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薬指の憂鬱

どうも、薬指です。皆さんいかがお過ごしですか?


私はといえば、最近ちょっと憂鬱なんです。聞いてくれますか?


実は、同僚の中指のやつがですね、ずっと欠勤してるんですよ。なんでも、腹に水ぶくれができた、とか言って。


そりゃあね、確かに私らの仕事は腹でキーを叩くことですからね、水ぶくれがあったらちょっと痛かったりもするでしょうよ。だからね、親指のやつが「このまま欠勤が続くようだと覚悟してもらうことになる」とか言い始めた時もね、私はかばいましたよ。


だってそうでしょう。私達は五人揃って「左手」なんですから。生まれた時からずっと一緒にやってきた仲間を、そう簡単に切り捨てられませんよ。


何かというと切り捨てられがちな小指もね、一緒にかばってくれましてね。おかげで中指の野郎、水ぶくれが治るまでの間は仕事を免除して貰うことになったんですわ。


ま、そこまではいいんですが納得できないのはここからなんですよ。じゃあ中指の分の仕事を誰がやるのか、という話になりましてね。親指のクソオヤジが「隣なんだから薬指、お前がやれ」とこうですよ。


おいおいちょっと待ってくださいよ、と。なんで全部私がやらにゃならんのですか。今だって「w」「s」「x」とおまけに「2」まで苦労して押してる私なんですよ。それに加えて中指の分の「e」「d」「c」「3」までなんて無理無理。


隣というなら人差し指だって隣でしょうに、と言ったら「既に人差し指は「r」「f」「v」「t」「g」「b」「4」「5」の8つを担当していてとても手が回らないと言われちまいました。でもね、世間じゃ全部人差し指が担当してるとこもあるって話じゃないですか。出来ない話じゃないと思うんですけどね。やつはエースですよ。


だいたい、親指が一番楽してるわけでしょう。スペースキーみたいな広い的を狙うだけで、たまにその辺の変なキーを叩いたりするだけ。でも「馬鹿野郎、これは俺にしかできない大事な仕事なんだ」ですって。「文句はまず人一倍仕事してからにしろ」とまで言われました。なんであんなのが上司なんだ。一番ちびで、おまけに太ってる癖に。爪も伸びてるし。あ、それは私もか。


そんなわけで、不満たらたらだったんですが最近慣れてきましてね。なんとか四人でも以前に近い速さで仕事が進むようになりました。これも時々小指が「2」を押してくれたりしてフォローしてくれたおかげです。彼女には本当に感謝しなくちゃ。


でも中指の野郎はだんだん不安になるみたいですね。「自分がいなくても仕事がスムーズに進んでる」って。でもこっちはやっぱり無理してるんで、時々腰(第二関節)が痛むんですよ。だから「やっぱお前がいないとキツイ」と言ってやったら野郎、嬉しそうな顔してましたよ。


やぁどうも、愚痴を聞いてもらったらなんかスッキリしました。また頑張れそうです。それでは皆さんごきげんよう。

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