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グリッチファンタジア〜チートでエロゲー化された世界をデバッグで救う件  作者: 黒船パイ
序章:改変されたゲームワールド
16/21

■16:最悪災厄

「奴が初めてこの城塞都市現れたのは、約三年前ーー」

 マックスが語り始める。アリシアは横で顔を固くする。


 ※


「ココの責任者か?」カウンターに現れた痩身の男はマックスに向かい尊大な態度でそう尋ねると、自分は女神に選ばられし勇者『レイド』だと名乗った。


「女神様の御信託を得た勇者様か!遂に予言が叶った訳ですね。やはり魔王を倒す為に旅を?」

「当然だ。だが、ボクはそこにそれ程興味は無いんだ…」


「どう言う事ですかい?」魔王を倒す以上に崇高な使命を知らないマックスは少し驚く。

 もっとも、この世界の冒険者は日がな小さなクエストをこなして宵越しの金は持たない…と言った生き方をするタイプも少なくない。


 マックスはレイドが使命感に燃えて突っ走るタイプでは無いと判断して「まぁ、今すぐ此処が魔王軍に攻め込まれる心配は未だ無いようですし、経験を充分積んでから目的を遂行出来ると良いんじゃ無いですかい?」と言うと「分かっている」と言いニヤリと笑った。


 (おもむ)ろに、アリシアのところに行くと「流石城塞都市は都会だな、レベルが高い」と言ったが早いか、腕を交差させて変なポーズを取ると「『我が意志は(マ・ウィリズ )絶対である(アブソルート)!』『全知全能なる(レイド・ジオムニ)者、レイド(シエントムニポテン)が命令(トゥ・ワン)じる!(・コマンドゥズ)』――」

 高らかに宣言するとアリシアはふと力が抜けたと思うと「我主たるレイド様に従います」と抑揚の無い声で答えた。


 ※


「そっから先は語りたくないな…奴はアリシアをその場で…」マックスの顔が歪む。

「聞きたくないので、結構です」手を挙げて制する。

 僕もその先は聞きたくなかった。ヨーコさんがこれまで怒り心頭でキレていた理由がよく理解出来た。


「その時マックスさんは…」「無論問答無用で殴りかかったさ……だが、実力に差がありすぎた。世界の理不尽を感じたよ」マックスは大きく溜息をついてから、その逞しく大きな手で額をさする。

「奴はその気になれば俺の事なんざ瞬殺する事も出来ただろうよ。だが、それも許されずボロ雑巾の様に痛ぶられた。全身の骨が砕かれたかと言うくらいにな…だか、死ねないんだ。アイツは笑いながら痛ぶり、死なない様に回復するを繰り返した。意識が飛び、記憶が飛び、心が死にかけた……」


「よ、よく今無事で…」その凄惨極まる告白に僕の心も潰されそうになる。


「アリシアが…彼女が全能支配の中逆らい、代わりに仕打ちを引き受けてくれた…俺は目も見えず、声も出せない状態で床に転がったまま、彼女の…声を聞いていた」


 僕はその話を聞きながらどんな顔をしていただろう。

 答えは隣にいるケンタの顔を見れば分かった。

 ヨーコさんは手で顔を覆って泣いていた。


「奴の所業は必ず止めてみせます。ただ、僕たちはここに来て間も無く、特殊スキルはある程度使えても、今の話を聞く感じ、正面からぶつかるのは得策では無さそうです…協力を願えますか?」

「ここまで話して、あんた達の怒りが本物だと俺は理解している。勿論協力は惜しまないぜ。……だが、どうする?」


「ヤツ…レイドは今もココに現れたりするのですか?」

「いや、ここ一年位は現れていないかな…だからと言って、心休まる日なんか無かったがな…」マックスの顔は悲痛の表情が長過ぎて顔の皺がそこだけ深く刻まれている様だ。

「先ほどお見せしたように、僕たちには世界を修復する力があります。レイドは…話を伺う限り、僕たちとは異なる能力の様ですが、クリエイターとしての責務を果たして見せます」


「ク、クリエイター?…聞きなれない言葉だが、この歪んでしまった世界を直してもらえるならよろしく頼む」


「ありがとうございます。話したくない内容まで教えてくださり…かならずレイドにはその行いの報いを受けさせて見せます!」僕たち三人は顔を見合わせて決意する。エロゲ臭を払拭して正常なるクエスト・ファンタジアの世界を取り戻し、自分たちの世界に戻るのだと。


 ヨーコさんが横からつついてくる。

「な、なんですか…」ヨーコさんが耳打ちをしてくる「取り急ぎ宿屋を戻すことが最優先」

 あんなにサービスに固執していたケンタもアリシアの様子を見て奮起している「そうだな!」

「わかっているよ…」僕はマックスに向かって最初のお願いをする。






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