?」

ゴミの山の中から、小さな声がした。

声の主は、俺より二つほど年下の少年だった。

右目のあった場所には、膿の溜まった空洞しかなく、

残った左目は、奇妙に澄んだ紫色をしていた。


裸の胸に浮き出た肋骨。

骨と皮だけの体を、汚れたズボンがかろうじて隠している。

なぜか鳥肌が立ったが、理由を考えるのはやめた。

ポケットを探り、古びた煙草の箱を取り出す。

吸うのは好きじゃない。だが、この街では、

煙だけが落ち着きを与えてくれる。


箱の中には五本残っていた。

そのうち二本を残し、残りを少年に投げた。

彼は素早くそれを掴み、笑った。


「火、ある?」

失くしたライターの代わりを求めて尋ねると、

少年はポケットから何かを取り出した。

──指だった。切り落とされた人の指。

その指の先に、青白い炎が一瞬だけ灯る。

その光が路地を照らした瞬間、

四人の子供たちがこちらを見ていた。


彼らの口元には、血のついた笑み。

空腹を満たす喜びの笑み。

猫の肉であろうと、関係ない。


「俺の目、気に入った?」

少年が近づきながら言った。

「売ってやってもいいぜ。歯もまだ残ってるしな。」

歯を見せて笑う。

腐った歯茎と、虫歯の黒。

俺は黙ったまま、火がつくのを待った。


再び、青い炎。

その光に照らされたのは、

数え切れないほどの“目”だった。

猫と子供の、混じり合った目。

そのすべてが、俺を見つめていた。


闇が戻る。だが視線だけは、消えなかった。



寝床にたどり着いた。 二階建ての廃屋。 もう何ヶ月もここで過ごしているが、 この崩れた姿に慣れることはなかった。

二階の一室を借りている。 窓は板で打ち付けられ、朝の光は差し込まない。 冷気が壁を抜け、体の奥まで染みてくる。 雨の日には、天井から落ちる水音が止まらない。 この部屋の匂いは、 煙草の煙でも消せないほどに染みついている。 それでも、安かった。 ──それだけが理由だった。

一階は真っ暗だった。 つまり、大家が“客”を取っているということだ。 低い唸り声が聞こえ、 しばらくして、それは快楽の叫びに変わった。 俺は煙草の煙を吐き出しながら、 空を見上げた。 滅多に見ない夜空。 だが、あの暗さが恋しくなるのはいつもこの場所に戻った時だった。

月の光が届かない場所を選び、 そこに座り込む。 客が出てくるのを待ちながら、 彼女に話しかける機会をただ、待っていた。






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